ここから始める医院開業

【第11回】開業当日

ついに開業当日を迎えます。スタッフと気持ちを一つにして臨みましょう。
開業当日から問題がまったく無いスタート、というのはごく稀です。むしろ課題や反省が無いのは、見落としがあるのかもしれません。小さな気付きや反省を放置せず、その都度話し合い、改善していきましょう。患者さんとご家族から「かかりつけ医」として信頼をいただき、さらに口コミによる集患ができれば、経営の基盤も確かなものになっていきます。

「ここから始める医院開業」シリーズは今回が最終回です。先生が志す医療の実現と、クリニックのご盛業を祈念いたします。なお、PHC株式会社では、メールマガジンとホームページで医業経営に関するヒントをお届けしていますので、引き続きそちらもご覧ください。

いよいよ開業! 当日の心構え

開業前日はチェックリストで確認を

診療シミュレーションや内覧会が済んだら、いよいよ開業です。気持ちが落ち着かず何かとあたふたしてしまうこの時期ですが、準備し忘れているものや不備がないか、今一度まっさらな気持ちで院内を確認していきましょう。とくに開業前日は、はやる気持ちからチェックがおろそかになりがちです。確認が必要になりそうなものについては、あらかじめスタッフから意見を募りチェックリストを作成しておくのが良いでしょう。

開業前日はチェックリストで確認をのイメージ

チェックする箇所としては、まず医療機器や電子カルテ・レセコンがあげられます。おそらくこの日までに何度も点検済みでしょうが、もし開業当日に稼動しないようなことがあると一大事です。安心して明日を迎えるためにも、最終チェックは必ず行って下さい。また、開業当日はサポートスタッフを派遣してもらうよう、各メーカーへ依頼しておきましょう。いざという時の備えを考えておくことも重要です。

電気・給排水設備や、釣り銭も忘れずに

電気設備や給排水設備については、実際に使用して不具合がないか確かめておきましょう。自動ドアや照明の故障、トイレの詰まりや水漏れなどのトラブルは、「狙ったかのように開業初日に起こる」とも言われるほどです。気になる点が少しでもあれば、前もって設備担当者を呼び、点検してもらうようにしましょう。また、いろんな箇所をチェックしておいたはずなのに、開業間際になって初めて気づく盲点もあります。その筆頭に挙げられるのが“釣り銭”です。

電気・給排水設備や、釣り銭も忘れずにのイメージ

「直前までおつりのことは頭になかった」と仰る先生は意外に多いため、チェックリストには必ず入れておくようにしましょう。一般的に5万円ほどを硬貨とお札に分け、窓口に用意しておけば大丈夫な場合が多いようですが、バックアップとして同額を金庫にしまっておけば安心です。こうしてすべての準備が整ったら、いよいよ開業日を迎えることになります。

すべての準備はこの日のために

開業当日は、少し早めにクリニックへ到着するようにしましょう。怒濤の一日が始まる前に、これまでの準備期間を振り返りつつ気持ちを落ち着ける時間が必要だからです。なぜ開業しようと思い立ったのか、将来はどんなクリニックにするつもりなのか、などをご自身の胸に訊ねてみて下さい。このとき心に浮かんできた想いを「初心」として、ことあるごとに思い返すことをおすすめします。

そして、スタッフが揃ったらミーティングです。このときばかりは実務的で細かい確認事項よりも、先生含めた全員の気持ちをひとつにすることに注力しましょう。スタッフへの感謝の気持ちとこれからの意気込みを述べたり、円陣を組んで「頑張ろう!」という掛け声をあげたりすると一体感が高まります。

すべての準備はこの日のためにのイメージ

なお当然ですが、初日は新患ばかりを診察しなければなりません。医療機器や電子カルテ・レセコンの実戦稼動が初めてということもあり、人数の割には多忙になることを見込んでおく必要があるのです。それに診療シミュレーションをいくら綿密にやっておいたとしても、「なんらかのトラブルは必ず起こるもの」と考えておくべきです。どんな時も落ち着いた態度でいられるよう心がけましょう。実を言うと開業に至るまでの苦労というものは、今後の経営の苦労に比べると“可愛いもの”かもしれません。ですがそれ以上の達成感や満足感が、先生を待っています。「理想の開業」を目指して、どうかベストを尽くして下さい。

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