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【第2回】開業時期の決め方とスケジュール

第1回では、開業を決意するプロセスの大切さを中心に話を進めました。開業はメリットだけではないこと、医療方針と決意を「経営理念」と言う形にして、開業医自身、患者さん、スタッフと共有できるようにすることによりぶれない強い志を持つことが大切でした。

第2回では開業の決意を固めたらいよいよ具体的な準備に取り掛かります。やるべきことは山ほどあります。多くの方は勤務医としての仕事をやりながら開業準備に取り掛かるのですから、限られた時間や制約のなかで、無駄なく漏れなく進めなければなりません。この段階で開業を支援する専門会社に相談する方法もありますが、実際にどのような準備が必要となるのか、大切なポイントを具体的にお話しします。

1. 開業時期の決め方

開業の準備は何から始めるか?

悩んだ末に開業を決意し、クリニックの根幹となる理念も決めた──。そうなると、いよいよ具体的な準備のスタートです。しかし、開業地・物件の検討や資金調達の段取り、申請に関する書類の手配など、やるべきことはまさに山積み。一体何から手をつければいいのでしょうか。「開業準備は場所探しから」という考え方もありますが、惚れ込んだ物件にこだわるあまり賃貸契約ばかりを先行し、余計な家賃を払うことになったという事例もあるので要注意です。

開業の準備は何から始めるか?のイメージ

そこで、やみくもに奔走してしまわないためにも、まず開業時期を決めてしまうことをおすすめします。長くて険しい道のりも、ゴールまでの期間が分かっていれば意欲もわきますし、迷うことも少なくなるはず。スムーズな計画遂行のためには、適切な目標設定が第一と心得ましょう。

ニーズを読んで開業時期を決める

開業時期を決めるにあたって、ぜひ意識していただきたい点があります。それは、「開業のタイミングが世の中のニーズに合っているか」ということ。たとえば内科であれば患者が増える寒い時期に、耳鼻咽喉科であればインフルエンザや花粉症シーズンにオープンする方が有利です。「毎年恒例とも言えるようなニーズに、わざわざ開業を合わせる必要があるの?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、勤務医時代には関心の薄かった家賃や人件費などのランニングコストは、当然開業初月からかかってきます。そのうえ新規のクリニック経営というのは、軌道に乗るまで1年以上もの月日を費やすのは珍しくありません。

ニーズを読んで開業時期を決めるのイメージ

つまり、開業当初に充分な来院患者数を獲得することは、想像以上に重要であるということ。初めて経営者の立場に立たれる先生にとって、船出が“順調過ぎて困る”ということはありません。スタートダッシュを成功させ心の余裕を生み出すためにも、開業のタイミングは慎重に検討なさって下さい。

円満退職できるスケジューリングを

さらにもうひとつ、開業時期を決める際に考慮すべき点があります。それは、現在の勤務医としての仕事をきちんと引き渡す期間の確保。たしかに法令では最低14日前に意思表示をすれば退職できることが定められています。しかし、実際そのような直前になっての退職の申し出が、医療現場に混乱をもたらすことはご存知のことでしょう。できる範囲で結構ですので、円満退職が可能なタイミングを見計らうようにしてください。

というのも、これは社会人としてのマナーやモラルというだけの話ではないからです。とくに現在勤務している病院の近くで開業する場合など、勤務先との関係は良好である必要があります。

円満退職できるスケジューリングをのイメージ

今の患者さんの中には、先生との信頼関係から独立後のクリニックに通ってくれる方もいるでしょう。その場合、見方によっては今の病院から患者さんを奪うことになるのです。意外に狭いこの業界で「仁義を欠いた医師」とのレッテルを張られると、スタッフやクリニック関係者の応援が得づらくなることも考えられます。

開業時期の設定の際は、くれぐれも「退職のタイミングが適切かどうか」の視点を忘れないようにして下さい。大勢の方に望まれる開業というのも、成功する秘訣の一つですから。

2. 開業スケジュールの概要

スケジュールを大局的に見ることの重要性

開業の準備期間中は、あれもこれもと大忙し。些細なことに忙殺されるあまり重要事項の判断が軽はずみにならないよう、事前にスケジュール概要をつかんでおきましょう。もちろん実際の日程はケースバイケースにはなりますが、おさえるポイントは概ね共通しています。やるべきことを体系的に整理し、大局的な視点で捉えておけば、思いがけない事態に直面しても柔軟に対応できるというもの。今回は以下の図を使い、全体の流れとポイントをチェックしていきます。

スケジュールを大局的に見ることの重要性のイメージ
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場所決めと資金調達が開業準備のヤマ場

先ほどの図でも確認できるように、開業の具体的な準備は「開業地の選定」と「資金調達」から始まります。「いきなり大変そうだな」と思われた先生が多いのではないでしょうか。事実、開業スケジュールは開始早々にクライマックスを迎えます。実は「開業準備は最初が肝心!」と肝に銘じていただくことも、スケジュール概要をお伝えする大事な目的の一つ。なぜなら「良い場所が見つかったら、その条件に合わせて資金計画を立てるか…」というような漫然とした考え方では、理想の開業地に巡り会うことも、スムーズな資金調達も困難だからです。

場所決めと資金調達が開業準備のヤマ場のイメージ

詳しくは今後解説していきますが、資金計画の予算内で開業地を検討しつつ、有力候補地が見つかればすぐに金融機関と交渉に入れるよう態勢を整えておく必要があります。「開業地選定」と「資金調達」。この2つこそが開業準備の“ヤマ場”であると覚えておいてください。

スケジュール後半はハード面とソフト面の準備

開業地も決まり資金のメドもついた、となれば準備は後半戦に突入です。一戸建て開業であれば建築設計、テナント開業であれば内装デザインの発注を皮切りに、医療機器や什器選定も含めた施設ハード面の準備を行っていきます。ハード面の段取りがついたら、広告や人材などのソフト面でラストスパート。新規開業クリニックには欠かせない折込チラシ・ホームページなどのPRツールや、医療の質を左右するスタッフの採用・研修、そして開設手続き等がこれに該当します。ご自身が設定された開業時期を図に当てはめ「何の作業をいつやるのか?」を具体的にイメージしておくようにしましょう。

スケジュール後半はハード面とソフト面の準備のイメージ

ただし、電子カルテ導入を想定している場合は、なるべく早い段階で選定を始めて下さい。メーカー選びだけでなく、操作の習得にもある程度の時間をかけておかないと、開業時の診療に支障が出かねません。施設ハード面の準備と同時に選定に入ると、余裕を持って検討・導入ができるでしょう。なお、メディコムの「電子カルテシステム」は、その使いやすさや見やすさから、これまで数多くの先生方の支持を得てきました。メディコム商品ラインナップはこちらからご確認いただけます ( https://www.phchd.com/jp/medicom/ ) 。

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