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【第7回】医療機器と電子カルテの選定

医療機器業界では毎年大規模な展示会が開催され、高機能、高精度、高額な新型製品が覇を競います。しかしクリニックでは患者さんニーズと先生の診療スタイルに最適な機種の選択、電子カルテはストレスの少ない診療をサポートするパートナーとしての使い心地と拡張性も考慮が必要です。ここではメーカーの信頼性も含め、経営者目線で、医療機器と電子カルテの選定を考えます。

1. 医療機器選定の勘どころ

次々と新製品がリリースされる医療機器

先生方もご存知の通り、医療機器の進歩は日進月歩の様相を呈しており、新しい技術を駆使した製品が次々とリリースされています。今まで少々不満を覚えていた機能や使い勝手が解消されるとなれば、開業の暁には「自分のクリニックに最新型を導入したい」と思われるのは当然のこと。
しかし、決して少なくないコストがかかるものですから、“最新・最高スペックであるか否か”だけの判断基準で選定すべきではありません。借入やリースを利用するなら固定費として毎月の負担になってくるのでなおさらです。

次々と新製品がリリースされる医療機器のイメージ

そこで今回は、医療機器を賢く選定するためのポイントをお伝えします。もちろん診療科目によって必要な機器は異なりますが、選定の基本的な考え方自体はそう変わるものではありません。以下の要点を抑えて、無駄のない医療機器導入を実現しましょう。

導入に値するかどうか、2つの条件でフィルタリング

選定にあたっては、ご自身の診療方針や得意分野にマッチした機器を、まずは「集患」と「収入」の面から見た2つの条件でふるいに掛けるのがおすすめです。選定の最初の段階から費用対効果を意識でき、いわゆる「高い買い物」を避けることができるからです。クリニック経営は機器選定に限らず何事もバランス感覚が必要となってきます。決断の際は、常に複数の視点を持って事に当たるようにしましょう。

一つめの、集患のための条件とは「開業エリアでのニーズが高いこと」です。いくら性能の良い機器であっても、需要のない場所ではその能力を活かせません。地域住民の年齢・性別構成などからその機器がどのくらい必要とされているかを予測し、稼働率を試算して判断しましょう。

導入に値するかどうか、2つの条件でフィルタリングのイメージ

とくにMRIやCTのように高額な医療機器を検討しているなら、近隣医療機関の整備状況は把握しておく必要があります。場合によっては競合する機器の購入を避け、導入済みの医療機関と連携を図るのも良いでしょう。これら一つめの条件でフィルタリングする際には、開業地選びの際に行う診療圏調査のデータが役に立つはずです。【第4回】開業地の選定も参照してみて下さい。

経営者の視点からも導入機器を検討

二つめの、収入のための条件とは「収益性の高い機器であること」です。平たく言えば「検査収入が多く見込めるなど、診療報酬の高い医療機器を選びましょう」ということ。クリニックの医業収入(①初診料・再診料 ②投薬料・注射・処置 ③検査料・画像診断料)のうち、検査料・画像診断料は全体に与える影響が大きいため、機器の収益性は無視できません。

いち勤務医であればいざ知らず、クリニック経営者として成長していくためには、このようなお金に関するビジネスセンスも磨いていくようにしましょう。なお収益性の高さの判断は、先ほど試算した稼働率から単位期間あたりの収入を見積もることでも行えます。

経営者の視点からも導入機器を検討のイメージ

地域ニーズもあり、収益性も高い機器の見当がついたところで、いよいよ機種を絞り込んでいきます。使いやすさはどうか、搬入・設置が院内レイアウトに収まるか、給排水経路・電源容量の確保はできるか、などについて細かく検証してみて下さい。複数の機器を購入するなら、全体予算の中で最適な組み合わせになるように気を配ることも重要です。医師と経営者という両方の立場から、投資に見合った最大限の成果が得られる機器を選択なさって下さい。

2. 電子カルテ選定のポイント

電子カルテ導入が進む医療業界

大規模病院はもちろんのこと、中小規模の病院でも導入が進んでいる電子カルテ。個人経営の医療機関においてもこの流れは顕著で、新規開業クリニックの導入率は約70~80%、都市部になると100%に近いという調査結果もあるほどです。もはやクリニック経営には無くてはならないツールと言える電子カルテですが、「操作が複雑でなかなか慣れない」、「入力に手間がかかって面倒くさい」など、なかには良い印象をお持ちでない先生もいらっしゃるかもしれません。

電子カルテ導入が進む医療業界のイメージ

ですが一言に電子カルテと言っても、大手から小さなソフトウェアメーカーのものまで実に様々。勤務なさっている病院で採用された機種と先生との相性が、たまたま悪かったことも考えられます。その点、開業時に新規で電子カルテを導入する場合は、ご自身で納得いくまでメーカー・機種を比較検討できます。
そこで今回は、「自分に合った電子カルテ」を選定する秘訣をお伝えしていきます。

多機能な電子カルテに何を求めるか

電子カルテを選定するにあたっては、導入して得られるメリットのうち、何を重要視するのかをしっかりと決めておきましょう。「電子カルテに何を求めるか」を明確にしておくことで、メーカー・機種ごとの機能比較がスムーズに行えるからです。次にあげる「電子カルテ導入のメリット」を、ご自身のクリニックで重きを置く順に並び替えてみることをおすすめします。

多機能な電子カルテに何を求めるかのイメージ
電子カルテ導入のメリット
  • 患者情報の把握がしやすくなる
  • 過去や時系列のデータを容易に扱える
  • 院内情報の一元化
  • 会計待ち時間の短縮
  • 紹介状などの文書作成が手軽に
  • カルテ保管場所の削減
  • 医療事務の効率化、カルテ管理の省力化
  • インフォームドコンセントの充実 など

電子カルテには数多くの機能が搭載されているため、無為に検討していてもご自身にマッチした機種はなかなか見えてきません。このリストを目安にして、目的意識を持って比較するようにしてみましょう。

機能やスペック以外の観点でも検証が必要

一度導入した電子カルテとは長いつき合いとなるだけに、選定の際は機能やスペック以外の部分にまで目を配っておきたいところ。カタログだけ眺めていては見過ごしやすいのですが、次のような観点からの検証もぜひ加えておきましょう。

まず、当然ながら「使いやすさ」です。「直感的に操作できるか否か」は個人の感覚に依存する部分も多いため、必ずご自身でデモ機に触れて確認なさって下さい。入力はもちろんのこと、閲覧性の善し悪しも忘れずにチェックしておきましょう。また、「サポート」も気になるポイントです。導入時のデモンストレーションやインストラクションだけではなく、トラブルや法令改正への対応も含めた導入後のサポートも視野に入れて判断する必要があります。

機能やスペック以外の観点でも検証が必要のイメージ

最後に注目すべき点は、「導入実績」です。電子カルテメーカーの「企業としての安定性」を、実績から推し量るためです。医療ITの技術変革はスピーディで、かつダイナミックに進んでいくもの。どうか10年後、20年後も変わりないサービスを受けられるようなメーカー・ベンダーを見極めるようにしてください。なお、全国の医療機関に数多く導入いただいているメディコムの「電子カルテシステム(※本製品は、医療機器に該当する機能は含まれておりません。)」は、こちらからご確認いただけます ( https://www.phchd.com/jp/medicom/ ) 。

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