産婦人科の医院開業動向情報
産婦人科クリニック開業のポイント!開業資金や戦略を紹介

「産婦人科クリニックを開業したいがどうすればいいの?」
「失敗しないために知っておいたほうがよいことは何?」
産婦人科クリニックは産科婦人科診療か不妊治療かの選択で、取るべき戦略が大きく変わります。 産婦人科クリニック開業前に、成功させるポイントを押さえておきましょう。
この記事では産婦人科クリニックの開業における開業資金や戦略について解説します。ぜひ参考にしてください。
産婦人科をとりまく動向
厚生労働省「令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、産婦人科を主たる診療科にしている医師は1万1,336人で、医師全体の3.5%、全国で診療所に従事する産婦人科医は4,109人で、診療所に従事する医師全体の3.8%を占めています。
また、厚生労働省「令和5(2023)年医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況」によると、産婦人科を標榜する診療所は全国に2,784施設あり、全体の2. 7%です。
単純計算でいえば、各都道府県に産婦人科を標榜する診療所は59施設しかなく、競合クリニックの数自体は少ない診療科といえます。
産婦人科はお産や不妊治療だけでなく、女性特有の乳がんや子宮がんなどの予防にも貢献できる場所です。大きな病院への転送が必要になった時に備えて、地域の基幹病院との連携を強化しておくことで女性たちの健康を守ることができます。産婦人科医として何ができるかをしっかり考えて開業のコンセプトを決めましょう。
産婦人科クリニック開業の資金調達から収入・資金繰りまでのロードマップ
- ※本記載の開業資金・運転資金の目安は、分娩の取り扱いがない施設を前提としています。
クリニック開業を考えるにあたり、資金面はとても重要です。開業資金は「設備資金」と「創業資金」にわけられます。
「設備資金」はテナント契約費や医療機器・設備購入費などです。設計・内装工事費その他を合わせ約5,000万円から約1憶3,000万円が必要で、テナント契約費は賃料の約3カ月分から12カ月分が見込まれます。また、「創業資金」は開業前の人件費や賃料、広告費、医薬品などの購入費用です。
開業資金
開業資金の一例として、下記の項目が挙げられます。
産婦人科クリニック開業に必要な開業資金
横スクロールでご確認いただけます
| 項目(産婦人科:テナント開業の場合) | 所要資金 |
|---|---|
| テナント契約費(礼金・保証金など) | 賃料の3カ月分~12カ月分 |
| 設計・内装工事費 | 2,000万円~7,000万円 |
| 医療機器・電子カルテ購入費 | 1,500万円~6,000万円 |
| 什器・備品購入費(待合設備、診察机など) | 100万円~500万円 |
| IT設備(PC、院内ネットワーク構築、オンライン予約、資格確認システムなど) | 50万円~250万円 |
| その他開業時諸費用(医師会加入、保険加入、広告・広報、医薬品購入など) | 150万円~1,500万円 |
| 開業前運転資金(賃料、人件費、手元資金など) | 1,700万円~6,000万円 |
産婦人科の開業においては、診療の範囲によって設備資金が大きく変わります。
お産を扱う場合は、病床を確保できるような広い建物と土地が必要です。駐車場が確保でき、車でもアクセスがしやすいエリアを見つけましょう。地域の産科の不足具合、競合医院のお産の件数などを調べておくことも重要です。
お産はすぐにかけつける必要があるため、緊急時に備えて院長の自宅に近い立地に開業するパターンも多くあります。
一方で婦人科外来をメインとする場合は、女性特有のあらゆる疾患を診るようになるため、ターゲットの年齢層が全年齢に広がります。そのため都心の物件や駅・バス停から近い好立地で、集患しやすい場所を選ぶとよいでしょう。
また産婦人科では、子宮がんなどの婦人科検診も可能です。婦人科健診や検査などでは、MRI・CT・マンモグラフィが必要になることもあるため、導入する場合は広めの敷地を選ぶようにしましょう。自院で設備を確保しない場合は、連携先の目星をつけて立地を選ぶようにすることが重要です。
合わせて不妊治療もおこなう場合、タイミング法などの一般不妊治療をおこなうのか、高度生殖医療をおこなうのかによって、開業時に用意する設備が大きく異なります。若い女性も多く来院する診療科目となるため、内装に配慮し居心地のよい空間づくりを心がけましょう。また、不妊治療をしていると周りに知られたくない人もいるため、患者さんのプライバシーに配慮した物件を選ぶのも選択肢の一つです。
開業後の運転資金
次に、開業後の運転資金としては、下記の項目が挙げられます。
産婦人科クリニック開業後の運転資金
横スクロールでご確認いただけます
| 項目(産婦人科:テナント開業の場合) | 概算費用(月額) |
|---|---|
| 人件費 | 収入の20~25% |
| 医業原価(医薬品、消耗品など) | 収入の10~20% |
| 家賃・駐車場など | 立地、面積、設備等により異なる |
| 水道光熱費 | 10万円~50万円 |
| リース料 | 5万円~60万円(リース物件による) |
| その他諸経費(広告費、通信費、保険料、医師会費、租税公課など) | 20万円~100万円 |
開業前に資金計画を立て、無理のない経営を目指しましょう。
従業員を必要以上に雇ってしまうと人件費が経営を圧迫してしまいます。開業時は最低限の従業員だけを雇用して、患者さんが増えてきたら従業員の数を増やすようにしましょう。産婦人科クリニックの収入源や資金繰りについては、次の章で詳しく解説します。
産婦人科クリニックの収入源と資金繰り
全国の「令和7年度 保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」によると、産婦人科クリニックにおける外来診療1件当たりのレセプト(診療報酬明細書)平均点数は1,528点です。
全国の診療科別平均診療点数を比べると、最も高いのは東京都で4,208点、次に北海道の2,155点、兵庫県の2,064点が続きます。反対に長崎県は978点、和歌山県は1,002点、青森県は1,018点と低くなっています。
産婦人科で採用するスタッフとしては、看護師と医療事務が中心です。お産をおこなう場合は、お産に関して専門知識を持つ助産師や看護師を確保する必要があります。
また設備内に入院施設も導入する場合は、食事を用意するために栄養士や調理スタッフも雇用しなければいけません。なかには栄養士が栄養指導をするクリニックもあります。
他にも不妊治療をおこなうのであれば、心理カウンセラーを雇って心のケアをおこなうのもよいでしょう。
個人開業と法人開業における収益
「医療経済実態調査(令和5年実施)」によると、産婦人科の個人開業診療所の医業収益は1憶3,950万円、医業費用は9,051万円で、損益差額は4,899万円です。一方、法人開業診療所の医業収益は2億1,496万円、医業費用は2億212万円で、損益差額は1,284万円です。
個人開業に比べ法人開業の方が医業収益は高い一方、医療・介護費用も高くなっています。事業規模は一般的に法人開業の方が大きいため、収益は高くなる傾向があります。また、院長給与に相当する役員報酬が費用として計上されるため、個人開業より費用が大きくなる傾向もあります。加えて、事業規模拡大に伴い各経費も増加する事が多く、結果的に法人開業は医業収益も医療・介護費用も個人開業に比べて高いことになります。
また、法人開業には法人設立や決算対応など、様々な手続きが必要ですが、法人化により節税効果を得られるほか、将来の事業継承が有利に働くことが多いというメリットもあります。分院化や業務範囲の拡大など経営計画によって、個人開業、法人開業の選択が必要です。
産婦人科クリニック開業において注意すべき3つのポイント
実際に産婦人科を開業するときに注意すべきポイントは、以下の3つです。
- 女性の気持ちに寄り添ったコンセプト
- プライバシーに配慮した内装
- さまざまな媒体を用いた多角的マーケティング
順番に解説していきましょう。
ポイント1:女性の気持ちに寄り添ったコンセプト
産婦人科クリニック開業を成功させる秘訣は、「女性の気持ちに寄り添うこと」です。産婦人科クリニックの患者さんは、なかなか妊娠しない、分娩を控えている、女性特有の病気を患っているなど、さまざまな悩みを抱えていることが多く、神経質になりやすい傾向にあります。中には更年期障害や尿漏れなど、人には相談しにくい悩みや不調を訴える患者さんもいます。
産婦人科のクリニックは、そんなデリケートな女性の心にしっかりと寄り添うため、女性が落ち着ける環境を用意することが大切です。患者さんや出産間近の妊婦さん、お母さんと一緒に来た赤ちゃんがリラックスできるような空間づくりを心がけ、明るく癒されるような待合室になるよう、壁紙や備品の色も工夫するとよいでしょう。
またスリッパや備品を女性が癒されるようなアイテムにすること、トイレやパウダールームを整えることも、女性にとって心地よくクリニックを利用していただくために重要です。特に妊婦さんが行動しやすいよう、ゆとりを持ったスペースを作っておくとよいでしょう。
細やかな配慮をおこない、さらにタオルやコットンなどのアメニティを充実させておくと、「ホスピタリティの高いクリニック」という印象になり、患者さんの満足度向上に繋がる可能性があります。 女性の心と身体に寄り添った診察や治療を続ければ、SNSや口コミサイトで評判も広がるでしょう。医師の腕や人柄だけでなく、看護師や受付スタッフの対応、院内の清潔さなどを評価される場合もあるので、快適さやサービスの質にはとことんこだわりましょう。
ポイント2:プライバシーに配慮した内装
産婦人科は、他の診療科よりもプライバシーへの配慮が非常に大切です。窓や入口がガラスの場合には中が見えないようにする、待合室のイスは、患者さん同士が向き合わないようにするなど、細かな配慮をおこないましょう。
また、デリケートな内容の説明をすることもあるため、診察室と内診室は防音・密閉にも特に配慮するようにしましょう。
他には、お産を診る場合や不妊治療をおこなう場合、ご夫婦で来院するケースも多くあります。クリニック内で同伴者の男性が立ち入るエリアと女性の患者さんのみが入れるエリアをわけたり、入り口を別にしたりするなども検討できるとよいでしょう。
ポイント3:さまざまな媒体を用いた多角的マーケティング
産婦人科の患者さんは若い女性が中心ですが、若い方は特に「恥ずかしい」という思いから通院を躊躇してしまう場合があります。そのため、クリニックへの心理的な抵抗感を少しでも軽減できるよう、ホームページでの情報公開を充実させることが重要です。具体的には、院長やスタッフの写真を掲載したり、院内の内装や雰囲気が伝わる写真をホームページで掲載したりすることで安心感を提供しましょう。
さらに、女性の医師がいる場合、それは大きなアピールポイントになります。可能であれば広告媒体にも女性医師の写真を掲載し、クリニック選びに迷っている女性が安心できるようにしましょう。中には女性医師に限定して検索する患者さんもいるため、「○○(地域名)女性医師」「○○(地域名)女医」といったキーワードで自社のホームページが表示されるよう、SEO(検索エンジン対策)も行い、集患に繋げることが期待できます。
若い女性へのアプローチを強化するため、通常の広告や看板に加えて、検索エンジンや各種口コミサイトの評価に真摯に返答することも、患者さんとの信頼関係を築く重要なデジタルコミュニケーションとなりますので、こまめに確認をとるようにしましょう。
産婦人科クリニックの開業戦略3つ
産婦人科クリニックの開業戦略は、以下の3つです。
- オンライン診療
- 不妊治療、更年期障害、美容皮膚科などの特殊外来
- 患者さん満足度向上のため、土日祝も診療
それぞれ解説していきます。
戦略1:オンライン診療
オンライン診療でピルや緊急避妊薬の処方をおこなうことで、元々来院していた患者さんの利便性が上がるだけでなく、新規に診療を受ける方も増えるでしょう。
オンライン診療のほうが場所の制約がなくなるため、遠くに住む患者さんがオンラインで来院する可能性も高くなり、クリニックの売上向上が見込めます。
戦略2:不妊治療、更年期障害、美容皮膚科などの特殊外来
専門性を活かして、不妊治療や更年期障害を診る特殊外来をおこなうことも売上の増加に繋がります。
産婦人科に通院する患者さんの中には、美容には興味があるものの忙しくて美容皮膚科に行けていない方もいます。基本的なレーザーやドクターコスメを取り揃え、美容皮膚科の医師に非常勤として外来を担当してもらうようにすると、患者さんも気軽に利用できるようになるでしょう。
本来、美容皮膚科は集患にコストがかかりますが、院内の患者さんに告知することで、マーケティングの費用を抑えることも可能です。
戦略3:患者さん満足度向上のため、土日祝も診療
平日だけではなく、土日祝日にも診療をおこなうことによって患者数の増加が期待できます。また、いつでも診てもらえる安心感から患者さんの病院に対する印象がよくなり、かかりつけ医として継続して受診してもらえる可能性も高まります。
まとめ
産婦人科は、お産や不妊治療をするかどうかによって、戦略や開業資金が大きく変わります。
またオンライン診療や自由診療など幅広い選択肢があるため、必要資金と開業地の立地、さらに競合クリニックを踏まえた経営方針の検討が必要です。
マーケティング戦略のポイントを押さえ、患者さんに寄り添える産婦人科クリニックを開業して、女性や地域から必要とされるクリニックを目指しましょう。
開業に関して不明点があれば、ぜひフォームからお問い合わせください。

































