開業ノウハウ

クリニック開業の主な理由とは?動機から考える失敗しない医院開業

クリニック開業の主な理由とは?動機から考える失敗しない医院開業

クリニック開業は、多くの先生方にとって、医師としてのキャリアにおける大きな決断の一つといえるでしょう。
その成功に向けた第一歩は、先生ご自身が「なぜ開業したいのか」という原点、すなわち開業理由を明確にすることから始まります。
開業理由は、その後のクリック経営における根幹となり、困難に直面した際の拠り所ともなります。

本記事では、これまでDtoDコンシェルジュがご支援してきた多くのクリニック開業事例に基づき、クリニック開業の主な理由や動機を多角的に分析。
そして、それをいかにして「失敗しない開業」へと繋げるか、その具体的な道筋を解説いたします。

クリニック開業を考える主な理由・動機とは?

クリニック開業を検討される先生方が抱く動機は、実に多様です。
ご自身のキャリアプラン、ライフステージ、そして医療に対する情熱が複雑に絡み合い、開業という決断へと繋がっていきます。
ここでは、多くの先生方に共通する代表的な3つの開業理由をご紹介します。ご自身の状況と照らし合わせながら、思考を整理するための一助としてください。

理由①:自身の理想とする医療の実現

開業を志す動機としてまず挙げられるのが、「自身の理想とする医療を、自らの手で実現したい」という強い想いです。

日本医師会が過去に実施した「開業動機と開業医(開設者)の 実情に関するアンケート調査」でも開業動機として「理想の医療の追求」が最も多い結果となっています。

例えば、「もっと時間をかけて患者さん一人ひとりの話に耳を傾けたい」「自身の専門性を深く追求し、特定の領域に特化した診療を提供したい」「地域に根ざし、予防医療から看取りまで、患者さんの生涯に寄り添う医療を実践したい」といった考えをお持ちの先生も多いのではないしょうか。

クリニックを開業することで、先生はご自身の理念に基づいた診療方針を自由に設計できます。

どのような医療機器を導入し、どのような院内環境で患者さんをお迎えし、どのような接遇をスタッフに求めるか。そのすべてをご自身の裁量で決定できるのです。

患者さんとの信頼関係をじっくりと築き、自らが理想とする医療サービスを追求できることは、開業医ならではの大きなやりがいといえるでしょう。この純粋な想いは、クリニックの明確なコンセプトとなり、他院との差別化を図る上での強力な武器にもなります。

理由②:現状の勤務環境からの脱却

ポジティブな理由だけでなく、現在の労働環境に対する考えを踏まえ、開業を決意される先生方も少なくありません。これは決して消極的な動機ではなく、より良い労働環境と医療提供体制を自ら構築するための強いエネルギーとなり得ます。

大学病院や市中病院における勤務医の労働環境は、依然として厳しい状況にあります。長時間労働や当直・オンコールによる不規則な勤務形態は、心身に大きな負担をかけます。また、医局や組織内の複雑な人間関係、硬直化した人事評価、診療以外の会議や事務作業の多さに、精神的な負担を感じている先生もいるかと思います。

こうした環境下で働き続けることに、将来的なキャリアや自身の健康への限界を感じ、「自身の裁量で働ける環境を整えたい」「診療に集中できる環境を作りたい」という想いが、開業への具体的な一歩に繋がるケースは非常に多いのです。現状の課題を明確に認識しているからこそ、開業後にはスタッフが働きやすい職場環境を整備し、結果として質の高い医療サービスの提供と患者満足度の向上に繋げることができます。

理由③:収入やライフスタイルの改善

医師としての専門性や努力に見合った経済的な対価を求めること、そして自身のライフプランに合わせた働き方を実現することも、開業の重要な動機の一つです。

一般的に、開業医は勤務医と比較して年収が高くなる傾向にあります。もちろん、これは経営者として事業リスクを負い、診療に加えて経営努力を行った結果得られるものです。自身のクリニックの収益を向上させることで、最新の医療機器への投資やスタッフの待遇改善も可能となり、さらなる医療の質の向上という好循環を生み出すことができます。

また、ワークライフバランスの改善も大きな魅力です。開業医は、診療時間や休診日を自身で設定できるため、仕事とプライベートの時間をコントロールしやすくなります。例えば、「子育てとの両立のために平日の午後を休診にする」「趣味の時間を確保するために週休2. 5日制を導入する」といった柔軟な働き方が可能です。自身のライフステージの変化に合わせて働き方を調整できることは、長期的なキャリアを継続していく上で非常に重要な要素といえるでしょう。

知っておくべきクリニック開業の難しさ

理想の医療の実現や収入の向上など、多くの魅力があるクリニック開業ですが、その道のりは決して平坦ではありません。成功のためには、事前に潜在的なリスクや課題を正確に把握し、適切な対策を講じることが不可欠です。ここでは、先生方が開業後に直面しうる現実的な難しさについて解説します。

医師と経営者の両立というハードルの高さ

医師と経営者の両立というハードルの高さ

開業医は、一人の「医師」であると同時に、クリニックという組織を率いる「経営者」でもあります。これまでのキャリアで経験することのなかった、全く新しい役割を担うことになるのです。

経営者として取り組むべき業務は多岐にわたります。資金繰り、人材採用・育成、マーケティング、法務・税務など、医療以外の知識やスキルが不可欠です。

▼経営者としての主な業務を表にまとめました。

業務 具体的な内容
財務・会計 資金繰り、銀行との折衝、税務管理、経費管理、診療報酬請求業務の監督
人事・労務 スタッフの採用・教育、給与計算、勤怠管理、社会保険手続き、労務問題への対応
総務・法務 行政への各種届出、医療法・労働法等の遵守、契約書の管理、施設・設備の維持管理
集患・マーケティング クリニックの認知度向上施策、ウェブサイトやSNSの運営、広告戦略の立案・実行、地域連携
経営戦略 経営理念の策定と浸透、事業計画の策定・見直し、競合分析、新たな医療サービスの検討

多くの先生方が未経験の分野であるため、学習しながら実践していく必要があり、その負担は決して小さくありません。

診療の質を維持しながら、これらの経営業務を適切に遂行していくことが、開業医に課せられた大きなハードルとなります。

開業資金などの経済的リスク

クリニック開業には多額の初期投資と、経営が軌道に乗るまでの運転資金が不可欠です。これらを自己資金のみで賄うのは困難なため、多くの場合は金融機関からの借入など資金調達が必要となります。

資金調達には、事業計画の策定、融資申請など、専門的な知識や面倒な申請作業が求められます。さらに、資金調達はクリニックの安定した運営を左右する重要な要素であり、慎重な検討と準備が求められます。

責任範囲の拡大と求められる役割

開業医が担う責任は、勤務医時代とはその範囲も質も大きく異なります。院長は、クリニックの運営における様々な事柄について、最終的な責任を担う立場となります。

医療に関する責任に加えて、スタッフの雇用を守り、地域医療に貢献し、そして事業を継続させていくといった、経営者としての役割も求められます。万が一、医療や労務に関する問題が発生した際には、院長として中心となって対応にあたる必要があります。

集患やスタッフマネジメントの課題

どれだけ素晴らしい医療を提供できるスキルがあっても、患者様にクリニックの存在を知ってもらい、来院してもらえなければ経営は成り立ちません。

もちろん、勤務先の近くで開業されるなど、これまでの評判や繋がりを活かせるケースもありますが、多くの場合、地域における認知度はほとんどない状態からのスタートとなります。そのため、計画的な広報活動が欠かせません。

ホームページやSNSを活用した情報発信、看板の設置、近隣へのポスティング、地域の医師会との連携など、計画的かつ継続的な集患活動が不可欠となります。また、競合クリニックの動向を分析し、自院の強みを明確に打ち出していく戦略も求められるでしょう。

さらに、クリニック運営の質を左右するのがスタッフの存在です。理念に共感してくれるスタッフを採用し、適切な教育を施し、長く働いてもらえるような良好な職場環境を整えることは、院長の重要な責務です。しかし、人材の採用・育成は容易ではなく、スタッフ間の人間関係のトラブルや、予期せぬ退職など、組織マネジメントに頭を悩ませる院長は少なくありません。

開業を成功に導く具体的なステップ

ここまで開業の動機と難しさについて解説してきました。これらの情報を踏まえ、先生が開業準備を具体的に進めていくための思考のステップを提示します。漠然としたイメージを、実現可能な事業計画へと昇華させるための重要なプロセスです。

まずは自身の動機を深く分析する

すべての計画の出発点は、先生ご自身の「なぜ開業したいのか」という動機を、改めて深く掘り下げ、言語化することです。

「理想の医療の実現」「現状からの脱却」「収入の改善」など、これまでに挙げた動機を参考に、ご自身の考えを整理してみてください。なぜそのように感じるのか、開業によって何を最も実現したいのかを自問自答することが重要です。

例えば、「理想の医療の実現」が最も強い動機であれば、「どのような患者さんを対象に」「どのような医療を」「どのような環境で提供したいのか」を具体化していきます。この作業を通じて明確化された理念やビジョンは、クリニックのコンセプトを決定し、事業計画を作成する上での揺るぎない「軸」となります。この軸が明確であれば、準備段階で様々な選択に迫られた際にも、判断に迷うことが少なくなります。

漠然とした不安を具体的な計画に落とし込む

開業に対する漠然とした不安は、その正体が分からないからこそ増大します。「知っておくべきクリニック開業の難しさ」で挙げたようなリスクへの不安は、具体的な「事業計画」や「資金計画」に落とし込むことで、課題として可視化し、対策を立てることが可能になります。

感情論で悩むのではなく、客観的なデータに基づいた計画を策定することが、不安を解消し、成功の確率を高めるための鍵となります。実際に、開業を検討されている先生方からは、以下のような具体的なご相談が多く寄せられます。

  • 開業場所の相談:診療圏調査に基づいた、集患に有利な場所や物件の選定
  • 資金計画の相談:自己資金の額、必要な借入額、金融機関との融資交渉
  • 集患対策の相談:ウェブサイト戦略、広告、内覧会の企画など具体的な手法
  • 事業計画の相談:収支シミュレーション、人員計画など、計画全体の妥当性の検証
  • スタッフの管理、トラブル対策:採用計画、就業規則の作成、労務管理の方法

これらの課題一つひとつに対して、具体的な数値目標や行動計画を立てていくことで、漠然とした不安は「解決すべきタスク」へと変わります。

1人で悩まず、開業の専門家に相談する

事業計画の策定から資金調達、行政手続き、設計・施工、スタッフ採用まで、開業準備には専門的な知識を要するタスクが山積しています。多忙な診療の傍ら、これらすべての準備を先生お一人で、あるいはご家族の協力だけで完璧に進めることは、現実的に非常に困難です。

開業準備タスクの「重要性」と「専門性」

医院開業準備における様々なタスクを、「重要度」と「専門性」という2つの軸で4つの領域に分類したものです。これにより、事業主(先生)がどのタスクに注力し、どのタスクを専門家に任せるべきかを判断するためにまとめました。

先生は左上の「自身で決断する領域」に最もエネルギーを注ぎ、右上の「専門家の支援が不可欠な領域」では信頼できるパートナーを見つけ、右下の「外注しやすいタスク」は外部に任せることで、効率的かつ戦略的に開業準備を進めることができます。

それぞれの分野には、その道のプロフェッショナルが存在します。クリニック開業を専門とするコンサルタントは、数多くの開業支援実績から得た知見とネットワークを持っています。先生の理念やビジョンをヒアリングし、それを実現可能な事業計画へと落とし込み、各分野の専門家と連携しながら、開業までの道のりを伴走してくれます。

理想の開業を実現するため、多角的な視点からサポートを提供します。事業計画の策定から資金調達、物件探し、人材採用、そして開業後の経営支援に至るまで、あらゆる段階で最適なソリューションを提案します。先生のビジョンに寄り添い、成功へと導くための最良のパートナーとなることをお約束します。

まとめ

本記事では、クリニック開業における主な動機から、直面しうる課題、そして成功に向けた具体的なステップについて解説しました。

クリニック開業の動機は、「理想の医療の実現」「現状の勤務環境からの脱却」「収入やライフスタイルの改善」など多岐にわたります。自身の動機を深く見つめ直すことが、すべての計画の出発点となるでしょう。

一方で、開業には医師と経営者の両立、経済的リスク、増大する責任、集患や労務管理といった多くの困難が伴うことも事実です。しかし、これらのリスクは、事前に正しく認識し、具体的な事業計画に落とし込むことで、対策を講じることが可能です。

クリニックの開業を成功させるには、明確な理念とそれを実現するための周到な準備が不可欠です。一人で抱え込まず、DtoDコンシェルジュを活用して専門家のサポートを得ることも、賢明な選択肢と言えるでしょう。

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