クリニック開業ノウハウ

医療モール開業で失敗・後悔を避ける5つの視点と契約前チェックリスト

医療モール開業で失敗・後悔を避ける5つの視点と契約前チェックリスト

医療モールでの開業は、集患の相乗効果や他院との連携が期待でき、多くの医師にとって魅力的な選択肢の一つです。しかし、そのメリットの裏にあるリスクや注意点を見落としたまま開業すると、「こんなはずではなかった」と後悔につながるケースも少なくありません。

この記事では、医療モールでの開業を検討されている先生方へ、事前に知っておきたい重要なポイントを、具体的なケースを交えながら詳細に解説します。さらに、後悔しないために契約前に確認すべきチェックリストもご紹介します。

最後までお読みいただくことで、医療モールでの開業がご自身の理想の医療を実現する上で本当に最適か、判断するための知識が身につき、確かな一歩を踏み出す自信が得られるはずです。

医療モール開業のメリット

まず、なぜ多くの開業希望医師が医療モールを選ぶのか、その一般的なメリットを再確認しておきましょう。これらのメリットを正しく理解することが、注意点を把握する上での土台となります。

医療モールでの開業が選ばれる理由

集患における相乗効果

複数の診療科目が集まることで、モール全体が「地域の医療拠点」として認知されます。例えば、小児科を受診したお子様の親御様が、同じモール内に内科や皮膚科があることを知り、ご自身の体調不良時に改めて利用する、あるいは眼科でコンタクトレンズの処方を受けた方が、隣の薬局を利用するといった「ついで受診」や「かかりつけの集約」が自然に発生します。これは単独開業では得難い大きなアドバンテージになります。

好立地による「認知度の高さ」と「信頼感」

新しくクリニックを開業する際、地域住民にその存在を知ってもらうまでには相当な時間と労力がかかります。しかし医療モールであれば、「〇〇に新しい医療モールができた」という情報が広まりやすく、モール自体の宣伝効果によって、個々のクリニックも早期に認知度を高めることが可能です。また、複数のクリニックが集結しているという事実そのものが、患者様にとって「何かあっても、ここに来れば安心」という信頼感に繋がり、受診のハードルを下げてくれます。

初期投資や運営コストの効率化

単独で開業する場合、駐車場、待合スペース、エレベーター、バリアフリートイレといった共用設備は全て自前で用意する必要があり、初期投資の大きな部分を占めます。医療モールではこれらを他のクリニックとシェアできるため、特に都市部での開業において、大幅なコスト削減に繋がる場合があります。また、共同で警備システムを導入したり、清掃業者と契約したりすることで、ランニングコストを抑えることも可能です。

他科クリニックとの緊密な連携

日常の診療において、専門外の疾患を持つ患者様をその場で、あるいは同日中に他科へ紹介できる環境は、患者様の満足度を大きく向上させます。紹介状を書くだけでなく、時には直接、他院の先生と顔を合わせて患者様の情報を共有したり、カンファレンスを開いたりすることも可能です。これにより、より高度で包括的な医療を提供できるだけでなく、医師自身の学びや成長の機会にも繋がります。

これらのメリットから、特に初めて開業される先生にとって、医療モールは非常に魅力的な選択肢として映ります。

医療モール開業で失敗しないための5つの視点

メリットの多い医療モールですが、その特性ゆえに生じる注意点も存在します。ここでは、開業後に「こんなはずではなかった」とならないために、事前に知っておくべき5つの視点をより深く掘り下げて解説します。

1:他のクリニックとの連携・人間関係

医療モールの根幹をなす「他科との連携」。これが期待通りに機能しない、あるいは人間関係がストレスの原因になるケースがあります。

契約前に、どのようなクリニックが入居予定なのか、可能な限り院長先生方と事前に顔を合わせる機会(合同の説明会など)を持てないか、企画会社に打診してみましょう。また、モール全体のコミュニケーションを円滑にするための仕組み(定例会の運営有無、トラブル発生時の対応方針など)がどのようになっているかを確認することも重要です。

2:経営の自由度とルールの確認

医療モールは集合体であるため、全体の秩序やブランドイメージを保つための一定のルールが存在します。このルールが、ご自身の思い描くクリニック経営の足かせとなる可能性があります。

例えば、以下のような制約が課されるケースが考えられます。

  • 診療時間・休診日:モール全体で統一されており、「午前中だけ診療したい」「特定の曜日を研究日にしたい」といった柔軟な働き方ができない。
  • 診療内容の調整:他のクリニックと患者さんの取り合いにならないよう、診療科目を重複させない、あるいは予防接種や健診などの特定の診療行為について、実施の可否や運用ルールが個別に調整されることがある。
  • 広告宣伝・看板:モール全体の共同広告費用の負担が求められることがあるまた、施設全体の景観を保つため、個々のクリニックが設置する看板のデザインやサイズ、掲示場所について一定のガイドラインが設けられているケースもある。
  • 運営に関するルール:院長会への参加義務や、駐車場・待合室といった共有スペースの利用方法に関して、細かな取り決めがなされる。

これらのルールは、モールの質を維持するために必要な側面もあります。重要なのは、そのルールがご自身の理想とする医療や働き方と「折り合いがついているか」です。契約書や管理規約の細則を隅々まで読み込み、少しでも疑問に思う点があれば、必ず書面で確認しましょう。「開業してから知った」では対応が困難になってしまう恐れがあります。特に、働き方の変化(例:診療時間の短縮)に対応できるか否かは、長期的な視点で確認すべきポイントです。

3:集患効果の過信と実態

「医療モールだから安泰」とは限りません。期待したほどの集患効果が得られないケースも想定しておく必要があります。

その原因として、まずモール自体の立地や集患力が弱い可能性が挙げられます。事業計画では良い予測が立てられていても、実際の交通量や周辺住民の動きが想像よりも下回ってしまうモールも存在します。

また、入居するクリニックの構成も重要です。「人気の内科と小児科が入るから相乗効果が見込める」と聞いていたのに、直前でどちらかがキャンセルになり、計画が白紙になることも。企画会社から提示される診療圏調査のデータを考慮して、必ずご自身、あるいは第三者の専門家の目で現地を視察し、平日・休日、朝・昼・晩の時間帯ごとの人の流れを確認しましょう。また、入居テナントの契約状況(「内定」なのか「契約済み」なのか)を書面で確認することも重要です。

4:賃料だけではない、トータルコストの把握

費用面でのトラブルも注意したいポイントです。特に、賃料の妥当性については慎重な判断が求められます。

ご留意いただきたいのは、「医療モール=高い」と一概に決めつけるのではなく、コストの透明性が重要であるという点です。賃料だけでなく、以下のような「見えにくいコスト」についても内訳を明確にしてもらい、トータルコストで判断しましょう。

横スクロールでご確認いただけます

費用項目 内容
共益費 清掃、警備、共用部の光熱費、植栽管理など、具体的に何に使われるか。
駐車場代 スタッフ用の台数確保は可能か、月々の負担額はどのくらいか。
共同広告宣伝費 負担額や使途は明確か、効果測定はされているか。
各種組合費や会費 商業施設併設型モールの場合の「店舗管理費」や、モール運営組合費など、賃料・共益費以外で定期的に発生する費用がないか。
契約更新料・更新時の賃料改定 将来的な値上げのリスクが契約書にどう記載されているか。

これらの費用を総合的に検討し、事業計画に正確に落とし込むことが、安定経営の鍵となります。「想定外の出費」が重なり、資金繰りを圧迫することがないよう、契約前に徹底的に確認し、曖昧な点はすべてクリアにしておきましょう。

初期費用として発生する「B工事」について

ランニングコストに加えて、見落とされがちな初期費用としてB工事費にも注意が必要です。B工事とは、建物の躯体や設備との関係から、建物側が指定する工事業者に依頼しなければならない工事(例:空調・電気・給排水など)を指します。近年は工事費高騰の影響もあり、予想以上に高額になるケースが増加しています。費用トラブルの原因にもなりやすいため、

  • どこまでがB工事の範囲か
  • 誰が費用を負担するのか
  • 概算ではなく、必ず見積りを取得すること

を事前に確認されることをおすすめします。

5:企画会社の信頼性とサポート体制

医療モールの企画・管理を担う運営会社は、開業準備から開業後の経営までを支える重要なパートナーです。しかし、サポート体制に問題があるケースも散見されます。

「開業までは手厚く支援してくれたが、開業後はトラブルがあっても対応が遅い」「共有スペースの清掃や管理が行き届いておらず、患者さんからのクレームに繋がっている」「約束されていた集患支援が全く実行されない」といった不満が出てくることもあります。

最悪のケースとしては、トラブル発生時の連絡先すらわからなくなってしまうリスクも考えられます。その場合、モールの運営が立ち行かなくなり、個々のクリニックの経営にも深刻な影響を及ぼしかねません。

その運営会社が過去に手掛けた他の医療モールの実績を調べ、可能であれば実際に入居している医師から評判を聞いてみるのが最も確実です。また、担当者の対応が誠実で、約束事をきちんと書面に残してくれるかを見極めたりすることも重要です。

失敗を避けるために契約前に確認すべきチェックポイント

これまで見てきた5つの視点を踏まえ、医療モールとの契約を決断する前に、必ず確認しておきたい項目をチェックリストとしてまとめました。ご自身だけで判断せず、弁護士や開業コンサルタントといった専門家の助言も得ながら、一つひとつ慎重に確認を進めましょう。

失敗を避けるために契約前に確認すべきチェックポイント

契約内容

賃料や共益費、契約期間、中途解約条項、診療時間・休診日、広告宣伝に関する規約、原状回復義務の範囲が妥当で明確かなど、専門家も交えた確認が必要です。

運営会社

医療モールの企画実績と経営状況の安定性、担当者の誠実な対応、書面での約束、開業後の具体的なサポート体制(集患支援、トラブル対応など)を確認することが重要です。

他のテナント

入居確定・予定の診療科目、院長の人柄・評判・診療方針、モール全体のコンセプトと各クリニックの方向性の一致を確認することで、連携体制を構築していきます。

立地・集患

第三者による診療圏調査の実施、将来的な人口動態や近隣の再開発計画、強力な競合クリニックの有無と将来的な開業可能性について調査し、集患の見込みを評価します。

多様な開業形態の比較検討が重要

ここまで医療モールの注意点を解説してきましたが、これは医療モールでの開業を否定するものではありません。多くの先生方が医療モールで成功を収めているのも事実です。

重要なのは、「医療モールはあくまで有力な選択肢の一つであり、全ての医師にとっての唯一の最適解ではない」と認識することです。

ご自身の診療方針や理想の働き方によっては、戸建て開業やビルテナントでの開業の方が適している可能性も十分にあります。「自由な発想で理想のクリニックを創りたい」という想いが強いなら戸建て開業が、「とにかく駅からのアクセスを最優先したい」ならビルテナントが向いているかもしれません。先生ご自身の理想や目的、何を最優先事項とするかに応じて、それぞれの開業形態のメリット・デメリットを比較し、多角的な視点で検討することが、後悔のない選択に繋がります。

主な開業形態のメリット・デメリット比較

横スクロールでご確認いただけます

開業形態 メリット デメリット
医療モール
  • 集患の相乗効果が期待できる
  • 開業当初から認知度が高い
  • 他科との連携が取りやすい
  • 経営の自由度に制約がある場合がある
  • 他のクリニックとの人間関係に配慮が必要
  • モール全体の方針に影響される
戸建て開業
  • 設計の自由度が高く、理想のクリニックを実現できる
  • 駐車場を確保しやすく、地域に根差した運営が可能
  • 将来的な増改築も視野に入れられる
  • 土地取得費や建築費など初期投資が高額になりやすい
  • 立地によっては人目につきにくく、認知度向上は自力での集患努力に左右される
ビルテナント開業
  • 駅前など利便性の高い立地を選びやすい
  • 戸建てに比べ初期投資を抑えられる
  • 開業までの準備期間が比較的短い
  • 内装や看板設置に制約がある場合が多い
  • 同ビルや近隣に競合が出現するリスクがある
  • 駐車場の確保が難しい場合がある

どの形態がベストかは、先生のビジョンや資金計画、そして何を最も重視するかによって変わります。

医療モールを検討しているなら、DtoDコンシェルジュに相談

ここまで解説したチェックポイントを、多忙な診療の合間に先生お一人で全てを調査・判断するのは、極めて困難です。先生と不動産のプロであるデベロッパーとでは、持っている専門知識や情報量に大きな差があるため、対等に交渉することも容易ではありません。

そこで有効なのが、数多くの開業実績を持つ専門のコンサルタントに相談することです。客観的な第三者の視点から、その医療モールが本当に先生にとって有利な物件なのかを評価し、多様な開業プラン(医療モール、戸建て、継承など)の中から最適な選択肢を共に考えてくれます。

サービスの実績

DtoDコンシェルジュは、多くの医師の開業をサポートしてきた豊富な実績と信頼があります。

  • 医師登録者数:11万人以上
  • 支援実績:45年の歴史と、4,600件以上の開業支援実績
  • 継承開業物件:全国の豊富な物件情報を掲載
  • 受賞歴:2018年に「日本サービス大賞」の「地方創生大臣賞」を受賞

こんな医師におすすめ

開業にあたり、以下のような漠然とした不安や悩みを抱えている先生方を、経験豊富なコンサルタントが力強くサポートします。

  • 自己資金がほぼゼロでも開業を検討できるか知りたい
  • 本記事で挙げたようなチェックポイントを、何からどう確認すればいいか分からない
  • 家庭やプライベートも重視しながら、理想の医療を提供できる働き方を見つけたい
  • 開業後の経営を安定させるための、具体的な収支シミュレーションや事業計画に不安がある

無料会員登録

まずは情報収集から始めたいという先生も、ぜひお気軽にご登録ください。無料会員にご登録いただくと、一般には公開されていない優良物件情報のご紹介や、最新の開業トレンドがわかるセミナーへのご参加、そして経験豊富な開業コンサルタントへの個別相談が可能です。

まとめ

本記事では、医療モールでの開業で後悔しないために知っておくべき5つの視点と、契約前に確認すべきチェックポイントを解説しました。

医療モールは、集患の相乗効果や他科連携など多くのメリットを持つ魅力的な開業形態です。しかし、その一方で、経営の自由度、人間関係、費用、集患効果、運営会社の信頼性といった側面で、事前に確認すべき注意点が存在します。

「良い話だから」と安易に決断するのではなく、契約前の情報収集と多角的な検討が、開業を成功に導く上で不可欠です。

後悔のない開業を実現するため、そして先生が理想とする医療に集中できる環境を整えるためにも、まずは信頼できる専門家(DtoDコンシェルジュ)へ相談し、客観的なアドバイスを得ることから始めてみてはいかがでしょうか。

クリニック開業ノウハウ

開業計画・ポイント

資金・費用

立地選定・診療圏調査

財務・経営

許認可・手続き