クリニック開業ノウハウ

医院開業の方法を完全解説!流れや資金、成功のコツも

医院開業の方法を完全解説!流れや資金、成功のコツも

勤務医としてキャリアを重ねるなかで、「いつかは自身の理想とする医療を実現したい」と、医院開業を考えたことはありませんか。しかし、実際に準備を進めようとすると、「何から始めるべきか分からない」「経営の知識がないのに大丈夫だろうか」「失敗のリスクが怖い」といった多くの不安や疑問に直面するものです。

本記事では、そのようなお悩みを抱える先生方に向けて、医院開業の具体的な方法を網羅的に解説します。新規開業と継承開業の違いから、開業準備の具体的な12ステップ、失敗しないための重要なポイントまで、順を追って詳しく説明します。

この記事を最後まで読めば、医院開業の全体像が明確になり、夢を実現するための確かな一歩を踏み出せるはずです。ぜひ、ご自身のクリニックづくりの参考にしてください。

医院開業で理想の医療を実現するための第一歩

近年、ご自身の専門性をより深く追求したい、地域医療に貢献したい、あるいは理想のワークライフバランスを実現したいといった理由から、医院開業を志す医師が増えています。自らが院長となり、理念を掲げ、理想の医療サービスを提供する。それは、医師としてのキャリアにおける大きな目標の一つと言えるでしょう。

医院開業には、ゼロからクリニックを立ち上げる「新規開業」と、既存のクリニックを引き継ぐ「継承開業」の2つの主要な形態があります。それぞれの特徴を理解し、ご自身の方針に合った方法を選択することが重要です。

新規開業と継承開業のメリット・デメリット

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開業形態 メリット デメリット
新規開業
  • 経営理念や診療方針を自由に設計できる
  • 建物や内装、医療機器を自由に選定できる
  • 新しいスタッフと共に組織文化を築ける
  • 開業当初は患者数が少なく、経営が不安定になりやすい
  • 開業資金が高額になる傾向がある
  • 認知度向上のためのマーケティング活動が必須
継承開業
  • 既存の患者やスタッフを引き継げるため、早期に経営が安定しやすい
  • 医療機器や内装をそのまま活用できれば、初期投資を抑えられる
  • 地域の認知度がある状態でスタートできる
  • 前院長の経営方針や地域の評判に影響される
  • 設備が老朽化している場合、改修に想定外の費用がかかることがある
  • 既存スタッフとの人間関係構築に配慮が必要

医院開業の具体的な流れ【12の重要プロセス】

医院開業を成功に導くためには、多岐にわたるタスクを計画的かつ専門的な視点で進める必要があります。ここでは、開業までのプロセスを最も重要な12のステップに分けて、具体的に何をすべきかを解説します。

医院開業の具体的な流れ【12の重要プロセス】

開業検討(1年半~1年前)

開業の第一歩は、「なぜクリニックを開業したいのか」を定義することから始まります。経営理念と診療方針という根幹を固め、それを実現するための最適な場所を客観的に探し出す、重要な基盤づくりの時期です。

1.経営理念・診療方針の策定

すべての準備の基礎となり、クリニックの根幹をなす「経営理念」と「診療方針」は、開業準備プロセスにおいて最も重要であり、最初に策定すべきステップです。

「どのような医療を通じて、地域や社会にどう貢献したいのか」「患者さんにどのような価値を提供したいのか」といった、先生ご自身の医療に対する情熱や哲学を、明確な言葉で表現します。この理念が、クリニックが目指すべき方向性を示しています。今後の事業計画、スタッフ採用、内装デザインといった、意思決定の判断基準となります。

2.開業地の選定・診療圏調査

経営理念が固まったら、次はその理念を実現するにふさわしい場所を探します。ここで不可欠となるのが「診療圏調査」です。診療圏調査とは、クリニックに来院が見込まれる患者が居住するエリアについて、客観的なデータに基づいて分析することを指します。

「駅に近いから」「馴染みのある街だから」といった主観的な理由だけで場所を決めるのは危険です。客観的なデータに基づき、事業の成功確率を分析することで、開業後の安定経営の可能性を大きく高めることができます。

3.不動産の選定・仲介

診療圏調査で開業エリアを絞り込んだら、いよいよ具体的な物件を探します。開業物件には、大きく分けて「戸建て」「テナント(ビル内)」「医療モール」といった選択肢があり、それぞれにメリット・デメリットが存在します。

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物件の種類 メリット デメリット
戸建て
  • 設計の自由度が高く、理想のクリニックを実現しやすい
  • 将来的な増改築の可能性がある
  • 土地取得費や建築費が高額になりやすい
  • 固定資産税などの維持費がかかる
テナント
  • 駅前や商業施設内など、利便性の高い場所を選べる
  • 戸建てに比べ、初期費用を抑えられることが多い
  • 開業までの準備期間が比較的短い
  • レイアウトや看板設置などに制約がある場合が多い
  • 共用部分のルールに従う必要がある
  • 同ビル内に競合クリニックが開業する可能性がある
医療モール
  • 他のクリニックとの連携が期待でき、患者の相互紹介が見込める
  • 共同広告などで集患効果が高い
  • 駐車場や待合室などを共有できる
  • 同モール内の他クリニックと診療時間を合わせる必要がある
  • モールの運営方針に従う必要がある
  • 近隣に同科のクリニックが開業しにくい

これらの特徴を比較検討し、ご自身の診療スタイルや資金計画に最も適した物件を選定します。この段階では、医療施設の仲介に精通した専門家のサポートを受けながら、立地条件や賃貸条件などを慎重に精査し、契約を進めていくことをおすすめします。

開業計画(1年前~半年前)

検討期で描いた理想を、実現可能な「事業計画書」へと昇華させるフェーズです。これを基に必要であれば金融機関と交渉し「資金調達」を確定させ、クリニックの「設計」や「医療機器」といった部分を決定していきます。

4.事業計画の策定

事業計画書は、医院開業というプロジェクトの「設計図」であり、金融機関から融資を受けるための最も重要な書類です。これまでのステップで固めてきた経営理念、診療圏調査のデータ、不動産情報などを基に、具体的で精度の高い計画を策定します。

特に収支シミュレーションは、「1日に何人の患者を診察し、診療単価はいくらで、売上はいくらになるか」を現実的な数値で示す必要があります。金融機関の担当者を納得させ、円滑な資金調達を実現するために、根拠のある詳細な計画書を作成することが不可欠です。

5.資金調達

事業計画書が完成したら、次はその計画を実行に移すための資金を調達します。開業資金は、大きく「設備資金」と「運転資金」に分けられます。それぞれの具体的な内訳を把握しておくことが、精度の高い資金計画に繋がります。

開業資金の主な内訳例

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区分 主な項目
設備資金
  • 土地、建物の取得・賃貸借契約の保証金など
  • 内装、外装の設計・施工費
  • 医療機器(レントゲン、エコー、内視鏡など)購入費
  • 電子カルテ、予約システムなどのIT関連費
  • 診察台、待合室の椅子、デスクなどの什器備品費
運転資金
(開業後、経営が軌道に乗るまでの費用)
  • スタッフ人件費(給与、社会保険料など)
  • 医薬品、診療材料の仕入れ費
  • 賃料、水道光熱費、通信費
  • 広告宣伝費(ホームページ制作・維持費、Web広告費など)
  • リース料
  • 税理士などへの顧問料

自己資金だけで全てを賄えるケースは稀であり、多くの場合、金融機関からの融資が必要となります。複数の金融機関と交渉し、有利な条件を引き出すためにも、専門家のサポートが有効です。

6.企画・設計・施工

資金調達の目処が立ったら、いよいよクリニックのハード面を創り上げていきます。ここでは、先生の経営理念やコンセプトを、実際の建物や内装デザインとして具現化していきます。

設計・施工業者を選定する際は、単にデザイン性が高いだけでなく、医療施設建築の実績が豊富であることが重要です。患者さんがリラックスできる空間であることはもちろん、医師やスタッフが効率的に働ける動線計画が極めて重要になります。受付から待合室、診察室、処置室、スタッフルームへのスムーズな動線は、日々の業務効率を大きく左右します。

7.医療機器選定

策定した診療方針に基づき、クリニックに必要な医療機器やシステムを選定します。レントゲンや超音波診断装置といった大型の診断機器から、電子カルテ、予約システム、会計システムといったITインフラまで、その範囲は多岐にわたります。

数多くのメーカーや製品の中から、性能、コスト、操作性、そして将来性(メンテナンスやアップデート対応)などを総合的に比較検討する必要があります。高額な最新機器を導入することが必ずしもベストとは限りません。クリニックの規模や診療内容、将来の拡張計画を見据え、過不足のない最適な機器構成を選択することが重要です。

開業準備(半年前~開業)

計画を現実に移す最終段階です。理念に共感するスタッフを採用・研修し、経営の足元を固めます。並行して広報活動で認知を高め、行政手続きを完了させ、開業できるように進行します。

8.リスクマネジメント

開業後の安定した経営を見据え、事前に起こりうる様々なリスクへの備えを講じておくことも、院長の重要な務めです。想定すべきリスクには、以下のようなものが挙げられます。

  • 医療過誤リスク:万が一の医療訴訟に備え、医師賠償責任保険への加入は必須です。
  • 災害リスク:地震や水害などの自然災害が発生した際の事業継続計画(BCP)を策定し、損害保険の加入やカルテデータのバックアップ体制などを整えます。
  • 院長自身の健康リスク:院長が病気や怪我で働けなくなった場合に備え、生命保険や所得補償保険などに加入しておくことも検討すべきです。
  • 感染症リスク:新型コロナウイルスのような感染症の流行に備え、院内の感染対策マニュアルを整備します。

これらのリスク対策を事前に行っておくことで、万が一の事態が発生した際にも、クリニックとスタッフ、そして患者さんを守ることができます。

9.税理士・公認会計士の選定

開業後は、診療に集中する傍らで、経営者として日々の経理業務や税務申告、スタッフの給与計算といった専門的な業務もこなさなければなりません。これらの業務は非常に煩雑であり、専門知識も必要とします。

そのため、医療分野に精通した信頼できる税理士や公認会計士と早期に連携し、パートナーシップを築くことが極めて重要です。開業準備の段階から相談することで、法人設立(医療法人化)に関するアドバイスや、資金調達をする上でも有益な情報をお伝えし、事業計画書の作成支援など、多岐にわたるサポートを受けることができます。経営の基盤を固め、先生が安心して診療に専念できる環境を整えるために、専門家の力は不可欠です。

10.職員の募集・採用・研修

クリニックの評判を左右するのは、院長である先生だけでなく、共に働く職員(看護師、医療事務、検査技師など)の存在です。経営理念に共感し、同じ方向を向いてクリニックを創り上げてくれる人材の確保は、開業成功の大きな要因となります。

求人広告の出稿から面接、採用まで、計画的に進める必要があります。採用後は、クリニックのオープンに向けて、接遇マナー研修や電子カルテの操作研修、医療安全に関する研修などを実施し、質の高い医療サービスを提供できるチームを育成します。オープニングスタッフの質とチームワークが、開業直後のクリニックの雰囲気を決定づけると言っても過言ではありません。

11.広告、広報

どれだけ素晴らしいクリニックを創っても、その存在が地域住民に知られなければ患者は訪れません。開業後のスムーズなスタートダッシュを切るために、開業前から計画的に広報活動を行うことが重要です。

主な広報活動には、以下のようなものがあります。

  • ホームページ制作:クリニックの顔となる公式サイトを作成し、診療内容や理念、院長紹介などを掲載します。
  • Web広告・SNS活用:開業エリアにおけるターゲット層に、Web広告を配信したり、SNSで情報発信を行ったりします。
  • 看板・チラシ:クリニックの場所を知らせる立て看板の設置や、近隣へのポスティングを行います。

これらの施策を組み合わせ、効果的なプロモーション戦略を立案・実行することが求められます。

12.開業手続

開業準備の最終段階として、行政への各種届出・申請手続きを行います。これらの手続きは法律で定められており、漏れなく完了させなければ診療を開始することはできません。

主な手続きには、以下のようなものがあります。

  • 保健所:「診療所開設届」
  • 厚生局:「保険医療機関指定申請」
  • その他:生活保護法や労災保険、自立支援医療などの指定を受ける場合は、それぞれ管轄の行政機関への申請が必要です。

提出書類は多岐にわたり、非常に煩雑です。提出期限も厳格に定められているため、計画的に、そして確実に手続きを進める必要があります。

医院開業を失敗させないための3つの重要ポイント

これまで解説した12のプロセスはどれも重要ですが、その中でも特に医院開業の成否を分ける、絶対に外せないポイントを3つに絞って深掘りします。

医院開業を失敗させないための3つの重要ポイント

1.綿密な資金計画と自己資金の準備

医院開業における失敗の最大の原因の一つが「甘い資金計画」、特に「運転資金の不足」です。

開業時には、内装工事費や高額な医療機器の購入など、設備資金に目が行きがちです。しかし、本当に恐ろしいのは、開業後に経営が軌道に乗るまでの数ヶ月間、収入が支出を下回る期間を乗り切るための「運転資金」が尽きてしまうことです。

多くのクリニックは、開業後すぐに黒字化するわけではありません。地域での認知度が上がり、患者数が安定するまでには、一般的に3ヶ月から半年程度の時間が必要です。その間も、スタッフの給与や家賃、医薬品の仕入れ費用といった支出は発生します。

2.客観的なデータに基づく診療圏調査

「この街は学生が多いから、若い人向けのクリニックが当たるはずだ」「自分の出身地だから、きっと患者さんも来てくれるだろう」といった、思い込みや希望的観測に基づいた場所選びは、失敗しやすいです。

成功する開業医は、必ず徹底した診療圏調査を行っています。国勢調査などの公的な統計データや、専門の調査会社が提供するデータを活用し、開業候補地を客観的に分析します。

  • 人口動態:そのエリアの人口は増えているか、減っているか。年齢構成はどうなっているか(高齢者が多いのか、子育て世帯が多いのか)。
  • 競合分析:周辺に同じ診療科目のクリニックはいくつあるか。それぞれのクリニックの専門性や評判はどうか。自院が参入する隙はあるか。
  • アクセスと視認性:最寄り駅からの距離はどうか。駐車場は確保できるか。人通りや車通りは多いか。

これらの客観的なデータに基づいて、「その場所で、本当に事業として成り立つのか」を冷静に見極めるプロセスが、長期的に成功するクリニックの土台をつくります。

3.開業前から始める集患対策(マーケティング)

「良い医療を提供していれば、患者は自然と集まってくる」という考え方は、もはや通用しない時代です。開業日を迎えても待合室に誰もいない、という事態を避けるためには、開業準備と並行して、開業前から計画的に集患対策(マーケティング)を始める必要があります。

開業の数ヶ月前には、クリニックのコンセプトを伝えるホームページを立ち上げるのが理想です。先生の経歴や人柄、診療方針、導入している設備などを詳しく伝えることで、患者の不安を和らげ、信頼感をつくっていくことが必要です。

医院開業の不安はDtoDコンシェルジュに相談

ここまで解説してきた通り、医院開業には経営理念の策定から始まり、資金調達、物件選定、設計・施工、スタッフ採用、行政手続き、マーケティングまで、膨大かつ多岐にわたるタスクと専門知識が要求されます。

そこでおすすめしたいのが、医院開業の専門家(開業コンサルタント)に相談することです。
開業コンサルタントは、数多くのクリニック開業を支援してきた実績とノウハウを持っています。彼らは、複雑なプロセスを円滑に進めるための道筋を示し、先生が下すべき重要な意思決定をサポートしてくれます。

具体的には、以下のような価値を提供してくれます。

  • 事業計画のブラッシュアップと資金調達支援
  • 診療圏調査と優良物件情報の提供
  • 医療施設専門の設計・施工業者の紹介
  • 医療機器メーカーとの価格交渉
  • 行政手続きのアドバイス
  • 効果的な集患マーケティングの立案

何よりも大きなメリットは、これらの煩雑なタスクを専門家に任せることで、先生ご自身は「どのような医療を実現したいか」という本質的な部分や、院長としての診療準備に集中できることです。時間的、精神的な負担が大幅に軽減され、より良い形で医院開業ができます。

まとめ

本記事では、医院開業を目指す先生方に向けて、開業までの具体的な流れと、失敗しないための重要なポイントを解説しました。

医院開業は、決してゴールではありません。先生が理想とする医療を実現し、地域社会に貢献していくための、新たなキャリアの輝かしいスタートです。
しかし、そのスタートラインに無事に立つためには、信頼できるパートナーの存在が不可欠です。まずは情報収集から始めるとともに、一度、経験豊富な専門家に相談してみてはいかがでしょうか。具体的な第一歩を踏み出すことで、漠然としていた夢が、明確な目標へと変わっていくはずです。

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