クリニック開業ノウハウ

理想のクリニックを実現するために:
成功のカギは勤務医と開業医の「視点の違い」

理想のクリニックを実現するために:成功のカギは勤務医と開業医の「視点の違い」

自分の理想とする医療の実現や、ワークライフバランスの改善など、クリニック開業を検討する理由はさまざまですが、医師のキャリアにおいて、開業は大きな決断の一つです。
患者さんとのコミュニケーションや職員のマネジメントなど、開業医は勤務医とは業務内容が大きく異なります。

本記事ではクリニック開業を取り巻く近年の実態を踏まえつつ、勤務医と開業医の役割の違いや、スムーズなクリニック運営を実現するために押さえておきたいポイントについて解説します。

近年のクリニック開業の実態

近年のクリニック開業の実態

まずは、クリニックの開業を取り巻く環境を見ていきましょう。厚生労働省の「令和6年 医療施設調査」によると、2024年10月1日現在、「休止中・1年以上休診中」を除いた活動中の医療施設数は全国で179,645施設です。
そのうち、クリニックが該当する一般診療所(19床以下、または病床がない施設)は105,207施設と、全体の半数以上を占めます。

診療所数の年次推移
出典:厚生労働省『令和6年 医療施設調査』

病院数や歯科診療所の数は減少傾向にある中で、クリニック(一般診療所)の数は前年比で313施設増加しており、多くの医師が開業医になることを選択していることがわかります。
理由としては、診療時間・休診日を自分で決められるため勤務医に比べて生活環境を改善しやすい点や、自分の理想とする医療を追求できる点などが考えられます。

施設の種類別にみた施設数の動態状況
出典:厚生労働省『令和6年 医療施設調査』

一方で、忘れてはならないのが、勤務医と開業医の業務範囲の違いです。
例えば、クリニックを開業すると、患者さんの診療はもちろん、職員の採用や家賃・光熱費といった経費の支払いなど、診療以外の業務も自ら行わなければいけません。
クリニック内の人間関係を良好に保ち、業務を円滑に進めるためには、経営者として職員を統括するマネジメント能力も求められます。

また、カルテや処方箋の電子化、Web予約・問診といった「医療DX」への対応が遅れると、診療効率の低下を招き、経営を圧迫しかねません。
開業医は、優れた臨床医であることはもちろん、時代の変化に適応して組織を運営していく経営者やマネージャーとしての手腕も求められます。

開業医と勤務医の3つの違い

開業医と勤務医の3つの違い

開業医と勤務医では、求められる役割や日常の業務が異なります。開業を検討しているものの、慣れないクリニック経営を円滑に進められるか不安で躊躇することもあるでしょう。
開業準備では資金や物件といった「ハード面」を意識しがちですが、それらは一側面でしかありません。開業後の円滑なクリニック経営に求められるものは、対人スキルや運営スキルといった「ソフト面」への対応です。

特に、患者さん・職員・医療機関との関係性は、開業医と勤務医で大きく異なります。クリニック経営をより上手に進めるには、3点のギャップを意識することが重要です。

患者さん対応:疾患に加えて生活も診る

患者さん対応:疾患に加えて生活も診る

開業医と勤務医では、患者さんへの対応に違いが生まれます。

勤務医も患者さんの背景を考慮して診療をおこないますが、病院の機能や役割上、どうしても専門的な治療に比重を置かざるを得ないことが多いものです。
一方で、地域医療を担う開業医は、患者さんの生活や家族の状況といった背景により目を向け、患者さんと関わっていくことになります。
こうした役割の変化に合わせて、患者さんとのコミュニケーションの取り方も意識する必要があるでしょう。

職員への対応:クリニック経営を支える大切な仲間

職員への対応:クリニック経営を支える大切な仲間

開業医と勤務医では、職員への対応にも違いが見られます。勤務医の主な業務は診療ですが、開業医は診療以外にも次のような業務を日常的に行う必要があります。

開業医の診療以外の業務

  • 採用
  • 人材マネジメント
  • 教育
  • シフト作成
  • 職員向けの勉強会の企画や運営
  • 福利厚生の整備

開業医にとって、職員は自らの責任で採用する「共に働く仲間」です。自分の理念に共感してくれる職員を採用・育成することができれば、勤務医時には難しかった「理想のクリニック経営」の実現が近づきます。

医療機関との関わり方:受ける側から送り出す側へ

医療機関との関わり方:受ける側から送り出す側へ

開業医と勤務医では、他の医療機関との関わり方でも違いがあります。

基本的に、病院勤めの勤務医は他の医療機関から紹介を受ける側です。地域連携室などが窓口となることも多く、医師自身が他院の状況を詳細に把握していなくても、業務に支障をきたすことは少ないでしょう。

一方で、開業医は患者さんが最初に訪れる医療機関として、適切な振り分けを行う「送り手」です。専門医への紹介や緊急対応の必要性、各病院の得意分野などを判断し、適切な医療機関へつなぐためには、平時から地域の医療機関と関係を構築し、医療事情を把握しておく「外交力」も求められます。

開業医が直面しやすい運営上の悩み

開業医が直面しやすい運営上の悩み

開業医と勤務医では、求められる役割や業務内容が大きく異なります。それを意識せずに開業してしまうと、思わぬトラブルにつながりかねません。
開業医が直面しやすい運営上の悩みを、患者さん対応・職員への対応・他の医療機関との関わり方という3つの視点で見ていきましょう。

患者さん対応患者さん対応

開業医の悩みで多いのが、患者さんとのコミュニケーションの取り方です。勤務医・開業医ともに、患者さんとのコミュニケーションは重要な事項ですが、経営への影響度が異なります。

例えば、説明が専門的すぎる、パソコンばかり見ていて目が合わないといった対応は、患者さんの不信感につながりかねません。
一方で、「説明が丁寧でわかりやすい」「先生の人柄が良い」といった評判は、新たな患者さんがクリニックを選ぶ際の大きな決め手となります。
分かりやすい言葉を選ぶ、患者さんの目を見て話すなど、開業医は勤務医以上に患者さんに寄り添った丁寧な対応が求められます。

職員への対応職員への対応

開業医は患者さんの診療だけでなく、職員のマネジメントも行う必要があります。「人」の問題は、経営者が抱えやすい悩みの一つです。

例えば、経験豊富な職員だからといって業務を集中させすぎてしまうと、万が一その職員が退職した際に、運営に支障が出る可能性があります。また、信頼して任せすぎた結果、こちらの指示が通りにくくなるかもしれません。
医師自らがリーダーシップを発揮して、メリハリのある組織運営を行う姿勢が大切です。

他の医療機関との関わり方他の医療機関との関わり方

病院であれば、専門の部署や職員が他の医療機関との連携を担当しますが、開業医はそれらの業務を自らの裁量で行います。言い換えると、積極的に他の医療機関との連携に取り組むことで、地域医療のネットワークを広げられるということです。

開業後の挨拶回りや情報共有によって他の医療機関と関係性を築き、いわゆる病診連携や診診連携がスムーズになると、患者さんに提供できる医療の質やサービスの幅は格段に向上します。

クリニック開業において、医学的な知識・技術はもちろん、対人スキルや組織運営のノウハウも強力な武器になります。

【開業に向けたイメージ作り】開業前にクリニック勤務という選択肢も

【開業に向けたイメージ作り】開業前にクリニック勤務という選択肢も

開業医に求められる業務は、職員のマネジメントや他の医療機関との関係性構築など、多岐にわたります。開業医と勤務医では業務内容や働き方が異なるため、開業後は変化に戸惑うケースも多いようです。

そのような変化や視点の違いを事前に把握できる選択肢が、「開業前に別のクリニックに勤務してみること」です。実際にクリニックで勤務し、現場を自分の目で見ることで、開業後に何をすべきかが明確になります。
また、患者さんとのコミュニケーションや職員のマネジメント、他の医療機関との連携の仕方といった、開業医ならではの業務を経験することも可能です。

実際に、将来の開業を見据えてクリニック勤務を選択し、開業医へと転向した先生方の事例をご紹介します。

事例1.開業医の実務を他クリニックで経験し理想の医療を実現:A医師(40代前半)のケース

以前は大学関連病院の小児科に勤務していたA医師は、近い将来の開業を見据えて、自身の想定に近い規模のクリニックへ転職しました。
勤務中は、先輩開業医である理事長の仕事を見ながら、患者さんの満足度向上のための施策はもちろん、集患対策や職員の労務管理、クレーム時の対応方法から、機器の管理まで、開業医として必要な実務を網羅的に経験。

現在は、約2年間のクリニック勤務で得た経験をもとに、クリニックを開業しています。事前に現場のノウハウを習得していたことで、独立後の経営も早期に安定し、自身が描いていた理想の医療を実現できたケースです。

事例2.サテライトクリニックの院長を経て、集患リスクなく独立:B医師(40代後半)のケース

既存の2拠点のクリニック経営が安定し、3拠点目のサテライト展開を構想していた医療法人A会。
A会の理事長は「法人内で勤務してくれる医師がいれば、サテライトクリニックを開設したい」という意向を持っていました。そこで院長として着任したのが、開業も視野に入れて求職中であったB医師(糖尿病内科)です。

B医師はサテライトクリニックの分院長として診療を行い、患者さんとの信頼関係を構築。
クリニック勤務医として診療を続けた後に独立できるため、新規開業のハードルである集患のリスクを回避することに成功しました。
その後、A会よりB医師へ営業権が譲渡され、開業初年度から黒字での運営を実現しています。

事例3.クリニックで訪問診療のノウハウを習得して開業:C医師(30代後半)のケース

大学医局に在籍し、大学病院に勤務していたC医師。約1年半後にご家族の医院を継承開業予定でしたが、継承後は外来だけでなく、地域のニーズや時勢を鑑みて「訪問診療」も取り入れた医院経営を計画していました。

そこで、開業後の業務を円滑に進める準備として、訪問診療を行っているクリニックへ非常勤勤務医として勤務。現場でクリニック勤務医としての外来診療や訪問診療の実務経験を積みました。

事前のクリニック勤務を通じて訪問診療を経験していたことで、地域医療のニーズに対応するというご自身が思い描いていた理想の形で継承開業を実現されています。

経験を積み確信を持って開業へ

経験を積み確信を持って開業へ

医師の基本的な業務は患者さんを診ることですが、開業医と勤務医では業務内容や役割が異なります。
クリニックの開業はゴールではなく、理想の医療を実現するためのスタートです。漠然とした不安を抱えたまま開業するのではなく、開業前にクリニック勤務を経験してみるのも、戦略的な選択といえるでしょう。

クリニックに勤務する中で、開業後の実務を体感できます。自分が開業医としての適性を備えているかを判断する材料になると同時に、不安の払拭にもつながるはずです。

45年以上にわたり医師の開業・転職・継承をトータルで支援してきた総合メディカルが提供する「DtoDコンシェルジュ」は、将来を見据えたキャリア形成をサポートします。
将来的な開業を検討している方は、クリニックに勤務して開業の疑似体験を行うという選択も視野に入れてみてはいかがでしょうか。

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