開業事例

とねクリニック

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とねクリニック

開業タイプ 新規開業
科目 内科、循環器内科
所在地 〒584-0072 大阪府富田林市高辺台2-15-10
TEL TEL:0721-29-0300
URL http://tone-cli.com

インタビュー

開業のきっかけを教えてください。

開業のきっかけは、大きく2つあります。1つは父の病気です。開業前、私は循環器を専門に勤務医として働いており、父が患者として受診していました。2014年に父の肺がんを見つけた際、85歳の高齢でもあり、どのような治療法が適しているのかを熟考しました。完全治癒を目指すには切除が必要ですが、高齢の体で耐えられるだろうか。手術を選択しない場合は、放射線や抗がん剤での治療になり、その場合は看取りまでを視野に入れた支援が必要だと考えました。

父も医師で、勤務医だったころ祖父を自宅で看取っています。祖父は脳梗塞から寝たきりとなり、最期は在宅での生活を希望しました。私は当時中学生だったのですが、祖父は近隣の開業医に支援してもらいながら、夜間は父が支えていたのを覚えています。当時の父の姿を思い出し、今度は私が父を在宅で支える番だと思い、開業を意識するようになりました。

とねクリニックのイメージ
院長 刀禰 央朗 氏

もう1つの理由は、勤務状況や自分のキャリア形成です。40代後半になり、将来性について考えるようになり、同期で、すでに開業している友人に相談しました。過去に勤務していた病院で、医師の引き上げなど、いわゆる医療崩壊に近いような状況になった時も、開業を考えたことがありました。しかし、その時は消極的な“逃げ”の選択肢としての開業であり、モチベーションは低く、どのような診療を行うかといった理念や経営に関わるという意識も無かったと思います。

今回、年齢やキャリアを重ねたことと父の病気もあり、これを逃したらチャンスはないと思い、開業に踏み切りました。15年春から本格的に動き始め、経営コンサルタントや同期の友人に相談に乗ってもらうようになりました。そして、16年5月、50歳で開業しました。

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採血や点滴、心電図検査などを行う処置室。
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受付隣の車いすもスムーズに入るバリアフリー化トイレ。受付から離れた処置室隣にもトイレあり。
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さまざまな疾患に対応できるようエックス線検査室も整備。

開業にあたって気をつけたことはありますか。

私は小学校から高校まで富田林市で生活し、大学時代はこの地を離れましたが、医師になってからの勤務地も、大阪府済生会富田林病院や大阪府立羽曳野病院(現・大阪はびきの医療センター)などで、ほとんどを地元で過ごしています。現在の住まいも富田林市内にあり、地元愛は強い方だと思います。地元に恩返ししたいという気持ちも強いため、開業は富田林市でと決めていました。

勤務しながらの開業地探しでしたので、総合メディカルに協力していただきました。開業した土地は、もともと駐車場だったのですが、総合メディカルの後押しと地主さんに恵まれて、当地でのクリニック開業ができました。

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各種検査をもとに精密な診断と治療を心がけている。

クリニック周辺は静かな住宅街です。隣接する広い公園はたくさんの花や木々等、季節の移ろいを感じることができ、地域住民の憩いの場所となっています。クリニック建設前の近隣あいさつの際、できるだけ景観に影響しないよう配慮してほしいとの声がありました。当院の理念としても患者さんやご家族の笑顔を掲げており、丁寧な診療にご満足いただくことを基本方針としており、目立つ外観で患者さんを呼び込むような考えはありませんでした。そこで、平屋のつくりや自然にとけ込むイメージの外壁を選び、まるで何年も前からそこに存在したかのように景色に馴染む建物が完成しました。とねクリニック ロゴマーク

内観は私の意見を多く取り入れ、職員の動線を考えて患者さんの廊下以外に、バックヤードをつなぐ廊下をつくりました。奥から処置室、エックス線検査室、超音波検査室、診察室、事務室まで、スタッフが行き来できる動線を設けて、患者さんの動線とぶつからないようにしています。また、道路から玄関への入り口やトイレも含め、院内はすべてバリアフリーにし、どのような状態の患者さんも受診しやすいようにしています。

ロゴマークは、幸運の象徴・4つ葉のクローバーをモチーフにしています。当時小学4年生の息子が考えたもので、4つ葉の1つは心臓や循環器、動脈や静脈をイメージして赤と青の2色にしています。軸は「とね」の「と」を想起させたいと、私が付け加えました。息子と私の合作で、大変気に入っています。

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クリニックの特色を教えてください。

循環器内科は長年、経験してきた分野ですので、専門性の高さで地域に必要とされるようになりたいと思います。住宅街の中にあることから、基本的な疾患については『何でも診ます』というスタンスでいます。実際、じんましんや皮膚疾患などの患者さんも通院中です。循環器をはじめとする内科が中心ですが、相談事があれば、分け隔てなく対応できる「かかりつけ医」としての役割を果たしていきたいと思います。

外来は現在1日30人程度で、昨年5月の開業以来、右肩上がりで伸びています。10月くらいから、ウイルス性疾患、インフルエンザ、肺炎などの患者さんが受診されるようになり、今年に入ってから、患者さんが増えるようになりました。10代~20代は発熱などの急性疾患、30代~50代くらいは生活習慣病やぜんそく、60代以降は複数の疾患を持つ患者さんが多いですね。夕方は19時まで診療していますので、仕事帰りの方たちも多く受診してくれています。

当院でトリアージ的な対応をし、専門的な医療が必要であれば、近隣のPL病院や大阪府済生会富田林病院、近大病院等への紹介も行っています。病院との連携も重視しており、以前勤務していた大阪府済生会富田林病院をはじめ、近隣の医療機関の連携室にも挨拶に回りました。顔見知りの医師も多く、顔の見える関係づくりに力を注いでいます。勤務医時代にずっと診察していた高齢の患者さんが、「先生が戻ってきた」と当院に受診してくれるようにもなりました。ふだんは当院で安心感を得てもらい、重篤な場合はより専門性のある病院につなげることで、地域の方々を支えていきたいと思います。

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心臓、腹部などの超音波検査は刀禰院長自らが実施。
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症状に伴う不安を軽減できるよう、スタッフも笑顔の対応を心がけている。
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基本となる心電図検査は自動解析ではなく、必ず院長の目で確認。24時間心電図検査も院長が所見レポート作成する。

在宅医療の取り組みはどのような状況ですか。

開業から1年で、看取りを2件経験しました。勤務医時代には、さまざまな疾患で最期を迎える方を見てきました。病院での死亡宣告は、心電図モニタがフラットになったとき、「何時何分ご臨終です」と死亡時刻と共に宣告します。

しかし、在宅医療には心電図モニタは無く、クリニックの外来診療中など臨終の瞬間に間に合わないことの方が多いと思います。看取りの経験を通じて、大事なのはモニタなどの客観的な指標ではなく、患者さん本人や家族が死を受け入れる心の準備ではないかと考えるようになりました。逆に心の準備ができていない場合は在宅看取りなど不可能で、結局、入院歴のある病院や救急病院へ搬送され、適応の無い医療行為に時間が割かれ、穏やかな別れの時間が確保できなくなるように思います。在宅医療を始めたばかりの私が言うのはおかしいかもしれませんが、この心の準備の基礎となる信頼関係を築くことが、在宅医療の醍醐味と考えています。

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「開業し在宅医療の重要性に気付いた」と話す。

一方で最近、入院中の70代後半の末期心不全の患者さんについて、在宅診療の打診がありました。この方は退院前に急変し、そのまま病院で亡くなられました。心不全でも末期がんでも、退院直後の在宅診療開始早期に急変した場合は、信頼関係を築く間もなく紹介元へ再入院となり、そのまま最期を迎えるケースもあると聞きます。病状によっては在宅診療を開始するタイミングが難しい、という経験をさせていただいたと思っております。

富田林医師会では在宅医療に力を入れており、在宅診療医をAチーム、Bチームに分けて、5月や9月の連休、夏休み、年末年始など当番制を敷いて、バックアップ体制を整えています。熱心に在宅医療主体で運営しているクリニックもありますが、当院は開業して1年、在宅医療については外来診療とのバランスをもう少し見てみたいと思います。午前は外来、午後は在宅診療のみというクリニックは開業20年以上の大先輩で、長きにわたり地域からの支持を受け、前述の信頼関係が構築されているからこそ、在宅主体にシフトできているのではないかと推察します。まずは、土台となる外来診療で地域の支持を得て、外来で支えた患者さんが受診できなくなったら、その時は在宅に出向き、看取りまでも支える。自然な流れの中で、いつのまにか在宅患者が増えていく、というのが理想です。

開業から2年目に入り、さらに地域医療に貢献していく中で、外来患者と共に少しずつ在宅患者が増えていく様、努力していきたいと思います。専門である循環器疾患を中心に生活習慣病全般、広く一般内科疾患を診療し、自分の守備範囲を超えると診断したら迅速に連携医療機関へ紹介する、開業医として当り前の役割を果たしていきたいと思います。

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