開業事例

医療法人れんげ会 小川産婦人科

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医療法人れんげ会 小川産婦人科サムネイル
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医療法人れんげ会 小川産婦人科

開業タイプ 継承開業
科目 産科、婦人科
所在地 〒547-0044 大阪府大阪市平野区平野本町2-6-32
TEL TEL:06-6791-0567
URL https://ogawasan.com

インタビュー

開業のきっかけを教えてください。

医師になり、実際に勤務を始めると、大きな病院の産科でリスクの高い症例も経験するようになりました。麻酔科医や救急医などの専門家とチームで立ち会っていたため、安心感はありましたが、一人でできるのかと自問すると、自信がなくなることもありました。マネジメントスキルを身につけるため、医師以外の仕事も並行して手掛けていましたので、比較的時間に余裕のある産科以外での開業やサイドビジネスに注力するという選択肢もあると心が揺らいだこともあります。

人が育つことに関わりたいと思い、産科か小児科を希望して医学部に入りました。開業についても、学生時代から考えており、開業医の仕事を見学させていただいたり、総合メディカルのDtoDに登録し、開業した際のイメージを膨らませていました。

医療法人れんげ会 小川産婦人科のイメージ
院長 室谷 毅 氏

けれども、よくよく考えると、当直のアルバイトも含め産科の仕事は、呼吸をするのと同じような感覚で生活の一部として行っていました。改めて産科の仕事が好きなんだと気づき、自分が苦痛を感じず自然により良くしたいと取り組めることが人生を賭けてできる本業ではないかと思い始めるようになりました。本業と思えるものに本気で取り組むことが、自分の目指す人生のゴールに近いと思い、腹を決めました。2017年、改めて総合メディカルに連絡し、継承を希望する先生を紹介してもらいました。

総合メディカルに初めて紹介していただいたのが、小川産婦人科前理事長の小川誠司先生です。小川先生は丁寧に患者さんに接しておられ、これまで創ってこられた環境に感銘を受け、小川先生の仕事を引き継ぎたいと思いました。

すぐには継承せず、まずは当直で勤務し開業医の仕事を学びました。「好きにやっていいよ」と言っていただきましたが、小川先生が大切にしている丁寧な患者対応は重要視しました。スタッフは全員引き継ぎましたので、各人の考え方を理解することも必要と考えました。約1年半勤務し、小川先生の話をうかがいながら、マネジメントの手法を考えていき、19年4月、継承、開業しました。
小川先生にはチャンスをいただけたことに感謝しています。

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継承後も小川産婦人科の名前を残して開院した。

どのようなクリニックを目指していますか。

患者さんにとって一番良いケアは何だろうと常に考えています。妊娠、出産、産後が、一生の自信になるような体験になってほしいと願っています。出産経験が力になり、人生が豊かになるきっかけになると良いなと思います。

産科は初診から出産まで、約8ヵ月間、じっくりと関わることができます。じっくり時間をかけながら、母親自身が成長するのを応援するような感覚です。当院で、母親と子が豊かな人生を送るためのサポートをしていけたらと思います。

具体的には、母親の心を満たすことを大切にしています。安心して信頼してもらうことが前提ですから、何でも話してもらい、一人ひとり丁寧にサポートすることを心がけています。コミュニケーションの基本は相手の価値観を尊重し、敬意を示すことです。分かりづらいことは絵に描いたり、「ほかに何か聞きたいことはありませんか」と質問をうながすなど、不完全燃焼で帰らせないように工夫しています。

大病院では慌ただしい中での出産でしたが、当院は穏やかな雰囲気の中で母親の産む力、赤ちゃんの産まれる力を信じてサポートする「待つお産」を大切にしています。その環境をつくることのできる助産師・看護師が一緒に取り組んでくれるので、心強いと感じています。また、助産院「はぐくみ」では、母乳育児の相談にも対応し、母親の精神面に配慮しながら、根気よく支えてくれています。

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広い窓から明るい陽射しが差し込む待合室。
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間接照明を用い、温かい雰囲気の分娩室。
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出産後、落ち着いて過ごせるよう配慮した居室。

患者数など、クリニックの現状を教えてください。

患者さんは、おばあちゃんの代から当院で出産しているという人もいますし、新規の方も増えています。看板やホームページのほか、ロコミサイトを見たという方もいます。YouTubeでの発信は、SEO対策にも効果的で、クリニックのある区以外からの患者さんも増えています。

現在の分娩数は月50件台です。開院後は年々増加し、月40件ほどに達した際に、一人では無理だと判断しました。20年10月に副院長に来ていただき、ほっとしました。それから分娩数も増え、余裕をもって診療できるよう、信頼できる非常勤医師に来ていただいております。私たちの都合で分娩のタイミングをコントロールするようなことは絶対にしたくありません。不自然なかたちでお産を進めていくとトラブルを引き起こすリスクも高まります。

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母親の心を満たすことを大切にし、診療に当たる室谷毅院長。

開院から3年が過ぎ、今後はしっかりとした組織づくりに取り組みます。私がすべてに関わらなくても自立し、成長していける組織が目標です。これまでは、増加する患者さんの対応で精いっぱいでした。スタッフの頑張りで、患者さん一人ひとりに丁寧に対応する環境ができ始めています。
これからの3年は、職員の満足度を高めることで組織の基礎をつくりたい。そのために、スタッフルームや事務職のワークスペースも確保し、各人がよい仕事に取り組める環境を作っているところです。

職員には、「日常感じる感情の質が人生の質。信頼されている、自分か成長している、ワクワクするなど、ポジティブな気持ちをたくさん感じ取れる職場にしよう」と常に伝えています。スタッフ自身が心を満たしながら患者さんに接すると、患者さんの満足度も上がるのではないでしょうか。

継承元インタビュー

小川産婦人科は1916年開業で、私は4代目です。
産科は大きなリスクも伴うため、父からは「引き継がなくてもよい」と言われましたが、産科の良い面も知っていたので継承しました。しかし、一人で周産期に関わるのはとても厳しかった。「継ぐと決めたからには最後まで」という考え方、自分の代で途絶えさせることへの抵抗感にとらわれて、心身ともにすり減っていく感覚になりました。樵悴した私の姿を見た妻と娘から「辞めるのも選択肢の一つではないか」と背中を押され、継承を決断しました。

継承してくれる医師を探し何人かとお会いしましたが、譲りたいと思える人が見つからず、総合メディカルに相談し、紹介を受けたのが室谷先生です。室谷先生は、お産に対して熱い思いを持ち、患者さんへの対応が丁寧で技術もしっかりしたものをお持ちです。室谷先生なら任せられると思いました。「小川産婦人科の名前を使いたい」と言ってくれたときはうれしかったですし、両親もとても喜びました。名前が残ったことで初代からの思いがつながったと感じています。

私も室谷先生も継承は初めてなので、知らないことばかりでしたが、総合メディカルがきめ細かく支援してくれました。両者にストレスを感じさせないよう気配りをして、継承業務を進めてくれたと思います。

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小川産婦人科前理事長 小川誠司氏

何代も続く医院を継いだ人は、辞めるという選択肢はないかもしれません。迷っているのなら、継承という方法もあります。辞めることは負けではなく、戦略的撤退。現在は、別の医療機関に常勤し、複数の医師とともに分娩に関わりながら、元気で楽しい生活を送っています。失敗したと思うことは何一つありません。

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