開業事例

あさひ町南大通クリニック

あさひ町南大通クリニックギャラリー
あさひ町南大通クリニックギャラリー2
あさひ町南大通クリニックサムネイル
あさひ町南大通クリニックサムネイル2

あさひ町南大通クリニック

開業タイプ 継承開業
科目 内科、循環器内科、胃腸科、リウマチ科、小児科
所在地 〒067-0024 北海道江別市朝日町3-30
TEL TEL:011-383-9816
URL https://www.asahicho-clinic.or.jp/

インタビュー

開業のきっかけ、開業までの準備を教えてください。

初期研修2年目のころ、プライマリケアを専攻したいと思い、後期研修先として札幌市の手稲渓仁会病院の総合診療科(家庭医プログラム)を紹介していただきました。開業を考え始めた30歳から35歳くらいまでは医療的な知識や技術を習得することに専念しました。入職時から開業志望を理事長に伝え、35歳の時、同法人内のクリニック院長を志願。運営委託を受けていた喜茂別町立クリニックで2年間、院長として経営やマネジメントを実践で学びました。この経験を通して、スタッフが高いパフォーマンスを継続して発揮するには、どのような環境が必要か、勤務医では学べない視点を持てるようになりました。

総合メディカルの開業支援セミナーにも何度か参加しました。いくつかの案件の中で、自分の理想とする医療が実現できる場所として当クリニックの継承を選択しました。古くからの住宅街で高齢者が多いのですが、札幌市のベッドタウンとして若い世代も増えており、医療需要の増加も見込めます。

あさひ町南大通クリニックのイメージ
院長 宇土 有巣 氏

資金は全額、銀行から借り入れしました。事業計画については、総合メディカルに立案や交渉を行っていただき、大変助かりました。そのほかにも臨床検査技師の紹介や法的に不明な部分の相談など、開業後も総合メディカルに力を貸していただいています。

継承はスムーズに進みましたか。

2018年5月、私が経営権を持ち、前院長には勤務医として継続してもらうことになりました。前院長からの提案で、2年かけて、患者さんやスタッフを引き継ぐ計画にしました。

スタッフは、これまでの習慣と新しい習慣の間で戸惑うこともあったようです。私が働くようになり、今までに見たことのない検査項目のオーダーや薬の処方せんが増えました。クリニック内に2つの医療のスタンスができたわけで、戸惑うのは当然です。前院長は、引き継ぐ部分と私の考え方を通したい部分があることを理解し、尊重してくださいました。

あさひ町南大通クリニックのイメージ2
藤原昌平医師と二人三脚で診療を担う。

2年間、一緒に働くのは長い、と思ったこともあります。しかし、前院長にとっては退職まで2年間が必要だったのでしょう。継承するなら前院長の考え方を尊重しながら引き継ぐ方がよいと思います。20年5月、前院長の勇退と同時に、藤原昌平医師が入職。旧知の仲で、スタンダードな診療を心がける点が私の方針と合い、当院の診療が本格的にスタートしました。

どのようなクリニックを目指していますか。

良質なプライマリケアで地域を支えるクリニックを目指しています。プライマリケアには、いろいろな定義がありますが、私は、なんでも診ることと解釈しています。その上で、自身で解決できるもの、できないものを判断し、最適な治療につなげる役割だと思います。診療科の範囲は、医師の力量のほか、院内の設備やニーズ等によって変わってくるでしょう。当院は内科のほか、小児、泌尿器、精神、整形外科等を受け入れています。

患者さんにもプライマリケアを理解していただく必要があります。高齢になればいろいろな疾患が現れ、複数の医療機関を受診する患者さんもいらっしゃいます。お話を聞く中で、「ご希望であれば、医療機関をまとめるためのお手伝いもできますよ」と情報提供し、理解を促しています。

あさひ町南大通クリニックのイメージ3
革張りソファと間接照明でモダンな雰囲気の待合室。

クリニックで取り組んでいることを教えてください。

治療法のアップデートを重視しています。専門医ではないので、主だった疾患のガイドライン改定を見逃さない、最新の論文を読む、スタンダードな治療法は常に調べて取り入れる、この3点を大切にしています。今後は、看護師などのスタッフとも共有していきたいですね。疾患別、主訴別の対応法などを共有すると効率化が図れると思います。

訪問診療は、当初の30名から月間の延べ人数が100名に伸びました。診療範囲もリウマチ診療、ワクチン、睡眠時無呼吸症候群、骨密度検査など、継承前は無かったものも順次、導入しています。おかげで新規患者が増え、1日の外来患者数は約70名です。

あさひ町南大通クリニックのイメージ4
白を基調に清潔感のある受付。

効率化やデジタル化にも取り組んでいます。医療機関は民間企業に比べ、効率化の意識が低いと思います。電子カルテも含め、効率化を順次進めています。患者さんの受診費支払いのオンライン決済や、書類の共有をクラウドで行うなどの取り組みです。

コストの適正化も図っています。物品リストを作り、複数の卸売業者の見積金額を把握するなど、物品や金額を可視化しました。リストづくりから私が担当しましたが、良い勉強になりました。今後、クリニックを増やしていくときに役に立つ財産ができたと思います。

あさひ町南大通クリニックのイメージ5
宇土院長の示すビジョンを実現するスタッフ。

職員の待遇改善も図っています。以前はギリギリの人数だったため、個人的な用事や健康問題の時に休みづらい状況でした。現在は常勤医師2人、非常勤医師2人、看護師4人、事務4人、検査技師2人、栄養士1人で、余裕をもって働けていると思います。

あさひ町南大通クリニックのイメージ6
腹部、心臓、甲状腺などの状態を見る内視鏡検査。
あさひ町南大通クリニックのイメージ7
レントゲン検査、骨密度測定など画像検査にも対応。
あさひ町南大通クリニックのイメージ8
宇土院長、藤原医師は外来、訪問、それぞれを交替で担当する。

今後の目標を教えてください。

取り組みの中にビジョン、ミッション、バリューを取り入れ、浸透させることです。

バリューの1つである「尊重」ということひとつをとっても、互いに礼儀正しくするという道徳的な意味だけではありません。礼儀正しくない態度が、生産性を落としたり、ミスを増やしたりすることは行動科学的にわかっています。特に医師は不遜な態度を取りがちですが、私が医師を代表して礼儀正しく行動することで職員にも重要性を示しています。

あさひ町南大通クリニックのイメージ9
「良質なプライマリケアを提供したい」と語る宇土院長。

今後は、「江別市に“良質なプライマリケア”を提供する」というビジョンを達成するため、市内で複数の分院展開を考えています。人やモノを効率的に活用できるようにどのクリニックも同じシステム、同じ物品で統一し、どこにいっても同じスタンスで働けるという風にしたいと思います。ミッションに掲げた「患者、職員、地域の成長と幸福に貢献する」は、だれも犠牲にしない医療にしたいという思いです。赤字を出したり、無駄な検査をして患者さんの負担を増やしたり、過剰労働になってスタッフに負担をかけるようなことはしたくありません。みんなが幸福になる医療を提供したいと思います。

イギリスでは、まずは家庭医を受診して、必要があれば専門医に紹介します。いきなり病院を受診することは、制度としてありません。日本はアクセスフリーですが、今後はイギリスのような制度も必要になるでしょう。その時に、当院がクリニックを複数持ち、江別市全体のかかりつけ医になれるように努力したいと思います。

また、新型コロナウイルス感染症に対して、発熱やかぜ症状のある方を受け入れています。本人や医療機関から連絡が来た時、看護師が電話で問診し、医師が訪問。車などで診察を行い、支払いは後日というフローをつくりました。受付、看護師は患者さんに接触せず、医師が短時間接触するだけのシステムです。医師の訪問で患者さんが安心した様子を見てうれしかったですし、感染が落ち着いた後、当院のリピーターになってくれる可能性もありますね。PCR検査機器も準備しました。今後、内服薬が使えるようになれば、診断から治療まで当院で完結できます。

オンライン診療も準備中です。医師は資格取得済みで、どのようなデバイスで通信するかを検討しています。オンライン診療も今後、必須になってきます。先手を打って導入し、良質なプライマリケア提供に役立てていきたいですね。

開業事例一覧に戻る