開業事例

大手町皮膚科

大手町皮膚科ギャラリー
大手町皮膚科ギャラリー2
大手町皮膚科サムネイル
大手町皮膚科サムネイル2

大手町皮膚科

開業タイプ 新規開業
科目 皮膚科
所在地 〒100-0004 東京都千代田区大手町1-2-1
Otemachi One 地下1階 B102-4
TEL TEL:03-3212-7722
URL https://otemachi-cl.com

最先端治療も手術も待ち時間なく―。
ビジネス街で、皮膚科クリニックの理想を具現化する。

皮膚科専門医である伊東優氏は、長く、都心で活躍するビジネスパーソンたちが質の高い皮膚科医療を享受できていないように見えることに問題意識をもっていた。
2020年6月、大手町のビジネス街のただ中に大手町皮膚科をオープン。
自らが思い描く、理想の皮膚科医療を具現化するために、万全の設備を整えた。
「お待たせせず、丁寧で、最善で最良な最先端の皮膚科医療」で、日本経済を支える人たちを応援したいと考えている。

インタビュー

「ランチタイム」は有効活用すべき患者さんの空き時間をさす

大手町皮膚科は、皇居のお堀を囲む内堀通り沿いに位置する。実際に足を運ぶには、東京駅からだと丸の内界隈に広がる巨大地下街を歩き、「地下鉄大手町駅C5出口」をめざすのがいい。たどり着くのは日本を代表する商社の本社ビルと商業施設「Otemachi One」のツインタワーがランドマークとなっている複合施設で、後者の、地下街に直結した店舗ゾーンの一角を占有している。

そんな日本経済の中枢たる地で医療を展開する同院の診療時間は、まず午前10時30分から午後13時30分の時間帯に設定されている。それを「ランチタイム診療」と称する。そしてもう一つの時間帯は、午後15時30分から18時30分。こちらは「退社帰宅途中診療」としている。

時間設定と名称から発せられるメッセージは明確だ。近隣で働く人は、「これは、私たちに向けて提供されている」と強く認識するだろう。

院長の伊東優氏が、表情を柔和に崩しながら語る。
「現在、オープンから足かけ4か月がすぎましたが、メッセージは届いたようです。当初設定した期待値を上回るペースで、患者さんが増えています」

大手町皮膚科のイメージ
院長 伊東 優 氏

ワーディングから読み取れる思想と理念

医療機関のランチタイムといえば通常、診察を休止し、医師やスタッフが食事と休憩をとる時間帯となるが、同院では患者さんにとってのランチタイムをさしていて、そこを有効に使う考えだ。「ランチタイム診療」も「退社帰宅途中診療」も妙を得たワーディングで、行動提案にさえなっている。皮膚疾患があるなら、休憩時間や帰宅途中に寸暇を見つけ、治療しましょう―。用語の中で昼食時間の主体が切り替わっているだけなのだが、途端に患者本位や寄り添いの思いが届く感じがする。思想や理念というものは、そんなふうに伝播するものなのだろうと納得するばかりだ。

大手町皮膚科のイメージ2
洗面付きのパウダーコーナー

ダブルライセンスを持つ医師が
2診をフルに稼働させて医療ニーズにこたえる

思想と理念は、行動があってこそ評価の対象になる。同院の思想と理念も、信念に満ちた施策の実践で裏づけされている。
「設計段階から2診が確保できるスペース取りを重点課題としました。現在は、患者さんの数が月、水、木曜に増える傾向に対応して、それらの日は2診をフル稼働させています。2つの診察室で皮膚科専門医および形成外科のダブルライセンスを保持する2人の医師が、お待たせせず、丁寧で、最善で、最良な最先端の皮膚科医療を提供しています。
今後は全診察日での2診体制を実現すべく、人員と予算の確保に腐心しているところです」

設備に関しては、手術室も確保。良性腫瘍などは即座に手術を実施し、終了後にはそのまま職場に戻ることも可能だ。
「皮膚科診療には、手術は常についてまわります。皆さんが思う以上に手術の多い診療科なのですよ」

形成外科の修練があることで、手術治療の信頼性は飛躍的に向上するという。

大手町皮膚科のイメージ3
2つある診察室のほか、美容ルーム、処置(手術)室も完備。

機器にも、十分な予算を割いている。たとえば、最先端の皮膚科光線治療が実施できるよう、狭い範囲用にエキシマライト、全身用にナローバンドUVB照射装置と万全の備えをしている。こちらも、オープン以来、多大なる患者利益を創出している。

Web予約システムに、キャッシュレス支払い
医療機関が軽んじがちなユーザーベネフィット

逆説的に述べるなら、国民の多くは、「受診の予約や予約変更は、Webを活用してもっと便利になるのでは」と思っているし、「なぜ、いまだにクレジットカードさえ利用不可な医療機関があるのだろう」と訝しがっている。

同院は、そういった素朴な不満に、ほぼすべてこたえているクリニックだ。もちろんキャッシュレス決済は可能だし、クリニックホームページからワンクリックで飛べる専用のWeb予約システムは24時間受付。予約取得と予約変更、キャンセルがボタン一つで操れる。手術の時間指定予約も簡単に完了する。メールアドレスを登録すれば、予約完了や予約確認のメールも受け取れる。医療機関の提供するサービスとしては、異例なほどスマートなインターフェースとなっている。

「予約システム構築についてはかなりの予算を投じました。現在もより使いやすくするために改良しています」

なぜ、わざわざ休みを取ってまで、
地元の皮膚科を受診するのか

大手町皮膚科は、伊東氏が理事長を務める医療法人社団祐廣会に属する。同医療法人にはもう一つ、宮前いとうクリニックがある。伊東氏が神奈川県川崎市宮前区で20年にわたり医療を展開したクリニックで、現在は大学の後輩が院長を引き継いでいる。

最寄り駅は溝の口、向ヶ丘遊園、あざみ野という、都心近くの理想的なベッドタウンに所在する宮前いとうクリニックは、周辺の住民の皆さんから十分な信頼を得ていた。

ただ、常にちょっとした気がかりが残っていた。
「それは、働き盛りの方々の皮膚科受診についてです。毎日都心に働きに出ている現役社会人の方々は、平日昼間の診療時間に地元に戻るのが難しいですよね。ですから、患者さんの層はお子さんやお年寄り、専業主婦が中心でした。そんな中、時折平日の日中に受診される会社員がいますが、ほとんどが、症状がひどくてどうしようもない状態になったから休みを取ってきたというケースでした」

大手町皮膚科のイメージ4

そういった際、診察室で必ず添えていたひと言があった。
「通いやすい、職場の近くの皮膚科に相談するのがいいですよ」

信頼できるクリニックを見つけて、仕事の合間に通えばいいのに─素朴に、そんな感想をもっていた。しかし、少しずつ当事者の話を聞き貯めていったある日、一つの事実に気づいた。それは、「都心のビジネス街では、信頼できる皮膚科クリニックに、なかなか巡りあえない――だから、休みを取ってまで地元の皮膚科に来るのだ!」

点数が付かないからという理由で、
手術を忌避する現実を憂慮

知見を深めるために情報収集してみると、ビジネス街の皮膚科医療の実態がわかったという。
「どうやら、水虫の診断さえあやふやな皮膚科医がいるらしい。治療器具や人件費を抑えて低コストで収益追求を優先するやり方も多いらしい。そういった事実を知るにつけ、暗澹たる気持ちになったものです」

ビジネス街に信頼できる皮膚科クリニックが少ない。それは、まだいい。どうやらすでに、「オフィス街では満足のいく皮膚科の治療を受けられない」といった認識が定着しつつさえあるのでは? 伊東氏は、その点を深く憂慮した。

一つは、患者さんたちにとっての不幸。
「いわば、国や社会の屋台骨を支えてくれている働き盛りの方々が、皮膚を患った際に、満足のいく医療を受けられないなんて、見過ごせませんよね」

そしてもう一つは、皮膚科医療の未来に影を落としかねない状況を何とするか。
「都心では、『外科治療はしません』との但し書きを添えて診療しているクリニックが多いそうです。
手術の技量を有しない医師であることを意味する場合もありますが、実は、手術を手がけると赤字が膨らむという診療報酬上の構造的な問題も背景に横たわっているのです。
医療政策上、皮膚科医療が軽んじられているのは確かです―ただ、だからといって、手抜きの非難を受けるような診察や治療をしていいわけがありません」

いつしか、伊東氏の中の何かが、自身に一念発起を促すようになったという。

皮膚科と形成外科のダブルライセンスの効用に
揺るぎない確信

皮膚科診療に形成外科技術の有用性を強調する伊東氏は、もちろん自身も皮膚科と形成外科の専門医資格所持者だ。筑波大学医学部を卒業してすぐに、東京大学医学部形成外科医局に入局。形成外科医として修練を積むなかで、皮膚科を学ぶ必要を感じることがあったという。

「皮膚がんの手術後の再建を得意とするようになったのですが、担当を依頼された患者さんのもともとの疾患に関する知識がないため、治療が遠回りになることが多いと痛感しました。それで、皮膚科を学ぶべきだと思うようになりました」

大手町皮膚科のイメージ5
広々とした待合ロビーは木調で優しい印象。

先輩や上司に相談した結果、聖マリアンナ医科大学の溝口昌子氏に教えを乞うことに。向学心がゆえのダブルライセンスだったが、その後の皮膚科の臨床現場でつくづく実践の効果を感じたという。
「形成外科の技術は、皮膚科で生きます。双方の専門医資格を持つ医師はそう多くありませんが、探せばいますし、語り合えば必ず意気投合します。
大手町皮膚科を開設するにあたり、力を貸していただけるダブルライセンス所持者の登用を優先としたのはそれが背景になっています。
提供する医療の質は明らかに高く維持できますので、私の理想の医療を具現化するためになくてはならないファクターだと確信しています」

医師人生の総仕上げ
果敢なるチャレンジ

都心の一等地に万全の設備と最高の人材を擁してクリニックをオープン。さぞや意気軒昂なことと想像したが、伊東氏は若干シニカルな笑顔を見せた。
「もしこれから開業をという方がいらっしゃるなら、私のようなやり方はハイリスクと思っていただいたほうがいいかもしれません。賃料は高額ですし、準備にもかなりの費用がかかります。なのに、皮膚科の診療報酬は低い。大儲けは望めません」

文字どおりの一念発起は、皮膚科医としての意地のようなものだった。
「子どもも成人して、妻もリスクを理解しつつ『やってみたらいいじゃない』と言ってくれた。家族の反対があったとしたら、決断は違っていたかもしれません。ただ、幸いにして後押しが得られたので、私個人が思い描く〝理想の皮膚科医療〞の具現化に邁進することに決めました。医師人生の総仕上げと考えているのは、当然のことです」

大手町皮膚科のイメージ6
受付にはかつてこの地にあった「カルガモ池」のカルガモ親子に感銘を受け、その記憶を残したいという思いでオブジェが置かれている。

成功の確約はない。しかし、理想を追い求めて身を投じた。その果敢さへの評価は、Web予約システムのクリック数という声のない絶賛で報われることになるのではないだろうか。

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