上本町ぼく小児科(大阪府)の医院開業事例


外観


内装

開業タイプ 新規開業
所在地 大阪市天王寺区
科目 小児科、アレルギー科
病床数 なし
上本町ぼく小児科
〒543-0001 大阪府大阪市天王寺区上本町8丁目2-1
クライス上本町1F
TEL:06-6775-1053
http://boku-clinic.com/

インタビュー

先生の専門と開業のきっかけを教えてください。

院長 朴 永東氏 医師を志した当初から、「子どもの病気を治したい。子どもの命を守りたい」と強く思っていました。医師になって4年目に、小児がん拠点病院である大阪府立母子保健総合医療センターに進み、小児がんと血液疾患を専門とするようになりました。国内の1歳から15歳までの小児の死亡病因の第1位は成人と同じく「悪性腫瘍・がん」です。私は、小児がんと血液疾患を専門にすることで、どの病気よりも死に近い病気を患っている子どもたちを救いたいと考えたのです。

20年間にわたり小児がん拠点病院や大学病院などで勤務してきましたが、小児がんの治療成績はこの間に飛躍的に向上しました。今では、小児がんのおよそ8割、疾患によっては9割が治る時代になりました。国内には約10万人の小児がん長期生存者がおられ、成人の600~1,000人に1人が小児がん経験者と推計されています。

しかしながら、小児がんを克服した多くの子どもたちが、治療終了後5年、10年経ってから晩期合併症に苦しんでいるのです。晩期合併症とは抗がん剤や放射線治療による、低身長や肥満・やせなどの成長障害、不妊や二次性徴がこないなどの内分泌学的障害、主要臓器機能への影響、不登校や引きこもりなどの心理・社会的な問題など様々なものがあります。

更には、あまり知られていないことなのですが、二次がんを発症する小児がん長期生存者の報告が相次いでいます。小児がん治療後の長期フォローアップを誰が担っていくのかが、小児がん治療の今後の大きな課題と言えましょう。

近年、厚労省は全国に15か所の小児がん拠点病院を設定しましたが、小児がん患者の治療歴はもちろんのこと、個人の性格や家庭環境を把握していない医師がどこまでフォローアップできるでしょうか。勤務医時代に温めていた「治療に携わった小児がん患者さんをずっと診ていきたい」との思いから開業を決意しました。

開業することにより、「いつでも、いつまでも」小児がん患者さんを支えることができるのです。小児がん拠点病院や大学病院などで勤務していた時代は、週に1、2コマの外来枠が決められていて、その範囲でしか患者さんを診ることができませんでした。体調が悪いのに外来予定日まで受診を我慢して、状態が悪化した小児がん患者さんを多く経験しました。

更に勤務医には異動があります。主治医の異動をきっかけに受診が途絶え、長期フォローアップがされていない小児がん患者さんも多く経験しました。患者さんの立場からすると、自分のことを一番よく知ってくれている医師にいつまでも診てもらいたいと願うのは当然のことです。開業の意思を患者さんに打ち明けたところ、「先生はこれでもうどこにも行かないですよね」と涙して喜んでくれました。また、開業のことを知り、20年前に治療を受けた小児がん患者さんが今後のフォローを希望され来院されました。開業により、今まで関わった患者さんをずっとフォローできるのは、私自身も幸せに感じています。

  • 生化学検査も院内でできるように器材を完備している。

  • レントゲン検査室を完備し、的確な診断に役立てている。

  • トイレの中は海の生物でいっぱい。
    バギーでも入りやすいように床は広くとっている。
開業まで、苦労はありましたか?

小児がんや血友病の子どもたちに
「一緒に頑張っていこう」と語りかける。
開業を決意してから今日にいたるまで、総合メディカルの開業コンサルタントの方には幅広くサポートしていただきました。私だけかもしれませんが、医師はとかく世間知らずですので…。おかげさまで、開業までの多くの問題を一つ一つ解決できました。コンサルタントの方には心から感謝しています。

まず、直面した問題は、資金調達と開業物件探しです。恥ずかしながら、わずかな自己資金しかなく、銀行から多額の融資が必要でした。事業計画立案や融資交渉などのアドバイスを頂いたおかげで、比較的スムーズに融資を受けることができました。開業地は、担当してきた患者さんが今までと同じ感覚で通っていただけることを最優先し、「直前まで勤務していた病院の近く」という条件で探してもらいました。大阪国際マラソンのコースになっている大阪市内の大通りに面した1階の優良物件を紹介してもらい、この場所に決めました。その他にも、医療機器の購入、スタッフの求人・採用にいたるまで、様々な的確なアドバイスをいただきました。

いざ開業してみると、「自分は他の開業医とは違う。初日から多くの患者さんが来てくれるはず」と高をくくっていましたが、開院初日の来院患者は見事に「ゼロ」でした。半径1kmの診療圏内に小児科を標榜しているクリニックが13か所もあり、新たな集患には今でも苦労しています。集患のため折り込みチラシを配布したり、看板などを設置したりしましたが、あまり効果を感じていません。やはり、患者さんの口コミが一番大切だと思います。
子どもたちが喜びそうなつくりですね。
「子どもたちがワクワクする」クリニックにしたいと工夫しました。院内は天井を「青空」、床を「大地」にイメージして、壁には「動物」を描いています。玄関のドアを開けたら、大きなライオンやキリン、奥に進むと大きな象、ダチョウ、サイなどの壁紙の絵が目に飛び込んできます。3か所のトイレとレントゲン室、点滴室は「海」の中をイメージしています。子どもたちが待ち時間に退屈しないように、知育に良いとされるルーピングの大きな玩具やたくさんの絵本を揃えました。また、「清潔な環境づくり」も心がけており、いたるところに大きな空気清浄機を設置して院内でインフルエンザウイルスなどに感染しないように努めています。

  • レントゲンなどの検査の中待合も子どもが退屈しないよう配慮している。

  • 待合室の壁にもキリンやシマウマを配置し、木製のおもちゃも置いている。

  • 外来と検査スペースをつなぐアーチ。
    象のイラストが目印。
クリニックの使命を教えてください。
当院には3つの使命があると考えています。
1つ目は、一般小児科医として、質の高い小児医療を提供し「子どもの笑顔を取り戻す」ことです。来院した患者さんのうち、笑顔がある子はまず重症ではなく、あまり心配ないと考えています。笑顔なく受診した子どもたちに早く治って笑顔を取り戻してほしいと願って診療しています。
そのためには、丁寧な診療もさることながら、質の高い小児医療の提供が不可欠です。当院は院内で抹消血液検査に加え生化学検査もできます。肝機能障害や腎機能障害、電解質異常、低栄養状態を瞬時に診断できます。その他、レントゲン、心電図、呼吸機能検査機器も取り揃え、簡単な耳鼻科の医療機器もあります。これからインフルエンザが流行する季節ですが、高感度のインフルエンザ測定器を3台も設置しています。「市中病院に負けない」クリニックを目指しています。

2つ目は、先程お話ししました、「小児がん患者をいつでも、いつまでも支えていく」ことです。当院には約150名の小児がん経験者と治療中の患者さんが通院されています。もちろん開業医には限界がありますので、小児がん拠点病院などで必要な検査と治療が円滑におこなえるように連携を強化しています。また、ご家族を含めた心理的および社会的支援と健康管理教育もおこなっています。

3つ目は、当院の最大の特徴と言えますが、「血友病患者さんの生涯にわたるフォロー」です。2歳から66歳までの血友病患者さんが、約50名通院されています。全国の血友病患者数は約5,000名と推計されていますので、50名は相当な患者数と言えます。
私が初めて大阪市内の病院に赴任した当時は、小児血友病患者さんの治療体制は悲惨な状況でした。多くの血友病患者さんが適切な治療を受けていなかったために、関節障害に苦しんでいました。厚労省のおこなったQOL調査では、30代後半になると半数以上の血友病患者さんが歩行障害を発症し、正常歩行が不能となり車イスや杖を必要としていました。血友病患者さんの約6割が重症型ですが、重症型の患者さんは週単位で関節出血を繰り返し、関節障害が徐々に進行していくのです。現在では、幼少期から定期補充療法を開始することにより、関節出血の回数を極力減らし、ひいては関節障害を回避できます。

当院では、血友病患者さんが2歳頃からご両親に注射を練習していただき、早期の定期補充療法の導入を目指しています。泣く我が子に注射針を刺さなければならないご両親の不安や恐怖を、傍で観ていると私も心が痛みますが、みなさん本当に頑張ってくれます。小学校高学年になれば、患者さん本人にも自己注射に取り組んでもらっています。夏休みなどを利用して連日通院してもらい練習させます。泣きながらも、自分の手に注射練習を頑張り、初めて自己注射を成功した姿を目の当たりにすると熱いものがこみ上げてきます。

血友病の子どもたちには、いつまでも元気に走り回っていてほしいのです。小児がんと異なり、血友病に関してはまだまだ社会の理解が深まっていないのが現状です。幼稚園の入園を暗に断られたり、小学校入学時に「エイズではありませんか」という心無い中傷を受けた子どもたちもいました。また、遺伝の問題も含んでおり、お母様がご自分を責めたり、親族から非難されるケースも少なくありません。ある一人のお母様の自死をきっかけに、患者会をつくりました。血友病の患者さんとご家族が孤立しないように患者さん同士で悩みや不安を分かち合い支えていただければと願っています。
夢はなんですか?
小児がんと血友病の子どもたちが運動会で1番になってくれることです。小児がん治療は入院が長期に及ぶことが多く、今年の運動会には参加できなくても来年の運動会で1番になってくれたらと願っています。定期補充療法がおこなわれていなかった時代の血友病の子どもたちは、体育の授業はいつも見学だけでした。そんな血友病の子どもたちが、運動会で1番になれたらどんなに素晴らしいでしょうか。私は運動会で1度も1番をとったことがないので、こんな夢を抱くのだと思います。
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