脳神経外科の医院開業動向情報
脳神経外科の開業で覚えておきたい戦略!失敗しないための注意点とは?

「脳神経外科で開業するには何が必要?」
「開業した後に失敗するかもしれない……」
このように悩みを抱えた脳神経外科医の方は多くいらっしゃいます。そこでこの記事では、脳神経外科クリニックの開業に成功するためのポイントや注意点についてまとめました。
これから脳神経外科で開業予定の方は、ぜひ参考にしてください。
脳神経外科をとりまく動向
厚生労働省「令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、脳神経外科を主たる診療科にする医師は5,833人で、医師全体(32万7,444人)の1.8%を占めています。また全国で診療所に従事する脳神経外科医は1,168人で診療所に従事する医師全体の1.1%です。
厚生労働省「令和5(2023)年医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況」によると、脳神経外科を標榜する診療所は全国に1,881施設、全体の1.8%です。単純計算で各都道府県に38施設ずつしかないということになり、他の科と比べて競合クリニックが少ない科といえます。ただし実際の診療においては整形外科や神経内科とも競合する部分もあるため、しっかりと戦略を立てて経営をおこなう必要があります。
脳神経外科クリニック開業の資金調達から収入・資金繰りまでのロードマップ
クリニック開業を考えるにあたり、まず問題となるのが資金面です。開業資金は、「設備資金」と「創業資金」にわけられます。
「設備資金」はテナント契約費や医療機器・設備購入費などです。設計・内装工事費その他を合わせ9,000万円から3億2,000万円が必要で、テナント契約費は賃料の約3カ月分から12カ月分が見込まれます。また、「創業資金」は開業前の人件費や賃料、広告費、医薬品などの購入費用です。
開業資金
開業資金の一例として、下記の項目が挙げられます。
脳神経外科クリニック開業に必要な設備資金
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| 項目(脳神経外科:テナント開業の場合) | 所要資金 |
|---|---|
| テナント契約費(保証金・敷金など) | 賃料の3カ月分~12カ月分 |
| 設計・内装工事費 | 3,000万円~9,000万円 |
| 医療機器・電子カルテ購入費 | 4,000万円~1.5億円 |
| 什器・備品購入費(待合設備、診察机など) | 100万円~500万円 |
| IT設備(PC、院内ネットワーク構築、オンライン予約、資格確認システムなど) | 50万円~500万円 |
| その他開業時諸費用(医師会加入、保険加入、広告・広報、医薬品購入など) | 150万円~1,000万円 |
| 開業前運転資金(賃料、人件費、手元資金など) | 1,700万円~6,000万円 |
脳神経外科クリニック開業では、画像診断装置を持つか持たないかで設備資金が大きく異なります。画像診断装置を導入する場合は、開業にかかる初期費用の額が他の診療科目の約2~3倍になることもあります。立地や機器の選定など、より慎重に検討しなければなりません。
通常クリニックの面積は約25〜50坪程度であることが多いですが、CT・MRIを設置する場合は敷地面積をかなり広くする必要があるため、面積は約60~70坪以上となります。
近年は、画像診断専門のクリニックも増えてきているため、自分のクリニックからアクセスが良ければ、専門のクリニックを活用するという選択肢もあります。
また開業形態についてもしっかり検討する必要があります。以下にそれぞれの開業形態のメリット・デメリットをまとめました。
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| 開業形態 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 戸建てクリニックで開業 |
|
|
| ビル診療所で開業 |
|
|
| 第三者から承継したクリニックで開業 |
|
|
開業後の運転資金
次に、開業後の運転資金としては、下記の項目が挙げられます。
脳神経外科クリニック開業後の運転資金
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| 項目(脳神経外科:テナント開業の場合) | 概算費用(月額) |
|---|---|
| 人件費 | 収入の20~30% |
| 医業原価(医薬品、消耗品など) | 収入の10~25% |
| 家賃・駐車場など | 立地、面積、設備等により異なる |
| 水道光熱費 | 10万円~80万円 |
| リース料 | 50,000円~100万円(リース物件による) |
| その他諸経費(広告費、通信費、保険料、医師会費、租税公課など) | 20万円~300万円 |
採用するスタッフは、基本的には受付、看護師の2つの職種となりますが、状況によっては、診療放射線技師や理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などのリハビリスタッフを採用したほうが診療の幅が広がり売上の増加に繋がる場合もあります。
例えば画像診断装置のメンテナンス料は高額のため、そのコストを上回る診療報酬が見込める場合には、診療放射線技師の採用を検討してみてもいいかもしれません。ただし最初はなるべく軽装開業をして成功させるのが一般的です。
また、運動器リハビリテーションについても脳神経外科の収益にできます。リハビリテーションを実施するには理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などのリハビリスタッフを採用する必要があるため人件費は高くなりますが、リハビリをおこなうことで患者さんの満足度を向上させ、売上増に繋げることも可能です。さらに「通所リハビリ(介護保険適用)」を実施することもできるようになるため、リハビリで通院する患者さんが増えれば、さらなる売上向上が期待できます。
脳神経外科は競合医院が少なく、広範囲からの来院が見込まれるため、広告展開のエリアは広めに設定して、若年層から高齢者層まで幅広い年齢層に集患できるようにしましょう。
CTやMRIなどの医療機器を導入している場合は近隣病医院からの紹介も重要になります。
脳神経外科クリニックの収入源や資金繰りについては、次の章で詳しく解説します。
脳神経外科クリニックの収入源と資金繰り
「令和5年度 医科診療所の主たる診療科別の医療費等の状況」では、脳神経外科の1日当たり医療費は令和5年度10,103円で、内科9,723円、眼科9,026円、外科8,311円と比べて高くなっています。また、過去と比較しても平成30年度の9,062円、令和3年度9,679円、令和5年度10,103円と増加傾向です。
脳神経外科は高額、専門的な検査や処置が多い診療科のため、他診療科より診療単価が高くなりやすい条件がそろっていると言えます。
個人開業と法人開業における収益
「医療経済実態調査(令和5年実施)」によると、脳神経外科個人開業診療所の医業収益は9,344万円、介護収益は15万円、医業・介護費用は6,218万円で、損益差額は3,141万円です。一方、法人開業診療所の医業収益は1億6,544万円、介護収益は456万円、医業・介護費用は1億5,215万円で、損益差額は1,785万円です。
個人開業に比べ法人開業の方が医業収益は高い一方、医療・介護費用も高くなっています。事業規模は一般的に法人開業の方が大きいため、収益は高くなる傾向があります。また、院長給与に相当する役員報酬が費用として計上されるため、個人開業より費用が大きくなる傾向もあります。加えて、事業規模拡大に伴い各経費も増加する事が多く、結果的に法人開業は個人開業に比べて医業収益も医療・介護費用も高いことになります。
また、法人開業には法人設立や決算対応など、様々な手続きが必要ですが、法人化により節税効果を得られるほか、将来の事業継承が有利に働くことが多いというメリットもあります。分院化や業務範囲の拡大など経営計画によって、個人開業、法人開業の選択が必要です。
脳神経外科クリニックの開業戦略3選
脳神経外科クリニックの開業戦略としては、以下の3つが挙げられます。
- 病診連携・診診連携の強化
- 地域の基幹病院と連携し、手術を実施
- 頭痛外来の開設
戦略1:病診連携・診診連携の強化
地域にある他の病院や診療所と連携することは非常に重要です。連携を強化しておくことで、診療ステージにあった患者さん(例えば急性期を脱した脳梗塞患者さん)をご紹介いただくケースもあります。病診連携、診診連携はマーケティング費をかけない集患に繋がります。
紹介された患者さんは紹介元へ戻し、検査結果や診療情報などを紹介元の医師に丁寧に報告することで、紹介件数を増やすこともできます。他にも連携先との定期的な実績報告会や合同症例検討会を開催し、クリニックの診療機能を認知してもらう活動をおこなうと、より集患が望めるでしょう。
戦略2:地域の基幹病院と連携し、手術を実施
地域の基幹病院と連携し、基幹病院の手術室とスタッフを借りて自院の患者さんの手術を実施して診療体制を強化することも今後重要になっていくでしょう。
クリニックは患者さんの手術を実施することができ、基幹病院は院内で手術をすることで診療点数に結びつき、患者さんは病院の手術室で手術を受けるという安心感を持つことができます。クリニック・基幹病院・患者さんの3者にメリットが生まれるため、このような病診連携は積極的に構築していくとよいでしょう。
戦略3:頭痛外来の開設
片頭痛や群発頭痛、緊張性頭痛など、さまざまな頭痛を適切に診断し、処方・服薬指導をおこなうことで、多くの集患が見込めます。この戦略はMRIなどの装備を持たなくても収益を増やすことが可能で、実際に片頭痛に力を入れた「頭痛外来」を前面に打ち出すことで売上を伸ばし、成功を収めたクリニックもあります。
頭痛に悩む患者さんの数は多い傾向にあるため、診療を増やすことで病院に通う人も増えるでしょう。
脳神経外科クリニック開業時に注意したい3つのポイント
実際に開業するときに注意したいポイントは、以下の3つです。
- CT・MRIを導入するかしないか
- 余裕を持ったレイアウトとバリアフリー化された内装
- 照明や音に配慮する
それぞれ解説していきます。
ポイント1:CT・MRIを導入するかしないか
脳神経外科の開業の最大のポイントは、CT・MRIを設置するかどうかです。これらの画像診断装置を導入するかどうかで、投資費用やクリニックの敷地面積、開業戦略が大きく変わります。
CT・MRIといった画像診断ができることは競合と比較してとても優位性があるため、患者さんが多く見込まれるようであれば導入するとよいでしょう。
導入しない場合はその分開業初期費を抑えることができます。
ポイント2:余裕を持ったレイアウトとバリアフリー化された内装
車椅子や歩行補助器具で来院する患者さんも多いため、段差を無くしスロープを付ける、エレベーターを設置するなどのバリアフリー化を進めたり、通路や待合スペースに余裕を持たせたり等、患者さんの利便性を考慮する必要があります。
脳神経外科と合わせてリハビリテーション科も標榜する場合、しびれや麻痺の症状に対する運動療法や、家事動作などのADL訓練、言語訓練や嚥下訓練などをおこなうスペースもそれぞれ必要となります。広めの物件を選び、余裕を持ったレイアウトを実現しましょう。
ポイント3:照明や音に配慮する
脳神経外科に来院する患者さんの中にはめまいや片頭痛を持っている方もいらっしゃいます。強い光や大きな音は余計な刺激を与えることになりかねません。
強い照明を避けて自然光が差し込む物件にしたり、大きな音で音楽をかけないようにしたり、患者さんがなるべく快適に過ごせるように配慮しましょう。
まとめ
脳神経外科の開業は他の診療科の開業より規模が大きくなることが多いため、より緻密な戦略を練る必要があります。
対応できる病状や患者さんなどを具体的にイメージしたうえで、クリニックの運営にかかる費用を想定しておきましょう。開業前の失敗を避けるため、クリニックの経営プランをしっかりと落とし込むことが重要です。
経営戦略のポイントをおさえたうえで、自らの主導で医療連携を構築し、緻密な戦略と具体的な経営のイメージを作ることで、脳神経外科クリニック開業を成功させましょう。開業に関して不明点があれば、ぜひフォームからお問い合わせください。

































