成功する開業テクニック

開業時期はここがねらい目

開業にあたり、最適な開業時期を知ることは重要な事柄の一つです。勤務先との折り合い、家庭の事情、疾病ごとの季節変化、開業地域の動向などから、最適な開業時期を考えてみます。

勤務先を円満退職できる時期を選ぶ

医師に限らず、それまで勤務していた職場と良好な関係を保ったまま次の職場に移るのが転職の基本です。医師が開業するときも、勤務先の病院やクリニックなどの円満退職を目指しましょう。

たとえば、それまで地域の中核病院に勤めていて、その病院の近くに開業したいときなど、開業してからも病院とは患者さんの紹介など、連携の必要な局面が多く発生します。前の勤務先への紹介であれば、医師やスタッフもお互いに顔の見える関係で連携がしやすく、患者さんにとっても安心につながります。 どこの職場でも医師不足のいま、勤務先の病院で、「開業するので退職したい」と突然申し入れた場合、同僚や上司、病院長などからは決して良くは思われないでしょう。
退職したいという希望は、自身の雇用契約を確認した上で、しかるべき時期に勤務先に伝えておき、病院側で医師の補充ができるような心配りがほしいところです。 勤務先の病院との円満退職が可能な時期を選ぶことが、開業する際の原則と言えます。

子どもの学年の変わり目など、家族のベストタイミングを狙う

開業に成功するためには家族の協力が不可欠です。自分の希望だけでなく、どの時期に開業すれば、パートナーや、子どもなど家族にとってベストタイミングなのかを話し合っておくことが必要です。

たとえば、開業することで住む地域が変わる場合には、子どもの学年・学期の変わり目や、習い事の区切りがつくなど、家族みんなが動きやすい時期に開業すれば、協力を得やすくなります。

子どもの学年の変わり目など、家族のベストタイミングを狙うのイメージ

診療科によって集患数を見込める時期に開業を

開業当初は患者さんが集まるかどうか気になるものです。開業医の看板を掲げたときに多くの患者さんが来院するほうが、精神的にも安定し、やりがいも感じるはずです。では、集患数から見た場合のベストシーズンはあるのでしょうか。

診療科によっても異なりますが、たとえば内科ならインフルエンザ、風邪などが流行する冬季、耳鼻咽喉科なら花粉症シーズンなど、患者さんが増える季節の前に開業することで、順調な滑りだしに結びつきやすいといえます。開業医にとって、開業当初、来院患者数を獲得することは、大きな意味を持っています。できるだけ集患数を増やして増収を図ることは収益面だけでなく、精神的な安定にも結び付き、その後のクリニック経営にとって大きなアドバンテージになります。

スタッフ研修など万全な体制で開業する

ただし、こうした集患数が見込める時期でのオープンには問題もあります。開業して間もなくは、医師自身も開業医のスタイルに不慣れで、看護師などスタッフのトレーニング期間もあまりないため、クリニック運営がスムーズにいかないこともあるからです。そうした時期に多くの患者さんに対応することにはリスクが伴います。

「今度開業した○○クリニックは対応が悪い」などの評判が最初に立つと、それを挽回するためには多くの労力を必要とします。したがって、集患が見込める時期の2~3か月前くらいに開業すれば、自身も開業医のスタイルに慣れ、スタッフのトレーニング研修も終わらせて、万全な体制で運営することができるでしょう。

その場合、たとえば、耳鼻咽喉科の開業なら、スギ花粉アレルギー患者が2月中旬から増加すると考え、前年の11~12月に開業することも一つの選択肢となります。

地域の開発動向に注視し、活性化の波に乗って開業する

開業医は地域に密着した医療活動が重要な任務ですが、開業時期についても地域の動向を見極めることが大切です。たとえば、郊外で開業する場合など、大規模住宅団地の開発が予定されているなら、その時期に合わせて開業するのも一つの方法です。新しい住宅団地の住人は、どこで買い物をするか、子どもをどこの学校に通わせるかと同時に、「どこの医療機関にかかるか」が大きな関心事になるからです。

そのほか、地域の大型のショッピングモールの開設に合わせるなど、地域が活性化している時期に開業すれば、その流れに乗ってクリニックをオープンさせることができます。一般的に、患者さんがそれまでかかっていた医療機関を変更するのには抵抗があるものです。住んでいる地域の周辺に大きな変化、新しい流れができると、地域住民もほかに何か動きがないかと新しい情報を求めて、新規開業したクリニックに目を向けることも十分に考えられます。

地域の開発動向に注視し、活性化の波に乗って開業するのイメージ

こうして見ると、円満退職にはじまり、家族の都合、集患、そして地域の動向まで、開業時期にはさまざまな狙い目があることがわかります。これらの要素を考慮したうえで最適な時期を考えて開業し、クリニックの運営に弾みをつけましょう。

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