開業事例

西口おなかのくどう内科

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西口おなかのくどう内科

開業タイプ 新規開業
科目 内科、消化器内科、内視鏡内科
所在地 〒370-0848 群馬県高崎市鶴見町4-2
TEL TEL:027-386-3321
URL https://nishiguchi-kudo.com

インタビュー

開業のきっかけ、開業までの準備を教えてください。

アラフォーと呼ばれる年になり、「将来は開業という選択肢もあるのか」と漠然と思うことはありましたが、現実味はありませんでした。当時は、高崎市の基幹病院高崎総合医療センターで潰瘍性大腸炎やクローン病など炎症性腸疾患を専門に診療し、どんなに忙しくても疲れを感じないくらい、やりがいをもって働いていました。炎症性腸疾患は特定疾患のため、同院のような専門病院に患者さんは集中しがちです。患者さんは待ち時間が長く、医師は思うように丁寧な診察ができないという課題もありました。

46歳になったころ、知り合いから開業を勧められ、本気で考えるようになりました。以前から、炎症性腸疾患の患者さんを支えるには、専門病院とは別に日常生活を支えるクリニックが必要だと考えていました。私が開業すれば、患者さんも専門病院も助かるし、私も患者さんと深く関われるようになると思いました。炎症性腸疾患に対応できるクリニックは全国的にも少ないのですが、首都圏や都市部では病診連携が構築されつつあります。群馬県のような地方は今後整備する必要があり、私がクリニックを開業することで、連携の一部を担えると考えました。

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院長 工藤 智洋 氏

医療センターでは、炎症性腸疾患の患者さんが、腸疾患以外の別の体調不良を訴えても、紹介状がないと診察できないという不便もあり、開業するなら、全身を診てあげられるクリニックにしたいと考えました。また、胃がんや食道がんなどの患者さんも診てきた中、早期発見のためにも苦痛が少なく、安全で確実に診断できる内視鏡検査を提供したいとも思いました。そこで、「炎症性腸疾患と内視鏡診療」を中心に「一般内科」も標榜し、地域の方に信頼されるクリニックを目指すことにしました。

しかし、開業のノウハウもなく、何を準備すべきなのかもわかりませんでした。総合メディカルから要所要所で適切な指導をいただき、路頭に迷うことも、心配することもなく、開業準備が整いました。

開院の2020年5月は、新型コロナウイルス感染症のため緊急事態宣言期間中。感染対策のため、個人防護具や消毒液などをかき集め、オンライン予約を整備するなど、スタッフとともに慌ただしく過ごしました。不安とストレスは大きかったと思いますが、協力し合えたことで、スタッフ同士の結束が強くなったと感じています。

どのようなクリニックを目指していますか。

「信頼されるクリニックを目指す」を基本理念に置いています。そのためには、「わかりやすく十分な説明」を行い、「ひとりひとりに最良な医療」を提供し、「患者さんに寄り添う」ように努力することが必要です。

スタッフには面接の段階で、基本理念を示し、それとは別にスタッフに求める行動指針を作成しました。「丁寧かつ迅速に行動します」「何事にも誠実に対応します」など7項目を実践し、スタッフ全員で患者さんを理解するという姿勢を打ち出していきたいです。

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炎症性腸疾患の治療用に処置室にはリクライニングソファを設置

建物内部は、スタッフが動きやすく、患者さん同士の接触が少ない動線を重視しました。待ち時間も長くならないように予約制を取り入れ、待合室での密集を避けるようにしています。内視鏡室は通常より広めにし、モニターは、医師用、スタッフ用、患者さん用として3つ設置しています。検査中、患者さんに自身の消化器の状態を見てもらいながら説明すると、理解していただきやすいからです。広めの処置室では、炎症性腸疾患の特殊な治療をリラックスして受けていただけるよう、リクライニングのソファベッドを準備。音楽を聴きながら治療を受けていただけます。また、トイレはスタッフ用とは別に患者さん用を3ヵ所設置しました。消化器疾患の患者さんが大半ですので、しっかりとした感染対策を取った結果です。

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消化器疾患の患者さんが多いため、トイレは患者さん用とスタッフ用を分けて設置している。

開業からこれまでの状況はいかがでしょうか。

開業時は緊急事態宣言下でもあり、受診控えのため、あわや外来患者0人という日もありました。医療センターで私が担当していた炎症性腸疾患の患者さんや内視鏡検査後の患者さんが来院してくれるようになり、少しずつ口コミで患者さんが増えていきました。

現状は、炎症性腸疾患の患者さんが3割、便秘や機能性消化管障害などが3割、その他内科疾患3割、検診・健康診断が1割です。炎症性腸疾患の患者さんは想定以上に増えていますが、一般内科が予想より少ないですね。

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腹痛などで急な受診があった場合も、基幹病院への紹介など適切に対応する。

週に2~3人、急性の腹痛患者さんが来院され、虫垂炎や尿管結石などの鑑別が必要になります。腹痛の強い症状があったときは、すぐに救急病院に行くのではなく、まずクリニックに来てもらえることは良いことだと思います。クリニックで診療できるものは担当し、緊急性があると判断した場合、連携先の病院を紹介するなど、適切な対応ができます。病院も助かりますし、患者さんも道筋を示すことで安心してもらえます。かかりつけ患者さんであれば、病院に患者さんの情報を提供できるので、より安心ですね。

新型コロナウイルス感染症について、発熱外来は設けてはいませんが、発熱患者さんは断らず、診療の前後で対応しています。消化器症状がある発熱患者さんは、院内での診察が必要ですので、新型コロナウイルスの抗原検査を導入し、トリアージを行っています。内視鏡検査の際は、胃カメラの挿入ができる穴あきマスクを装着していただき、感染リスクを減らしています。

スタッフが働きがいを感じているか、働きやすい環境であるかにも気を配っています。患者さんの生活支援の一環として、「治療と仕事の両立に向けた支援の充実」を推進するため、看護師には両立支援コーディネーターの資格取得を推奨しています。また、働きがいがあるかや困りごとが無いか、個人面談も実施しました。産休、育休にも対応し、さらに有給休暇の取得も積極的に働きかけていますので、働きやすさは実感してもらっていると思います。

実は、私自身が急性腹症で緊急手術になるというピンチがありました。翌日からの予約や内視鏡検査をキャンセルせざるを得なくなりましたが、スタッフが素早く、上手に対応してくれて窮地を乗り越えられました。理念やコンセプトを理解し、実践してくれるスタッフは、当院の宝だと思います。

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内視鏡検査も同院の得意分野の1つ。
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同院の理念を理解し、患者さんへ適切に対応するスタッフと。
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内視鏡室は広くとり、モニターを複数設置。患者さんも検査内容を見られるようにしている。

今後、目指す医療を教えてください。

炎症性腸疾患は、薬剤などの医療材料費が高額なためスタッフは管理に気を使ったり、診療時間が長くなる傾向があります。質を落とさず、効率的に診察できるよう常に考えています。

私は現在、高崎総合医療センターの外来を手伝っており、同院にとっては、サテライトクリニック的な役割も担っています。おかげで私も、それぞれの患者さんにとって、病院とクリニックのどちらが適切な診療を提供できるか、判断もできるようになりました。

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「炎症性腸疾患の患者さんの日常生活を支えるクリニックが目標」と語る工藤智洋院長。

炎症性腸疾患の患者さんは、高崎市に限らず埼玉県本庄市などからの紹介も受けています。今後は、事業の拡大ではなく、質の向上を目標にしたいと思います。専門病院との連携だけでなく、専門外のクリニックとの診診連携も図り、地域の医療連携を構築すれば、患者さんももっと助かると思います。リーダーシップを取るのは苦手な方ですが、仲間を見つけていきたいですね。

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