開業事例

可世木婦人科ARTクリニック

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可世木婦人科ARTクリニックサムネイル
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可世木婦人科ARTクリニック

開業タイプ 継承開業
科目 不妊症・婦人科
所在地 〒460-0008 愛知県名古屋市中区栄4-2-29 名古屋広小路プレイス7階
TEL TEL:052-251-8801
URL https://kaseki-art.com/art.html

インタビュー

開業のきっかけは何でしょうか。

当院の前身は、祖父が1946年に開業した可世木病院です。叔父で現理事長の可世木成明が跡をつぎ、全国的にも早い段階から不妊治療に取り組んできました。私は2010年から同院に勤務し、15年には副院長職を任せていただきました。

そのころから、今後の病院運営について叔父らと話し合いを持つようになりましたが、叔父の高齢化、病院建物の老朽化、一般的な出産件数の減少などマイナス要素もあり、移転、閉院などの意見も出ました。また、病床を無くすことは勇気のいることですが、病院として存続する場合、医師の補充が必要ですし、出産を支える機能や病床規模の存続は難しいと考えました。

可世木婦人科ARTクリニックのイメージ
院長 石川くにみ 氏

家庭との両立を考えると個人としても悩みました。補充した医師にゆだねるのも不安になるでしょうし、家族を切り捨てて仕事一本でいくわけにもいきません。そこで、お産はやめて、不妊治療により充実したクリニックの開設を決めました。

総合メディカルには、移転先を探すところから、全体スケジュールの管理等を手伝っていただきました。医療しか知らないので、自分たちの考えだけで進めるには不安があったため、いろいろな場面でアドバイスをいただき、18年9月、安心して開業することができました。

ダウンサイジングに伴い、大変だったことはありますか。

病院時代のスタッフを半分ほどに減らさなければならなかったことですね。お産機能と入院施設が無くなるので、看護師の一部と助産師、薬剤師は去っていただくしかありません。そのため他の医療機関等に紹介し、雇用してもらうように走り回りました。当クリニックには、体外受精に関わってきた人や若いスタッフが残っています。

41床の病床は愛知県に返還。器材は、当クリニックで使用しているものもありますが、分娩台は助産師学校に寄付するほか、古い器材の多くは廃棄処分にしました。

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「不妊治療に特化したクリニックで、治療成績を上げていきたい」と話す石川くにみ院長。

クリニックの特色を教えてください。

不妊治療に特化しています。一般婦人科と合わせると、患者さんは1日約70人。このうち6割以上は不妊治療の患者さんです。当院は、名古屋市の中心地・中区栄にありますので、患者さんのほとんどが周辺に勤務している人や、住居を持つ人です。一般不妊治療は、夫婦ともに検査を受け、妊娠時期の希望等に合わせて治療方針を決定します。タイミング法や排卵誘発、人工授精(AIH)などの方法がありますが、長期にわたる治療も必要なため、受診の際に交通の便の良いことが好評の要因のひとつとなっています。

一般不妊治療の次の選択肢となる生殖補助医療(ART)にも力を注いでいます。体外受精(IVF)や顕微授精、胚移植(ET)など、高度な生殖技術を用います。体外受精はかなり一般的になり、方法も理解されるようになりましたが、人工授精と混同している方も多いのが現状です。治療についての相談にも丁寧に対応しています。

培養室にはタイムラプスや顕微鏡、凍結タンクなどを完備し、患者さんの卵子や精子、受精卵をお預かりし大切に培養しています。

診察室廊下の壁にシマウマや象をプリントしたり、待合室には鮮やかな花の写真を飾ったりしていますが、「クリニックらしくないね」とよく言われます。医療機関は本来、楽しい場所ではありませんが、おしゃれな雰囲気の中で少しでも気分を浮き立ててほしいと思います。

当院は、キッズスペースを設置しているのも特色だと思います。不妊治療を行う医療機関の中には「子どもができなくてつらい」という患者さんの気持ちを汲み、小さな子ども同伴を禁止しているところもあります。けれども私は、妊娠を望んでいる方には子どもを見るのが「つらい」ととらえるのではなく、「楽しみ」と感じてもらいたいと思います。また、不妊治療で子どもを授かり、第2子を望む人もいらっしゃいます。第1子を育てながら、不妊治療に通う人たちにも、子どもを連れて気兼ねなく当院に来てもらいたいと思います。新型コロナ感染症拡大防止のため、今は残念ながらキッズスペースは閉鎖していますが、いずれ再開できることを楽しみにしています。

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子ども連れでも不妊治療を受けられるようキッズスペースを設置。

また、中区金山で私の姉が院長を務める可世木クリニックとの連携も重要です。同クリニックは婦人科の外来専門ですから、手術が必要な場合や生殖補助医療を求める患者さんは紹介してもらっています。機能を分化し、協力関係がうまくいっていると思います。

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壁にはシマウマや象をプリントし、明るい雰囲気を演出。
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体外受精、人工授精を実施する手術室。
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手術室の隣に培養室を設置し、受精卵等を管理。

スタッフにはどのような教育をされていますか。

病棟勤務だった看護師が、外来を担当するようになって戸惑いもあったようです。常勤看護師は7人いますが、外来回転をいかに効率良くするか改善点に気づき、提案するなど、自主性が生まれていると感じています。

カンファレンスを通じて私の考えを伝えるだけでなく、院内カンファレンスでは症例の検討や培養部門からの成績報告、新たな検査法、治療法についての勉強会をしたり、学会や講習会への参加も促しています。積極的な研さんを評価し、ボーナスなどに反映するようにしています。私1人ではできないことの方が多いですが、信頼できるスタッフに相談しながら、経営を考えていきたいと思います。

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医師3名、培養士などを含めた約20名のスタッフで患者さんを支えている。

今後の取り組みを教えてください。

当クリニックは新しい機材を導入し、不妊治療に対しての八-ド面は整っています。今後は、技術の向上など、ソフト面の充実を図っていきたいと思います。技術は常に進歩していますから、情報収集を怠らす、力をつけていきたいと思います。

PGT-A(着床前肺染色体異数性検査)の本格的稼働が、直近の目標です。着床前診断は、体外受精で得られた受精卵を子宮に戻す前に受精卵の細胞を調べ、染色体や遺伝子の異常の有無を調べるものです。この検査により、流産率の低下は明らかになっています。当院は遺伝のカウンセリングができる人材がいませんので、カウンセラーを育てていくこと、さらに私自身も生殖医として、向上心、探究心を忘れず努力していきたい。
また、検査の際、培養士の受精卵の生検の技術向上を図りたい。生殖補助医療の成績を上げていくことで、クリニックのクオリティーアップとスタッフのモチベーションを高く維持し、活気のあるクリニックでありつづけたいと思っています。

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患者さんの状況や要望を丁寧に聞き、治療計画を立てる。

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