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医療法人橘井堂 津和野共存病院 内科医 内田 優子 先生

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内田優子三先生

略歴
島根県斐川(ひかわ)町(現・出雲市)出身。2011年に自治医科大学を卒業後、島根県立中央病院で初期臨床研修を修了、その後、公立邑智(おおち)病院、飯南町立飯南(いいなん)病院を経て現職。

ご出身とこれまでのご経歴を教えてください。

私は島根県の斐川町(現・出雲市)出身です。両親の仕事の関係で少し県外に出たこともありましたが、ほとんどを島根県内で過ごしてきました。父は中学校の教員をしており、母は元看護士です。
医師になろうと思った大きななきっかけはなかったのですが、子どものころから「人と関わる仕事がしたい」「人から必要とされる仕事がしたい」と考えていました。島根県の医師不足について知るうちに「医学部に行きたい」と思うようになり、将来的に島根県で医師になることをめざして自治医科大学へと進みました。

卒業後は島根県立中央病院で初期研修を修了し、美郷(みさと)町、川本町、邑南(おおなん)町が共同で運営する公立邑智病院、飯南町立飯南病院での勤務を経て、2019年度から津和野共存病院で内科医として勤務しています。

津和野共存病院の特徴や勤務の状況について教えてください。

津和野共存病院には、津和野町だけでなく、隣接する山口県からの患者さんも来院します。このあたりでは唯一入院できる病院として、救急搬送への対応を含め、地域の方々に必要な医療を提供しています。
外来・病棟を担当する常勤勤務の医師は私を含めて2人、放射線科の医師が1人在籍しています。

常勤医以外にも、非常勤で外来診療などを請け負う医師が数名来てくれているので、忙しすぎて息つく暇もない、というような場合はほとんどありません。
私自身は、週2日は午前中に外来診療、週に1~2日は内視鏡検査を担当しています。午後は救急当番をしながら病棟勤務をしていることが多いですね。また、施設に訪問して診療する日もあります。

津和野共存病院の働きやすさはいかがですか?

仕事のしやすさ、プライベートとの両立、どちらに関してもとても働きやすいです。
自分がやりたいこと、経験したいことに積極的に関われる環境なので、自ら志願して内視鏡検査を担当させていただいています。患者さんもスタッフの方も優しく、いろいろと相談し、教えてもらいながら研鑽しています。

また、子育てへの理解があるのもありがたいです。私は、4歳と2歳の子どもがいるので、子どもたちから目が離せないことも多いのですが、夜勤を免除していただいたり、保育園のお迎えに間に合うよう勤務を代わっていただいたりといった配慮には非常に助かっています。夜も定時の17:30で帰れることが多いので、子どもたちと一緒に夕食をとれるのも嬉しいです。

普段の勤務で心がけていることはありますか?

島根県のほぼ中央部に位置する公立邑智病院をはじめ、いわゆる「へき地」と呼ばれる病院で勤務してきましたが、やはり必要とされるのは総合的に診るという観点です。
当院でもそれは同じで、地域全体が高齢化しているため、患者さんも高齢の方が多くなります。肺炎や尿路感染、心不全などの病気が多いですね。

複数の病院で勤務してみて気づいたのは、「医療だけを提供しても患者さんの幸せにつながらないことがある」ということです。
退院先はどんなところがよいか、退院後にどうやって暮らしていくのかといった視点が必要になります。病気だけを治すのではなく、患者さんの背景や生活のことも考え、心身ともにできるだけよい状態で帰っていただけるようにすることを心がけています。

地域に根差す病院ならではの難しさはありますか?

当院のような町の病院では、ある程度はなんでも自分で診られることが前提です。
また、できる検査も限られていますから、自分が今できることのなかで対応しなければならないという大変さはあります。制約があるぶん、医師一人ひとりの技術や姿勢が問われますね。

一方、どこまでを自分で診て、どこから専門医に任せるかという見極めも重要です。自らの判断が患者さんの状態を大きく左右することもあるので、1人でその見極めをすることはとても難しいと感じています。
以前、脳外科の処置が必要な患者さんをドクターヘリで当院から島根県立中央病院に送ったことがあります。電話1本でドクターヘリが呼べるので安心感がありますし、直接相談ができるので心強いです。

現在のお住まいやご家族との過ごし方について教えてください。

今は病院の官舎に住んでいます。歩いて5分もかからないので通勤も楽です。
夫は栃木県に単身赴任をしており、こちらに来るのは月に1度ほどです。出雲市に住んでいる母が頻繁に来てくれて、子どもたちの世話をしてくれています。
土日はほとんど休めるので、普段は子どもたちと近所を散歩したり、たまに車で40~50分ほどの益田市まで買い物に行ったりして過ごしています。

津和野町のよさはどんなところですか?

津和野町は山陰の小京都と呼ばれていて、城下町時代の街並みや津和野城跡が残る美しい街です。
約1,000本もの鳥居がある太皷谷稲成神社や乙女峠マリア聖堂など、観光名所もたくさんあります。土日は観光に訪れる方も多いです。
子どもたちのお気に入りは教会の前の水路にいる鯉の餌やりです。私は病院の前の川にかかる赤い橋が好きで、出勤のたびにワクワクしています。ここにきてまだ1年経っていませんが、景色がとてもきれいで風情があり、ただ散歩をしているだけでも楽しいですよ。

また、津和野は食べ物もおいしいです。細かく具を刻んだ汁にごはんがかぶせてある「うずめ飯」はおすすめです。町中に和菓子屋さんが多く、有名な「源氏巻」など、かわいくておいしいお菓子は子どもたちにも好評です。
島根県全体に言えることですが、人が優しくて治安がよく、暮らしやすいです。子ども連れに優しいのも田舎ならではのよさですね。

島根県で働く医師へのサポート体制はいかがですか?

女性医師は男性医師に比べて、どうしても出産・子育てなどに時間がとられます。医師としてのキャリアとのバランスをとることが難しく、仕事を断念する人もおられるようですが、私は産休(産前・産後休業)や育児休業もしっかりとらせていただき、また、つわりがつらいときなどには代診を頼むことができたので、安心して子どもを産み、育てることができています。保育園を探すときにも病院から口添えをしてくれたりと、周囲の理解もあってとても働きやすいです。

今後の目標を教えてください。

大学生のころから精神科に興味があり、後期研修後は精神科医をめざしたいと考えていたのですが、島根県内の病院で経験を積んでいくうちに少し変化がありました。
高齢の患者さんが多い地域では、心のケアや認知症への対応などが不可欠です。都市部とは異なる精神科分野の需要について学んだことで、地域で精神科の知識を生かしながら総合医として働ける医師になりたいという気持ちが強くなりました。

島根県で働いていく以上、「専門でないから診られない医師」ではなく、少なくとも最初は患者さんの話を聞いて、患者さんに寄り添いながら最善の医療の形を模索する医師になりたいと考えています。多くの先輩たちに学び、少しでも近づいていきたいと思っています。

島根県での勤務に興味のある医師にメッセージをお願いします。

今、私は子どもから離れられない時期ですが、それでも子育てを楽しみながら、医師としての研鑽ができる環境で働けています。
島根県は、子育て中の医師にとっても働きやすい場所です。一度見に来てもらえたら、気に入っていただけるのではないでしょうか。

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