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飯南町立飯南病院 医長 松本 賢治 先生

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松本 賢治先生

略歴
滋賀県栗東市生まれ。平成23年に島根大学医学部を卒業後、諏訪中央病院で初期臨床研修を修了。島根県立中央病院、出雲市民病院を経て、平成29年から現職。

飯南病院で勤務されるまでのご経緯を教えてください。

滋賀県で生まれ育ち、医師をめざして医学部学士編入で全国の大学を受験。最初に合格した島根大学に入学し、島根県で大学時代を過ごしてきました。
卒業後は長野県の諏訪中央病院で2年間の研修を終えてから、島根県に戻り、1年間は島根県立中央病院の救命救急科で勤めました。その後、出雲市民病院で後期研修医として3年間の研修を受け、島根県に来て4年目に飯南町立飯南病院に着任しました。

また、妻の実家が島根県にあるということも島根県に来た理由の1つです。子どもの生活や教育環境など家族の暮らしを考えた時に、島根県で暮らしていこうという思いに至り、いろいろなご縁があって医師として島根県で働くことを選びました。

飯南病院で勤めることになったきっかけを教えてください。

「ディア・ドクター」という映画を観て、地域住民に頼られる医師に憧れ、医療を必要としている小さな町の総合診療医として働きたいと思うようになりました。医学生時代にもさまざまな病院を経験してきましたが、そのなかでも飯南病院は、院長を筆頭に、地域に根付いた医療に取り組まれていることに大変共感しました。
また、行政とも近く、地域連携にも深く関わっていけると思ったことが飯南病院での勤務を決めた理由です。

実際に飯南町で医師をすることで、より患者さんや地域と近い距離で接することができるようになりました。赤ちゃんやお子さんから、働く世代、寝たきりの高齢者まで、年齢を問わず診療しています。
昨年、町の開業医さんがいなくなってしまい、地域の医療機関は飯南病院だけになったことで、より地域へ貢献できる医師になりたいという思いが強まりました。

診療で心がけていることはどんなことですか?

医師として自分本位にならないことを心がけています。患者さんと対話をすることで、医師の知識だけではわからない、その方の思いや本当の問題点が見えてくることもあります。 一人ひとりのお話を聞きながら、一緒に考えていく医療を提供したいと思っています。

多い日では50〜60人の患者さんを診察することもありますが、専門医レベルの治療が必要になる場合もあります。その際は、他病院の専門医に相談し、患者さんの意向を聞きながらご紹介するなど病病連携を行っています。紹介状でのやりとりになるので、できる限り患者さんの情報を細かく記載するなど、円滑な地域連携のためには、相手の立場に立った対応が必要だと感じています。

地域に密着した病院で働いて感じる魅力はどんなところですか。

地域に密着した病院だからこそ、より近い距離でその方の価値観や生活観を知る機会も増えました。患者さんが人生について語ってくれるまでの関係が築けたときが、医師をやっていてよかったなと感じられる瞬間です。
また、地域で開かれる集まりで当院の医師が講演会をさせていただく機会もあります。そういった地域のコミュニティに参加することで、当院に通われていない地域住民の方とコミュニケーションをとれることも楽しみの1つです。

松本先生は地域の方々とどのような交流をされていますか。

地域のホールや公民館に集まった地域の方に、エンディングノートや脳卒中の話をすることもありますし、長生き体操という活動に参加して、そこで医療にまつわる話をしたこともあります。
なかでもエンディングノートの回は反響が大きく、「人生会議」の愛称で知られるACP(アドバンス・ケア・プランニング)についてお話しして、皆さんと一緒に人生や生き方について考えました。そして、自分の生きてきた人生を振り返ったり、自分が大切にしているものは何かを考えてもらい、実際にエンディングノートを書いていただきました。
たった1時間半ほどの時間でしたが、あらためて自分の人生に向き合うことで、これからどういう生き方をしたいかという気持ちを確認していただく機会になりました。

私が救命救急に携わっていた頃、反応することがほとんどできなくなった状態で延命治療を受けている患者さんと、月に1回の面会に来られるご家族の姿を見て、「患者さんご本人はこの生き方を望んでいたのだろうか?」と考えることもありました。
そういう現場を見てきたことが、ACPやエンディングノートについて患者さんや地域の方に伝えるきっかけにもなっています。患者さんの人生の手助けを医療的な部分から行っていくのが医師の役割だと私は思います。

飯南病院での働きやすさはいかがですか。

患者さんにとって必要な医療を提供できるよう、決まったルールの縛りのなかではなく、ある程度、医療者の判断に任せていただけることが飯南病院のよさだと感じています。
また、一人ひとりに応じた治療を行うためには、医師の力だけでなく、看護師をはじめとした多職種と協力する必要があります。飯南病院では患者さんに対してチーム医療で取り組めているのも働きやすく、今よりもさらに強化していきたいです。

また、訪問診療にも注力していて、基本は週に1回担当していますが、患者さんの病状によっては臨時で伺う必要が出てきます。当院は医師数も多い方なので、医師同士協力しながら、患者さんに合わせた対応ができる環境が整っています。

飯南病院で果たしていきたい今後の課題や展望を教えてください。

当院で働く前も訪問診療に携わる機会は多かったですが、飯南町ではさらにニーズが高まっています。在宅医療によって、患者さんの「住み慣れた場所で過ごしたい」という気持ちに寄り添っていきたいですね。
しかし、人員や施設が充実している都市部に比べて、飯南町にはまだまだ強化していかなければならない課題があります。

地域医療では、医師としての目標を果たすためには10年必要だといわれています。最初の3年はその地域を知り、医師としての自分を知ってもらい、次の3年で地域で必要とされることに取り組み、次の4年で自分のやりたい医療に取り組むというのです。
私が飯南病院に来てから、地域の方とのコミュニケーションを積極的に行っているのは、この最初の3年で飯南町を知り、知ってもらいたいという思いからです。次の3年は地域の保健福祉の方と関わりながら、地域の皆さんに貢献できる医療が提供できればと思います。

島根県での勤務に興味をお持ちのドクターにメッセージをお願いします。

島根県は空気が澄んでいて、海も山も近くて、夜空を見れば星がたくさん見える、自然に囲まれた素敵な町です。私は子どもが自然に触れられる環境のなかで育って欲しかったので、島根県での生活に満足しています。もちろん、医師を必要としている町で働けることにもとてもやりがいを感じています。

高齢化や人口減少が進む町なので、医師も社会的な仕組みを考えるなど、自分のアプローチ次第で地域づくりに貢献できると考えています。飯南病院は医師をサポートしてくれる助成制度も充実しているので、理想の医療を追求できると思います。
医師としてのレベルアップ、地域医療のベースアップを図り、そして患者さんに寄り添った医療の提供を島根県で一緒にめざしていきましょう。

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