医療モール開業

今、話題の医療モールと日本の医療

近年「医療モール」という言葉がしばしば聞かれるようになりました。医療業界の現状と将来展望を見ながら、医療モールが各地域に誕生している背景を探ってみます。

高齢者医療費が増え続けている

医療モールが最近注目されているのは、医療業界が直面しているさまざまな問題と関係しています。 わが国の医療費は2015年度(平成27年度)において概算41兆5千億円で、13年連続で過去最高を更新しました。しかも、前年度に比べて1兆5千億円も増加しており、統計を取りはじめてから過去最大の増加幅となっています。
なぜ、これほど医療費が年々増加しているのか、その理由としてはわが国の急速な高齢化、医療技術の高度化などがあげられます。 特に日本の高齢化は先進国の中でもトップを切って進行していて、総人口に占める65歳以上の割合は、26.7%にのぼっています。これに伴って高齢者医療費は増える一方で、65歳以上の国民医療費に占める割合は、約60%を占めています。 高齢者医療費が増える中で、少子化の波が押し寄せています。出生数の減少は、15歳~64歳までの生産年齢人口の減少を招き、1970年には9.8人で65歳以上の高齢者を支えていたのに、2020年には2.0人でサポートしなければならなくなります。そして、保険料支払いの主役である生産年齢人口の減少は、医療財政の悪化につながり、医療保険制度の根幹が揺らぎかねません。

高齢者医療費が増え続けているのイメージ
参考:生産年齢人口の減少(内閣府「平成28年版高齢社会白書」)

病院数・病床数の減少が、開業医の競争を招く

こうした医療状況にあって、限られた医療資源を有効に活用し、切れ目のない医療・介護サービス体制の構築を目的に、国では2014年に「地域医療構想」を柱にした医療提供体制の見直しを図りました。 この構想では将来の医療需要と病床の必要量を各都道府県が推計し、実情にあった方向性を定めていくとしていますが、実際に2004年から2014年の10年間に病院数は、9,077病院から8,495病院まで減少し、病床数も同年比較で1,812,722病床から1,680,712病床と減少の一途をたどっています(厚生労働省「医療施設動態調査・病院報告の概況」)。
しかし、こうした病院数や病床数の減少とは別に、医学部定員が2008年から毎年増員されたために、医師も毎年約8,000人誕生し、病院勤務医も増加してきています。このため、ポストが不足するなど、勤務医の環境も決して恵まれたものとは言えず、また、「地域の人の顔が見える医療に従事したい」「一人の患者さんと向き合う時間を増やしたい」「自分の専門分野の医療を地域の人に提供したい」などの理由から開業医を目指すドクターも増え、結果として診療所の数も増えたため、開業医の競争が激化してきました。

課題を克服する医療モールのカタチとは

医療モールは、病床数の減少、医師の増加、地域医療への関心など、社会的な背景、医療業界の事情から生まれてきました。 開業するに当たって、高齢者医療費の増加、病院数・病床数の減少、開業医の競争激化などの課題に向き合い、これらを克服するための対策が必要になります。 開業する医院の特徴を明確にし、ブランド化を進める。国が打ち出した「地域包括ケアシステム」に対応した地域医療の中核となり、地域連携を進めるクリニックを目指す、介護事業とのコラボレーションや在宅医として、地域の中に溶け込んだ医療活動を展開する・・・。
医療モールは、こうした一つひとつの課題をクリアにし、一定の地域の中に、同じ“志”と“夢”を持ったドクターが集い、それぞれの専門医療分野の高いスキルを活かしながら、地域の人々のかかりつけ医として機能する新たな医療のスタイルです。

「医療モール」が地域コミュニケーションの中心になって

「医療モール」は、医師のほかに地域社会の健康・医療、生活を支える人々によって運営されていきます。薬剤師、介護士、健康づくりのアドバイザー、保育士など、さまざまなスキルを持った人々が集う空間です。 そこに地域住民が集まり、健康・医療を中心にコミュニケーションが生まれ、その輪が子育てや教育などにも広がっていくとき、新しい地域の姿が創造されていきます。「医療モール」はいつでも地域コミュニケーションの中心にいます。
医療モールは、より良い医療を求める人々や社会からの熱い視線を浴びています。 医療モールは地域医療を担う重要な役割を持っており、それはまた、高齢社会のわが国の医療を支える役割も担っています。人々が安心して、健康な暮らしを営むために、医療モールは未来に向けた医療を創造し続けます。

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