1. Part3「ずばり、市中病院と医局の違いはココ!」編

Part3「ずばり、市中病院と医局の違いはココ!」編

市中病院?医局?!どこが違うの?どっちがいいの?現役ドクターの本音を徹底検証!

Question
医学生に市中病院の印象を問うと「診療経験を積むことができる」「収入面で優位」という回答が上位を占めました。一方医局は「人脈を築くことができる」「先端医療が学べる」「医療設備が充実している」が上位でした。これについて、どう思いますか?

参加ドクターのプロフィール&プチインタビューを見る

医局 医局の方が「人脈を築くことができる」のか…うーん。
市中→医局 大学病院の方が友達は多いですよ。大学病院は同学年が100人ぐらいいるしね。

人脈って、どうなんですかね。これって出会いの問題ですよね。量より質ですよね。

医局 量だったら医局なんでしょうけど。人数多いから。でも、質だったら、わかんないですよ。質って、それぞれ満足するレベルが違うから。
市中 そうだよね。どんな人に出会えるかって大事だよね。

医局の印象2位が「先端医療を学べる」。これは正解だと思う。

市中→医局 そうですね。
医局 3位が「医療設備が充実」か。
市中→医局 それも間違ってないですよ。

確かに、医局の方が絶対に医療設備は充実してると思う。

市中→医局 でも、いくら充実していても「お前、それ使うのかよ」っていうのもあるけど(笑)
医局 まあ医局の上位3つは納得できる。一方で市中に対する印象で「診療経験を積むことができる」が圧倒的多数。その次に「収入面で優位」。

わかる気がしますけどね。僕もその2つを求めて市中に行きましたから。

医局 結果どうでした?
市中→医局 僕はそれはそれで合っていたと思いました。コモンディジーズも診られるようになったし、自分の専門科以外の病気も診られるようになりましたしね。
医局 コモンディジーズじゃない専門的なことを学びたいというなら、どう?
市中→医局 そこは、市中は弱いです。
医局 うん。つまり、診療経験って一括りにして比べようがないということだよね。市中の印象で「収入面で優位」はどう? 前に話した通り、みんなが思っているほど、違いはないよってことだよね。

収入については、今はそんなに変わんないですよ。市中、医局に関係なく、その病院によって条件を聞かないとわかんないと思います。

あと市中と医局の違いで言えば、市中は辞めるのは自由だけど、医局は自由じゃないですよね。

医局 それはそうなんだけど、辞めたいヤツを引きとめてもいいことは何一つない。でも、今はマンパワーを大切にして、0より1の方がいいって考えで、病気になっても引きとめたりするからおかしくなる。
市中→医局 そうなんですよ。
医局 彼女、彼氏にふられたからって、休むヤツがいるんだよ、今は。そんなやつは辞めていいよ。
市中 そういうやつとは話ができないです。
医局 医局の印象で4位が「上下関係が厳しい」か。どっちも厳しいんじゃない。1年違ったら、もう犬あつかい。
市中→医局 部活みたいだった。
医局 医局にいる側から言わせてもらうと、市中の方がそれなりにプライドがあるから、逆に厳しいんじゃないかなって思っちゃうけど。
市中→医局 俺は市中の方が楽かなって思いますよ。医局だと教授とかと話しづらい。
医局 市中に行く人って、自分のやりたいことがしっかりしている人が多いでしょ。
市中 あ~、明確に理由があって母校の医局を捨てて市中に行くっていうね。
医局 そう。でも、どうだろうな。上下関係どうこうって、たぶん、ないものねだりみたいなとこが入っちゃっているのかも。向こうの方がよさそうとか。ただ、そんなのって大学卒業したてホヤホヤの人に言っても、選択する参考になるのかな。医師になってみて初めてわかることって多いわけだから。う~ん…なんで選んだの? 市中。
市中 俺は医局に比べると教育のシステムがしっかりしていると思ったから、その時はね。実際は医局に残ってないから、わかんないんだけどね。
医局 そりゃそうだよ。もちろん俺らもそうだから、それがよかったのか悪かったのかって、自分の歩んだ道しか知らないからわからない。

結局、自分のやりたいことがないと、どこ行っても、自分のために何もならない。

そう、基本的には自分探しの旅だからね。

医局 君が専門を決めたのも市中に行ったからなのか、もし医局に行っていてもそうなっていたのか。
市中 それは、全然わかんないよ。
医局 だよね。
市中 そういう意味では結論は出ないよね。
医局 でも、どうかな。今の医学生にどっちを薦めるって言ったら、しかも2択しかないとしたらだよ。そりゃ道は2択だけじゃないのはわかっているよ、俺ら全員ね。それでも2択で薦めるならどっち?
市中 究極の選択か。難しいね。でも、俺なら市中を薦める。それは、ある意味自分がやってきたことを否定するかどうかになってしまうでしょ。
医局 逆を言うと、そうなるね。
市中 実際、自分の専門に関して、医局のやつに俺は負ける気がしない。もちろん医局にいるいい面もあるんだけど、海外に留学できたりとか、市中にいるいい面も味わっているしね。俺は市中でも幸せな部類だと思っているから。
医局 自分の道以外を薦めるのは、自分のこれまでを否定するということにもなるんだけど、それを置いといても、自分の道を後輩たちに薦めるということなんだよね。
市中 そうだね。でも一般的な話でいうと安定という意味では、たぶん医局の方が安定はしていると思う。
医局 安定か~。

市中と医局って、ベンチャーに勤めるか、大企業に勤めるか、みたいな話だよな。

市中 僕は医局を薦めます。自由は効かないけど、手厚いですよね。
医局 あと面倒見がいいってのもある。
市中→医局 面倒見? そんなにいいかな~?
市中 失業しないですよ。
市中→医局 そりゃそうだね。
医局 市中病院って失業するの?
市中→医局 クビ切られますよ。
市中 残れなくて泣く泣く医局に帰る人もたくさんいるよ。
市中→医局 市中は、自分がずっとそこにいられるかわかんないっていうのがありますよね。
市中 それに自分の専門を追究するとなると、それは医局じゃないと無理です。

市中はやっぱりジェネラル?

市中 そうなんですよ。一部の大学規模の大病院、がんセンター系の病院や専門病院以外の市中病院では専門の追及は困難なんです。
市中 僕は時代の流れも考慮します。たとえば専門医に走ってしまった日本の医療の流れの中で、自分がジェネラルでやって名をあげていくのは厳しいんです。ゴールをどこに設定するかで違いますが、ジェネラルでやっていくのであれば、いずれはなんでも診られるようになるかもしれない。だけど専門医に劣ってしまう医師にはならない。いわゆるファミリードクター的な存在でやっていくのを希望するならいいですけど。
市中→医局 それは厳しいよね。
市中 たとえば、胃専門の先生が大腸 手術をするとなると、大腸の専門の先生に比べるて質が落ちます。
市中→医局 医局は上(胃)と下(大腸)で分かれているからね。
市中 大腸の手術の質は落ちますが、 胃に関してはスペシャリストです。それを重宝されるのが現代医療で、今はどんどん細分化されているじゃないですか、臓器別に。それを考えると医局を薦めたい。
医局 スペシャリストとジェネラリストね。それに関してはどう思うんですか? 僕は、どっちを取るかと問われれば、スペシャリストを取りますよ。
市中→医局 患者さんの立場だったらってことですか?
医局 患者さんの立場でもそうだし。スペシャリストが自分たちのあるべき姿だと思います。ジェネラリストよりもね。ブラックジャックみたいにはいかないってこと。

やはり一つ一つの医療の質は落ちます。まあ科に もよるのかもしれませんが。

一同 うんうん(深くうなずく)
市中 どう考えても胃外科だけをやっている人と、胃と大腸やっている人だったら、胃外科だけをやっている人の方が手術はうまいに決まっています。才能うんぬんじゃないです。症例数が違いますから。
一同 うんうん(深くうなずく)
医局 それは日本の国民皆保険に関わってくることだよね。患者が自分の胃を治してもらいたいってときにスペシャリストとジェネラリストのどっちにかかりたいかって言ったら…。
市中 スペシャリストでしょう。でも、国民皆保険制度ではジェネラリストも必要です。一方で世界の流れからすると専門医も必要だってことになっています。ジェネラルという専門も必要なのかもしれません、いわゆる海外のファミリードクターのようなジェネラルという専門性です。日本の医療は迷っているんです。医療制度と医療のあり方ってリンクしていますよ。
市中→医局 国民皆保険制度では、専門医に切ってもらっても、普通の医者に切ってもらっても値段が一緒だからね。極論を言えば、スキルアップは関係ないですよね。医師免許持っていたら、みんな一緒だから。整形外科の先生が骨折診ても、専門外の俺が診ても、患者が払うお金は一緒。

心から思うけど、医者になってみると理想と現実は違う。

市中→医局 医学生でも医師でも、みんなそのギャップに、自分がどう折り合いをつけていくかだと思うけど、前向きにね。
市中 ほんと、そうだよな~。 

結局、医者の不満って、突き詰めると国の話になるんだよね。

一同 うんうん(深くうなずく)
まとめ
自分の信じた道を迷わず進むのは、医療の世界に限らず、とても難しいことです。
「基本的には自分探しの旅だから」。
一人のドクターがポツリと発した、この言葉こそ医術の道のりの険しさを表しているのではないでしょうか。理想と現実のギャップに直面しながらも、その段階、段階で、自分がベストだと思う判断を下す。その繰り返しなのだと思います。ドクターたちは、外側の人たちが思うほど、華やかなイメージの中で生きているのではなく、常に多くの悩みや葛藤を抱えているのだと察することができます。

そうした経験を経てもここに参加いただいたドクターたちは、現状を悲観することなく高い職業意識やモチベーションを維持し続けています。その秘訣を問うと「患者がよくなってもらえると嬉しい」という回答をいただきました。どんなに経歴が長くとも、ドクターとして味わった素直な喜び、感激をいつも新鮮に受け止め、それを前へと進むエネルギーに変えているのです。市中と医局を比べると、確かに違いはあるようです。ですが、どちらを選択したとしても、ドクターとしての熱いハートを持ち続けなければ、医道を迷わず進むことは難しいのかもしれません。