1. アルツハイマー病の発症前にハイリスク患者を発見!人工知能のアルゴリズムを伊が開発中

海外医療トピックス

2017.12.15

アルツハイマー病の発症前にハイリスク患者を発見!
人工知能のアルゴリズムを伊が開発中

アルツハイマー病の早期発見に役立つ、新たな方法の開発がイタリアで進んでいます。事前にアルツハイマー病にかかるリスクの高い人を見抜くことを目的とした、AI(人工知能)の研究です。今回、その成果がメディアに取り上げられ広く話題となりました。

MRIの解析アルゴリズムでアルツハイマー病の早期発見

英国の科学雑誌「New Scientist」によると、この研究はイタリアのバーリ大学がおこなっているもので、医師が患者さんに現れた症状から診断するよりも10年早くアルツハイマー病にかかる患者さんの脳を識別できるとのことです。

この早期診断技術には、患者さんの脳のMRI画像を分析しアルツハイマー病に起因する脳の構造変化を識別する人工知能が用いられています。つまり、アルツハイマー病を見分ける人工知能の機械学習アルゴリズムを開発したのです。

もしこれが臨床で利用できるようになれば、症状が現れる前の超早期発見となります。そのため、「超早期に薬剤を投与すれば効果が出やすいかもしれない」、「進行の遅延を試みる生活習慣の改善を今よりもっと早くから始められる」など、アルツハイマー病と闘う新たな可能性に期待が高まっているようです。

精度は86%!アルツハイマー病の脳を見分けるAIの研究

まず、研究チームは、人工知能に罹患者と健常者の脳の違いを正しく分類・区別させるため、アルゴリズムの訓練をおこないました。用いられたデータは、米ロサンゼルスの南カリフォルニア大学のアルツハイマー病研究データベースから得た罹患者38人分と、健常者29人分を合わせた67人分のMRI画像です。

訓練に際しては、各画像を小さな領域に分割しニューロンの連結を分析。すると、比較する脳領域が約2,250~3,200立方ミリメートルのとき、アルゴリズムがアルツハイマー病を見分ける精度が最も高くなることを発見しました。

その後、研究チームは新たに148人のMRI画像を解析するテストをおこなっています。被験者のうち52人は健常者、48人は罹患者、48人は軽度の認知障害(MCI)でした。ただし、MCIの被験者については、いずれもMRI撮影の2.5~9年後にアルツハイマー病を発症しました。

ここでは、健常者と罹患者の脳を86%という高精度で区別することに成功。また、健常者とMCI患者の脳も84%の精度で区別できたといいます。データベース内の限られた資料を用いた試験のため、まだまだ不十分ではありますが、現時点でも脳内の構造変化を分類することにおいて精度の高いアルゴリズムと言えるでしょう。

従来の検査法よりはるかに安全かつ安価なAI検査への期待

アルツハイマー病については、脳脊髄液の分析や、放射性トレーサーを用いた脳画像検査によって、比較的正確にハイリスク患者を予測することが可能です。しかし、それら従来の方法は非常に侵襲的かつ高価であり、検査をおこなえる施設も限られています。また、実現すれば理想的ともいえる「アルツハイマー病を予測する血液検査」の研究は難航しており、成果はなかなか期待できません。

イタリアで開発中のアルゴリズムにも、MCI患者の脳を解析して、その中から将来アルツハイマー病を発症する可能性のある人を見つけられるようにする、という課題は残っています。それでも、もっとも現場に登場する日が近い新技術と言えるかもしれません。

また一方で、ニューヨークにあるマウント・シナイ医科大学の研究者はこの汎用性の高い研究を、パーキンソン病をはじめとした他の脳疾患にも役立てられるようにしたいと述べています。MRI画像があれば人工知能が数々の疾患リスクを自動的に検出してくれる。そんな時代が訪れれば、早期介入によってより多くの患者さんのQOL維持に努められそうです。

現時点では、アルツハイマー病の治療法は見つかっていませんが、手軽で侵襲性の低い早期発見方法の確立にはとても大きな価値があります。

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