1. 「老化速度の操作」だけでなく「若返り」にも成功!視床下部の幹細胞におけるマウス実験が話題に

海外医療トピックス

2017.11.24

「老化速度の操作」だけでなく「若返り」にも成功!
視床下部の幹細胞におけるマウス実験が話題に

いつまでも若々しく健康でいたい。そうした「老化に抗いたい」という願いは、世界中の人々に共通するものではないでしょうか? それを裏付けるかのように、米国で老化速度を操作する実験に成功したという研究発表が大きな話題となっています。

視床下部幹細胞の減少で老化が加速することを発見

マウス実験において老化速度の調整や若返りに成功したとして、米アルベルト・アインシュタイン医学校が『Nature』誌で最新の研究成果を発表しました。実験内容は、マウスの視床下部の幹細胞に特殊な操作をおこない、観察するというものです。

視床下部は、成長、発育、生殖、代謝などの重要なプロセスを制御する領域として知られています。加えて、全身の老化を調節していることも、2013年に同大学の研究チームが明らかにしています。

今回の新たな研究では、動物の加齢にともなって視床下部にある神経幹細胞の数が自然に減少することや、それが老化を加速させることも判明しました。そこで、老化を司ると考えられる神経幹細胞への人為的な操作によって、老化速度を調整できることをマウス実験で実証したのです。

また、チームはこの研究を通して、老化を遅らせるだけでなく逆転させる、いわゆる「若返り」も可能であることを確認し、世界を驚かせました。

マウス実験で「老化操作」や「若返り」に成功

まず、視床下部の幹細胞が老化の鍵を握っているかどうかを確認するため、研究チームは健康なマウスの細胞を観察しました。その結果、生後10か月で幹細胞が減少しはじめたとのこと。これは、老化の兆候が現れる時期より数か月前にあたります。また、マウスが「老齢」といえる2歳あたりでほとんどなくなったといいます。

次に、この幹細胞の減少が老化を引き起こしているかどうかを突き止めるため、中年齢期のマウスの幹細胞を意図的に破壊したところ、大幅に老化が加速し正常よりも早く死亡する結果となりました。

さらに、幹細胞を人為的に増やすことで老化を止められるかを調べるため、研究チームは2種類のマウスの視床下部に幹細胞を注入しました。一方は幹細胞を意図的に破壊した中年齢期のマウス群、もう一方は老齢期のマウス群です。その結果、両方の群において、老化を示すさまざまな尺度に「遅くなる」または「逆行する」という変化が見られたといいます。

研究者が考える視床下部と老化のメカニズムとは

研究者が考える抗老化作用のメカニズムについては、実験における観察結果より、「幹細胞がマイクロRNAを放出することで起こっている」という見解が有力です。このマイクロRNAは、遺伝子発現の制御において重要な役割を果たしており、エキソームと呼ばれる小さな粒子に入っています。

なお、このメカニズムの仮説は、マイクロRNAを含むエキソームを抽出してマウスの幹細胞に注入することで、真実である可能性が裏付けられました。組織分析のほか、筋持久力、協調運動、社会的行動、認知能力などの行動実験において、顕著な老化の遅れが見られたからです。

現在、研究チームはさらに詳しくマイクロRNAを調べ、老化を遅らせる因子の特定を目指しています。この研究は、老化を食い止めるという夢のようなテーマはさておき、老化が原因で起こる疾患の予防や寿命の延長などに役立てられる可能性があると考えられているそうです。

マウス実験とはいえ、人為的な操作によって生き物が若返ったという結果は驚くべきものに違いありません。新しい治療法としてヒトに役立てられるまでには長い道のりが待っていると予想されますが、世界が熱望する研究の今後に期待が高まります。

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