1. 進化を続けるメディカル・ドローン:長距離飛行でのサンプルの状態維持は可能?

海外医療トピックス

2017.10.27

進化を続けるメディカル・ドローン:
長距離飛行でのサンプルの状態維持は可能?

近年、へき地に医療サプライを配達する方法として「メディカル・ドローン」が注目を浴びています。世界各国のスタートアップや医療機関が実用化に向けた開発を進めていますが、その技術は一体どの程度のレベルなのでしょうか。今回は米国メリーランド州のジョンズ・ホプキンズ大学が行った調査の結果をご紹介します。

課題は「長距離飛行でのサンプルの安定性」

2017年9月にジョンズ・ホプキンズ大学が「American Journal of Clinical Pathology」で発表した調査結果によると、メディカル・ドローンを使ってヒトの血液サンプルを輸送した結果、サンプルの状態を安定させたままで161マイル(約260km)の飛行を成功させたそうです。260kmというと、およそ東京から静岡県浜松市までの距離にあたります。今回の調査のポイントは、気温の高い地域でドローンを使用する場合、長距離飛行でもサンプルの状態を安定させたまま空輸が可能かということでした。

以下の動画はサンプル採取から輸送までのプロセスを解説したものです。被験者から採血したサンプルは温度管理ができる容器に入れられ、近隣の飛行場まで車で運ばれました。そこで半数のサンプルはドローンに積み込まれて空輸され、残りの半数はそのまま車内で保管されました。

Drone Transport of Chemistry and Hematology Laboratory Samples over Long Distances from Medical Drones on Vimeo.

※クリックすると動画が始まります

車vs.ドローン:調査内容とその結果

今回の調査のサンプル採取に協力したのは21名の成人(女性14名、男性7名)です。各被験者から採血管4本分の採血を行い、計84本のサンプルが採取されました。空輸されたのはそのうちの42本で、飛行時間は約3時間、先にも述べたように飛行距離は約260kmでした。空輸前・空輸中のサンプルは、搭載センサーによって温度変化がモニターされました。このモニタリングから得られたデータによると、空輸サンプルの平均温度は24.8℃で、車内で保管していたサンプルの平均温度27.3℃より2.5℃低いという結果になりました。

飛行を終え目的地に到着したサンプルは、車内で保管されていたサンプルと共に約100キロメートル離れたラボへ運ばれました。そして遠心分離器にかけ、19項目(ナトリウム、カリウム、クロール、重炭酸塩、血清尿素窒素、クレアチニン、グルコース、WBCs、RBCs、ヘモグロビン、ヘマトクリット、MCV、RDW、血小板数、リンパ球、単球、好中球、好酸球、好塩基球)の分析が行われました。その結果、空輸されたサンプルと車内で保管されていたサンプルの化学的性質と血液学的数値は、ナトリウム、カリウム、クロール、重炭酸塩を除く19項目中15項目では、有意な差や偏りは見られませんでした。

対策が求められるリスクはどんなもの?

長距離の空輸でも安定した状態でサンプルの輸送ができて、メディカル・ドローンのさらなる普及が進めば、世界の多くの人々がその恩恵を受けられることになります。血液や医薬品を素早く安全に必要な場所へ届ける手段として、メディカル・ドローンは最も効率の良い選択肢のひとつであるからです。
もちろんドローンには、事故や悪天候が原因で墜落するリスクもあります。こういったリスクを減らしていつでも安定した状態で活用できるよう、その安全性・安定性のさらなる研究を進めていくことも大切なポイントとなります。そのためには多様な条件下、さまざまな環境の場所での調査を引き続き行っていくことが求められます。

まとめ

ドローンのように、他の分野の技術の進歩が、医療の質を向上させる可能性があります。そして、先進国だけでなく発展途上国の医療にも今後、多くの変化をもたらしていくでしょう。こうした変化を素早くキャッチできるように、新しい技術に関する情報を積極的に入手していきましょう。

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