1. 薬剤の廃棄による損失に米メディアが再注目!使用期限切れ40年の薬の試験結果が話題に

海外医療トピックス

2017.10.20

薬剤の廃棄による損失に米メディアが再注目!
使用期限切れ40年の薬の試験結果が話題に

国の財政を圧迫する医療費。とりわけそれが仕事に影響しうる医師にとっては、決して無視できない問題です。 そのなかでも、「無駄使い」にあたる内訳に薬剤の廃棄額が含まれることは、近年しばしばメディアでも取り上げられています。そんななか、米国のNPR(ナショナル・パブリック・ラジオ)と情報サイトProPublicaが共同で発表した、薬剤の使用期限と損失についての記事が大きな反響を呼びました。

薬剤を廃棄する「無駄」に、米メディアが再注目

2015年に日本で厚生労働科学特別研究としておこなわれた、東京薬科大学 益山光一教授らによる「医療保険財政への残薬の影響とその解消方策に関する研究」でも知られる通り、毎年残薬による損失は莫大であり、その解消方法が模索されています。残薬が生じた理由を踏まえた処方変更だけでなく、残薬の再利用などの取組みも求められています。

米国では、残薬の廃棄を含めた「無駄」が医療費全体の4分の1を占めており、日本円にして年間約85兆円にものぼるといいます。そこで、米メディアが「安全かつ効果のある薬を廃棄する無駄について考え直すべきではないか」と、調査に乗り出しました。薬のなかでも、使用期限の切れた古い薬の「質」について調べたのです。

薬剤師や毒物学者による薬の分析結果が発表されると、それはたちまち大きな話題になりました。なんと、40年も前に期限切れとされている薬ですら、「有効成分はかなり安定している」といいます。

はたしてFDAの薬剤に対する使用期限設定は妥当か

薬剤を販売して安全を保証する以上、使用期限の表示は義務付けられています。米国では、FDA(米国食品医薬品局)による管理のもと、薬の使用期限はたいてい製造から2~3年に設定されています。

しかしながら、医療機関が適切な管理のもとで薬剤を保管している場合、使用期限を過ぎたらすぐに薬の状態が悪くなるとは考えにくいのが暗黙の了解です。今回の調査でも、分析対象のほとんどは30年以上前のものでしたが、いずれも製造時の容器内で密封が保たれており、保存状態がよかったとされています。

分析された薬は「抗ヒスタミン薬」「鎮痛薬」「精神刺激薬」を含む14種類の化合物でしたが、うち12種類は製造時と同等の効能を保持していたとのこと。なかには、ラベルに表示されている濃度を100%保っているものもあったそうです。

とはいえ、処方箋を持ってきた患者さんに期限切れの薬を渡す、というわけにはいかないでしょう。そこで今回の調査をおこなった研究者らは、FDAの定める使用期限の妥当性について疑問を投げかけ、期限を延ばせる薬もあるのではないかと指摘しています。

100円の投資で7万円の節約に相当する期限延長プログラム

まだ使える薬を廃棄するという無駄について、米国もすべてを黙認してきたわけではありません。各病院や小売りに流通している巨額の薬剤については無視されてきた一方で、連邦政府の備蓄薬剤については、無駄を削減するためにこれまでにも具体的な方策が取られてきました。

1986年にFDAと国防総省が、備蓄している薬剤の使用期限切れのタイミングでその効能を検査することで、有効期限を延長するという取り組みを始めました。追加の費用はかかるものの、まだ使用できる薬剤を廃棄し新たに購入する損失を防ぐ効果は大きく、実質的には100円の投資で7万円の節約に相当するといいます。

さらに、今回の記事では、残薬を廃棄する不合理についても述べられていました。残薬の無駄を省くためには国民一人ひとりの理解も重要となるため、今回の報道はひとつのよいきっかけとなったことでしょう。

日本の厚生労働省がおこなった調査においても、薬剤師による残薬調整では、金額に換算して約8割の残薬を廃棄せず整理できるケースもあるとされています。日本では処方時に残薬について説明をする医師も増えており、国民教育への意識も徐々に高まっているようです。


はたして米国は、安全確認への投資や使用期限に対する意識の変化によって、状況を改善させることができるのでしょうか? 今後の取り組みから、いずれ日本の医療現場にも影響を及ぼす課題解決のヒントが得られるかもしれません。

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