1. 【海外事例】テレメディスンで視力を失う患者を減らせ 米国子供病院の挑戦

海外医療トピックス

2017.09.28

【海外事例】テレメディスンで視力を失う患者を減らせ
米国子供病院の挑戦

インターネットやスマホ、タブレットの世界的普及により、テレメディスン(オンライン遠隔診療)の可能性がさらに広がりつつあります。地理的な距離を超えての診察・治療を可能にしてくれるこのテクノロジーは、これまで医師にかかるという選択肢を持つことができなかった患者さんたちに、大きな希望を与えてくれるものです。今回はテレメディスン活用法の一例として、米国カリフォルニア州で活動する医療グループの挑戦について紹介します。

テレメディスンの活用

米国カリフォルニア州のChildren's Hospital Los Angeles内にあるThe Vision Centerは、複雑な眼疾患を持つ小児患者さんのために、国際的に医師や手術に関する推薦を行う機関として機能しています。現在の患者数は1万5千人を超えており、1年間に施行される目の手術の数は1,500件以上となっています。

当センターのディレクターを務めるThomas C. Lee医師は、Armenian EyeCare Project (AECP)の協力で、テレメディスンを使った眼科医のトレーニングを行っています。AECPとは1992年に立ち上げられたプロジェクトで、予防可能だったにもかかわらず視力を失う人をなくすことやアルメニアの人々にアイ・ケアを提供することを目的としたものです。このプロジェクトの下で「直接的な患者ケア」「医療教育とトレーニング」「一般への啓蒙活動」「リサーチ」や「能力強化」など、幅広い活動が行われています。

勝負は生後48時間

今回のプロジェクトで、Lee医師が挑戦しているのがテレメディスンを活用したROP(未熟児網膜症)の治療です。ROPは予防できる症状ではあるものの、生後48時間内に治療を行うことがその予防のためのキーポイントとなる病気です。そういったことから、医療システムや医療知識の乏しい発展途上国にとって、このROPは予防の難易度が高いものとなってしまいがちです。

アルメニアではアメリカやその他の西側諸国と比較すると3倍の確率でROPが発生しています。Lee医師は発展途上国でも新生児集中医療棟の設立や新生児ケアサービスの向上は進んでいるものの、これらの国の医師たちは未熟児出産で発生する合併症に対する処置を行うレベルに達していないという課題を挙げています。ROPのように出生後48時間以内に正しい処置・手術を行えば快癒(予防ではなく治療)できる症状も、こういった事情でタイムリーな治療が行えていません。

手術のリアルタイムなモニターが可能に

上記で挙げた問題への解決策として、マイクロソフト社のパートナーであるSADA Systemsが、Lee医師のグループのためにテレメディスンシステムを開発しました。SkypeとPolycom codecを活用することで、離れた場所で行われている手術を、実際にリアルタイムでその場において監督しているかのような環境にすることができます。

医師の技術を高めるためには「実技」も重要であるため、このように実際の手術現場をモニターし指導ができる環境というのは、発展途上国の医師がスキルアップするうえで非常に価値のあるものです。これまではエキスパートが他国に出向いてトレーニングを行うというコスト・時間ともにかかる方法だったものが、テレメディスンを導入することにより、低価格で素早く実施できるようになりました。またこのシステムでは一度に複数の医師が参加できるため、トレーニングを受けている医師はより短期間でさまざまなエキスパートたちの知識を吸収できるようにもなります。世界的な医療問題に取り組んでいくうえで、このようなシステムが設立されたことは大きな意味を持つことになるでしょう。

まとめ

テレメディスンが世界的に普及すれば、多くの医療機関が抱えるコストや技術の問題を解決するのに役立ちます。ぜひ今後も世界中の医療機関の間で協力し合い、世界全体の医療レベルを高め、より多くの患者さんを救うための方法として活用が望まれます。

海外医療トピックス バックナンバー

この記事を見た方はこんなコンテンツも見ています