1. 乳がんの超低リスク患者を見分ける方法を発見!早期スクリーニングによる過剰診断を回避

海外医療トピックス

2017.09.14

乳がんの超低リスク患者を見分ける方法を発見!
早期スクリーニングによる過剰診断を回避

さまざまなスクリーニング方法が登場し、がんの早期発見率が高まる一方、しばしば浮上するのが過剰診断の問題です。そんななか、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の研究者がスウェーデンの各大学と共同でおこなった乳がんの研究により、低リスク患者の予測に分子検査が役立つことを発見しました。早期スクリーニングによる過剰診断を防ぐ方法として有望視されています。

乳がんの早期スクリーニングと過剰診断

乳がんは、がんによる女性の死因において上位であり、多くの女性が懸念するがんのひとつです。そのためか世間の注目度は高く、ピンクリボン活動や著名人の罹患などを通して、世界的に乳がんへの関心が高まっています。

米国では、乳がんの早期発見と予防に焦点を当てた国民の意識向上キャンペーンを行った結果、過去10年間で乳がんによる死亡者数が大幅に減少しました。しかし同時に、早期スクリーニングによって過剰診断が増えているといいます。

そのため、もしもスクリーニングの時点で極めてリスクの低い腫瘍を見分けることができれば、患者さんの体に負担のかかる治療を回避することができ、医師と患者さんの双方にとって有益となるはずです。

超低リスクの乳がん患者を見分ける分子検査

研究チームはまず、2007年にアメリカ食品医薬品(FDA)の承認を受けた「マンマプリント(MammaPrint)」を用い、不活性もしくは進行の遅い腫瘍を見つけられる可能性を調べました。マンマプリントは、乳がんの腫瘍について、再発リスクに関する情報量の多い70遺伝子の活動状態から予後を予測する検査です。

今回の新しい研究に必要な分析資料を得るため、研究チームは乳がんと診断された652人の患者さんの再発リスクを、マンマプリントを用いて20年間にわたって検査し続けました。

被験者となったのは、いずれも抗がん剤タモキシフェンの長期的な臨床試験に参加しているストックホルム乳がん研究グループ(the Stockholm Breast Cancer Study Group)の患者さんです。なお、この臨床試験の被験者はリンパ節に転移していない患者さん1,780人から成っており、乳房切除術か乳腺腫瘍摘出術のいずれかと、放射線治療を受けていました。

抗がん剤使用による生存率の差異は3%

マンマプリントの結果を分析した研究チームは、42%の患者さんの再発リスクを「高い」、58%を「低い」と分類しました。しかしながら、再発リスクが低いとされた患者さんも、5年生存率こそ95%にのぼるものの、後々にがんで死亡するケースが多いことが明らかになっています。

そこで注目したいのが、「低い」のなかでもとりわけリスクが低いと判断された群、いわば「超低リスク」という分類です。被験者全体の15%に当たり、タモキシフェンの抗がん剤治療を2年間受けたか否かかにかかわらず、いずれの患者さんも長期生存していることがわかりました。この「超低リスク」に分類された患者さんに限った20年間の乳がん特異的生存率を見ると、タモキシフェン投与群で97%、非投与群で94%となっています。つまり、抗がん剤治療の有無による差異は3%だったということです。

この研究を経て、研究者らは、早期スクリーニングでは閉経後の女性のうち25%くらいが「超低リスク」に分類される可能性もあるとしています。日本でも、今後もしマンマプリントが認可された場合は、今まで以上に乳がんの個別化医療が進んでいくかもしれません。

医療の進歩に伴う欠点を補う方策に、大きく一歩近づいた今回の研究。乳がんに限らず、スクリーニングによる過剰診断が回避できるようになれば、必要のない手術や化学療法などによる患者さんへの負担がさらに少なくなりそうです。

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