1. 睡眠の質を高める音響刺激「ピンクノイズ」!高齢者の記憶力をアップさせる効果に期待

海外医療トピックス

2017.07.18

睡眠の質を高める音響刺激「ピンクノイズ」!
高齢者の記憶力をアップさせる効果に期待

早ければ30代でも実感する「もの忘れ」ですが、長期記憶障害は高齢者にとってとりわけ深刻な問題です。たとえそれが単なる老化現象だったとしても、できることなら進行を食い止めたいと願う人は多いことでしょう。そんななか、米ノースウェスタン大学が、その長期的な記憶力の低下を防ぐ方法として「眠っている間に与える音響刺激」に注目しています。

徐波睡眠に影響を及ぼす「ピンクノイズ」

これまで各国がおこなってきた多くの研究によって、長期記憶と睡眠の関係性が明らかになってきています。脳は、睡眠中に短期記憶を長期記憶に変換するというのです。そして、急速眼球運動を伴わないノンレム睡眠のなかでも特に眠りが深い徐波睡眠が、その働きにとって重要だと考えられています。睡眠の質は年齢とともに低下しがちであることからも、たしかに「高齢者の長期記憶障害が睡眠に関係している」という説には信憑性(しんぴょうせい)がありそうです。

また、米ノースウェスタン大学が以前おこなった研究では、徐波睡眠中に与える音響刺激が記憶の改善に関連していることが判明しています。そして、その際に使用された音響刺激こそが、「ピンクノイズ」です。ただし、このときの被験者は若い成人であり、高齢者の脳に及ぼす影響の研究としては不十分でした。そこで計画されたのが、ピンクノイズを徐波睡眠中の高齢者の脳波に同調させるという、今回の実験です。

ホワイトノイズと異なる「ピンクノイズ」とは?

ピンクノイズは、ホワイトノイズを低域通過フィルタ(Low Pass Filter: -3dB/oct)に通すことで作成できます。ここでは専門的な特質については深く触れませんが、「ピンクノイズ」という言葉を耳にしたことがない人でも、「ホワイトノイズ」なら聞いたことがあるのではないでしょうか?

ホワイトノイズは、「サー」という静かな雨のような雑音で、「あらゆる周波数成分を一様に含む音」と定義されています。これに対し、ピンクノイズはもう少し深みのある雑音で、「低周波の成分ほど強く含む」のが特徴です。実際にこの音を聞いた場合、「ザー」という滝や海の音を連想する人が多いかと思います。

また、全色光が白色、低周波の光(波長の長い光)が赤色であることから、低周波が強めとなっているこの音を「ピンクノイズ」と呼ぶそうです。

高齢者の長期記憶をピンクノイズが改善

今回の、高齢者に的を絞った研究で実験に参加したのは、60歳から84歳の高齢者13名でした。実験内容は、被験者全員にプラセボとピンクノイズ両方のセッションを体験してもらい、記憶力への影響を調べるというものです。

記憶力については、あらかじめ記憶してもらった内容をどれだけ思い出せるかを試す「メモリーリコールテスト」の結果を比較。テストは、各セッションの「就寝前」と「翌朝」におこないました。就寝中の音響刺激は、プラセボとピンクノイズをそれぞれ1夜ずつ脳波に同調させるものとし、両セッションの間は1週間あけたといいます。

その結果、プラセボを含め、いずれのセッションでも被験者の記憶力に改善が見られました。ただし、ピンクノイズによる音響刺激をおこなったセッションでは、平均改善度がプラセボセッションの3倍もあったとのことです。

つまり、眠っている被験者の脳波にピンクノイズを同調させることにより、長期記憶に重要だとされる徐波睡眠の質が高まり記憶力の改善につながった可能性があります。

今回は小規模な研究であったため、効果の有無を判定するにはより大規模な実験による検証が必要です。もしも、そこで音響刺激の有用性が示されれば、睡眠の質や長期記憶力の低下を少しでも防ぐ方法として、寝室でピンクノイズを流すことが常識となるかもしれません。

海外医療トピックス バックナンバー

この記事を見た方はこんなコンテンツも見ています