1. 人工皮膚を3D印刷できるバイオプリンターを開発!35分で1㎡の移植用皮膚を作成可能

海外医療トピックス

2017.06.09

人工皮膚を3D印刷できるバイオプリンターを開発!
35分で1㎡の移植用皮膚を作成可能

重度の火傷を負った患者さんを助けるために必要な人工皮膚。なんとそれを、たった35分で大量に作成できる3D印刷技術を、スペインのマドリード・カルロス3世大学などの研究チームが開発しました。今回は、同大学のニュースサイトと、海外の医療系情報サイト「メディカル・ニュース・トゥデイ」から、その詳細をご紹介します。

スペインで移植用人口皮膚の3D印刷に成功

マドリード・カルロス3世大学によると、生体工学専門のBioDan社と協力して開発した3Dバイオプリンターのプロトタイプで、移植に適した人工皮膚の作成が可能であると実証したとのことです。この新しい研究結果は科学系専門誌『Biofabrication(電子版)』で発表され、多くの人々の関心を集めています。

この新技術の特筆すべき点のひとつは、なんといってもスピードです。従来の人工皮膚が製造に3週間を要する場合があるのに対し、この3Dバイオプリンターではたった35分で1㎡もの人工皮膚を作成できるといいます。また、製造工程を自動化できるため、納期が早いだけでなく安価であることも大きな利点です。

そのため、3D印刷で作られた人工皮膚は人体への移植のほか、医薬品業界や化粧品業界などに向けた化学物質の試験素材としても利用価値があると考えられています。

表皮と真皮の2層をバイオインクで3D印刷

人工皮膚の3D印刷では生物組織の材料ともいえる「バイオインク」を使用し、従来の人工皮膚と同じく、本物の皮膚を模した2層構造を作り上げます。つまり、最も外側にあたる角質層を含む表皮と、その下にある厚い真皮の2層です。なお、真皮は、コラーゲンを生成する線維芽細胞と、皮膚の弾力性や物理的な強度を高めるタンパク質で構成されています。

研究者によると、「人工皮膚を劣化させないようバイオインクの成分を正しく配合すること」と「バイオインクを正しい位置に塗り重ねること」の2点がこのバイオプリンター開発の要だったそうです。なお、使用されたバイオインクについては、本研究にも携わっているマドリードの研究機関「CIEMAT」が特許を取得しています。

従来の人工皮膚と見分けがつかない完成度

従来の人工皮膚といえば、貯蔵していた細胞を使って製造する産業利用向けのものか、治療の必要な患者さん本人の細胞を培養して作る移植向けのものでした。それに対し、新しい3D印刷技術によって作られる人工皮膚は、素早く製造できるという強みがありながら、きちんとヒトの細胞や成分だけを使用することで高い品質を誇っています。ヒトではない動物性コラーゲンの使用を避け、健康な人間の皮膚のように自らコラーゲンの生成が可能な、文字通り「生きている人工皮膚」を作るのです。

今回誕生した新しい人工皮膚の長期的な効果を見るため、研究チームは試験管だけでなく免疫不全のマウスへの移植実験もおこないました。その結果、試験管とマウス、いずれの人工皮膚も非常にヒトの皮膚に似ていたばかりでなく、従来の方法で作った人工皮膚と比べるとどちらがどちらなのか区別がつかなかったといいます。

2017年2月現在、この新技術による人工皮膚は、ヨーロッパの各機関による承認を待っている段階です。これで人体への移植に適していると保証されれば、瞬く間にヨーロッパ中で利用されることになるかもしれません。

まだまだ一般には手の届かない最先端技術というイメージのある3D印刷ですが、バイオプリンティングの可能性は医療業界のなかで着実に広がっているようです。

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