1. 世界初!最薄「グラフェン」をがん細胞の検出に利用 非侵襲的ながん診断ツールの開発に期待

海外医療トピックス

2017.05.02

世界初!最薄「グラフェン」をがん細胞の検出に利用
非侵襲的ながん診断ツールの開発に期待

試験紙の上に細胞を置くと、がん細胞かどうかわかる。そんな時代が、やってくるかもしれません。米国イリノイ大学が発表した研究結果によると、ナノ素材に細胞を触れさせることで、がん細胞かどうかを区別するメカニズムが明らかになったとのことです。

現在最も薄い素材とされる「グラフェン」でがん細胞を区別

いま世界で最も薄い素材として知られる炭素原子の単一層「グラフェン」。米イリノイ大学が今回、そのグラフェンを利用してがんを早期に診断できる非侵襲的な検査ツールを開発できるとする研究結果を「the journal ACS Applied Materials & Interfaces」で発表しました。

グラフェンはその表面で起きたどんなことにも敏感に反応するため、がん細胞と正常な細胞を接触させたときとでは異なる変化を見せます。つまり、接触している細胞の活動レベルによって反応の仕方が違うため、細胞に触れさせるだけで極度な活動状態にあるがん細胞を見分けることができるというのです。 研究者は2016年初頭にもグラフェンを使った別の研究をおこなっており、当時は研究対象をグラフェンで覆うという実験をしていました。その経験を経て、逆にグラフェンに細胞を置くという、今回の研究につながる発想に至ったといいます。

がん細胞を正常細胞と区別できるグラフェンのメカニズム

グラフェンは、六角形の網目状に連結した炭素原子の層です。また、原子の表面では電子が自由に動き回っており、グラフェンを構成するすべての原子はその電子雲を共有しています。

そんなグラフェンを使って視覚的にがん細胞を見分けることができるのは、原子というものが常に振動しているからです。原子が振動することで生まれるエネルギーは、散乱する光を分析する「ラマン分光法」によって検出できます。細胞とグラフェンの接触面においては、グラフェンの電荷分布が再配列され原子振動エネルギーが変化するため、光の違いを見てとれるのです。

極めて活発ながん細胞は、表面が強く負に帯電し、より多くのプロトン(水素イオン)を放出します。そのため、ラマン分光法を使い解像度300ナノメートルで原子振動エネルギーの変化をマッピングすると、細胞の周りを取り巻く電界がグラフェンの電子雲の中の電子を押し退けた様子が確認できるそうです。そうした可視的な情報を分析し、がん細胞を見分けられるようグラフェンが変化する様相を特定したことが、今回の研究の要と言えるでしょう。

ヒトの脳細胞を用いた試験結果は「非常に有望」

今回学術誌に発表した研究で、研究者は、培養したヒトの脳細胞において正常なアストロサイトと極めて悪性の脳腫瘍グリオブラストーマ(多形膠芽腫)を比較観察しました。結果は非常に有望で、グラフェンを使ってがん細胞を見分けるというこの技術の研究は、現在、マウスモデルを用いたがんの実験に進んでいるとのことです。

この技術は、脳腫瘍の手術後、がんが再発するかどうかを確認する手段ともなりえます。そこまで研究を進めるためには、生検の実験が不可欠です。研究者は、今後グラフェンと相互作用してがん細胞がまだ存在するかどうかを調べるための細胞サンプルが必要となるだろうと話しています。

また、正常か異常か、細胞の活性レベルから疾患を診断するというグラフェン検査は、他のタイプの細胞にも通用する可能性があります。グラム陽性菌や鎌状赤血球など、迅速な検出法として広く利用できるかもしれません。

がん研究において、より手軽でより正確な検査法の研究はさまざまな方向からアプローチが進んでいますが、このグラフェン検査もまた、今後が楽しみな有望株と言えそうです。

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