1. 鉤虫でぜんそく改善!?ジェームスクック大学の研究結果発表

海外医療トピックス

2017.03.10

鉤虫でぜんそく改善!?
ジェームスクック大学の研究結果発表

世界中に多くのぜんそく患者さんがおり、呼吸困難や発作という症状に日々悩まされています。こういった患者さんに対してできる治療には、薬の使用や生活改善、環境改善といったものがありますが、今回はオーストラリアのジェームスクック大学が行った研究をもとに「鉤虫(こうちゅう)」によるぜんそく改善の可能性についてご紹介しましょう。

かぎは鉤虫が分泌するタンパク質

皮膚を突き破り人間の体内に入り込むことができる鉤虫は、裸足で歩いている最中に感染するケースが多く、CDC(米国疾病対策センター)の情報によると、世界全体で5億7千6百万人から7億4千万人程度の感染者がいるそうです。腸内に生息する鉤虫は、感染していることに気がつかない人も多いのですが、人によっては下痢や腹痛、疲労や貧血といった症状に悩まされる場合もあります。

体内に入り込んで害を及ぼすだけ……と、これまでマイナスなイメージが強かった鉤虫ですが、今回オーストラリアのジェームスクック大学が行った研究では、意外なプラス面が発見されたそうです。それは、鉤虫が分泌する「AIP-2(anti-inflammatory protein 2)」と呼ばれるタンパク質が、気道の炎症を抑え、ぜんそくの改善に効果があるのではないかということです。このような結論が出た今回の研究の詳細をみてみましょう。

AIP-2に炎症物質を抗炎症物質に変えるパワーが?

今回の研究では、鉤虫が分泌する「AIP-2」と呼ばれるタンパク質を組み換えたものを、マウスの鼻腔内に投与する方法と注射で投与する2種類の方法がとられました。その後、ぜんそく発症のトリガーとなるアレルゲンにそのマウスをさらしたところ、組み換え型AIP-2は気道の炎症を抑えるという結果が得られたそうです。

なぜそのような現象が起きるかというと、この組み換え型AIP-2がT細胞の炎症性物質を変化させるからだと考えられています。このことが実際に確認できれば、ぜんそくはもちろんですがその他の炎症性の病気の治療にも組み替え型AIP-2を活用することができるようになるのではないか……との期待がかかります。ちなみにジェームスフック大学が行った過去の研究では、組み換え型AIP-2がIBD(炎症性腸疾患)を抑える効果があることがわかっています。このIBDの研究では、鉤虫が分泌するタンパク質がT細胞を炎症性から抗炎症性に変えることが示されました。

ジェームスフック大学では組み換え型AIP-2の大量生産にも成功しているそうです。もし本当に組み換え型AIP-2がT細胞を炎症性から抗炎症性に変える効果をもたらすのであれば、今後多くの疾患の治療方法のひとつとして、このタンパク質を活用して医療を向上させるということを実現できるかもしれません。

ダストマイトアレルギーにも効果発揮

今回の研究ではまた、ぜんそく発作のトリガーのひとつでもある「ダストマイト」に関する調査も行われました。組み換え型AIP-2を、ダストマイトアレルギーを持つ患者さんから採取されたセルに加えた結果、AIP-2がアレルギーの炎症発生の原因となるセルの活性化を抑えたそうです。

ジェームスフック大学の発表では「先進国での寄生虫感染率の低下は、先進国諸国のアレルギー患者や免疫疾患患者の増加の要因となっている可能性もある」と述べられています。また、臨床試験で人々を故意に寄生虫に感染させることで、炎症性疾患への耐性を高めるという研究が行われていることにも触れられています。一般的に「寄生虫=人体に悪影響を及ぼすもの」というイメージがどうしても強くなりがちですが、このようなメリットがある可能性を忘れないことも大切だと言えるでしょう。

まとめ

人々にとっては「厄介者」のイメージしかない寄生虫も、研究をしてみれば実は思いがけないプラスの面を持っている可能性があることを今回の研究は教えてくれます。世界には人々にもたらすメリットが解明されてない生物や物質がまだまだたくさん存在します。「医療改善のヒントはどこに隠れているかわからない」という精神を忘れず、人々の健康や生活環境を改善する可能性のある研究に注目していきましょう。

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