1. 標準治療vsインターネットのリハビリプログラム 化学療法後に見られる認知症状の治療研究

海外医療トピックス

2017.03.03

標準治療vsインターネットのリハビリプログラム
化学療法後に見られる認知症状の治療研究

つらい化学療法を終えたあと、がん生存者である患者さんに認知症状が出始めるケースがあります。これを確実に改善できる治療法はこれまで見つかっていませんでしたが、今回、シドニー大学が新しい臨床試験の結果を発表しました。インターネットを使ったリハビリプログラムに効果が認められたという、その研究内容についてご紹介します。

インターネットのリハビリプログラムで、がん生存者の認知症状が改善

今回、軽度の認知症状を軽減する効果が認められたのは、シドニー大学が研究する独自のプログラム「Insight™」です。このプログラムはインターネットで配信できるため、患者さんそれぞれが自宅で受けられます。

シドニー大学が米臨床腫瘍学会の学会誌『Journal of Clinical Oncology』で発表した研究結果によると、「15週間のプログラム終了時」および「プログラム終了から6カ月後」のいずれの評価においても、標準治療を受けていた被験者よりも明らかに認知症状の改善度が高かったとのことです。
具体的な改善内容には、以下の6点が挙げられています。

  • 認知機能障害を知覚する頻度の低下(被験者による自己申告)
  • 認知機能の向上(被験者による自己申告)
  • 不安やうつ症状の軽減
  • ストレスの軽減
  • 疲労の軽減
  • 生活の質の向上(プログラム終了から6カ月後)

なお、客観的な神経心理学的機能については、独自のプログラムを受けた被験者と標準治療を受けた被験者との間に差は出なかったそうです。

化学療法を受けたがん生存者242人が被験者となった臨床試験

今回の臨床研究では、直近6~60カ月の間に3サイクル以上の化学療法を受けたがん生存者242人が被験者となりました。いずれも、化学療法を終えたあとに認知症状が出始めたと報告していた患者さんです。なお、被験者のほとんどを占める95%が女性(うち89%が乳がん、5%が結腸直腸がん)でした。

臨床試験を始めるにあたり、研究者は被験者全員に電話をかけ、それぞれ日常生活における認知問題を解決するヒントや対策について30分間の個別コンサルティングをおこないました。その後、彼らを無作為に以下のうちいずれかの群に割り当てました。

  1. 認知トレーニング群: 家庭で受けられるオンラインベースの認知リハビリプログラムを受講する
  2. 標準治療群: 腫瘍学的な標準治療を受ける

研究結果の基となったのは、治療後に被験者から集めた認知機能の自己申告内容です。申告内容の評価には、知覚認知機能障害、知覚認知能力、および知覚認知障害が及ぼす生活の質への影響を調べる質問表「FACT-COG」を用いました。また、客観的な神経心理学的機能、不安やうつ病、疲労、ストレスについては、それぞれ別の方法で評価したそうです。

リハビリプログラムの質を上げるために必要な、今後の研究課題

今回の発表は、がん患者の認知機能への介入をテーマとした最大の研究でしたが、課題は現在も山積みとなっています。その一例は以下の通りです。

  • プログラムの効果が長期間持続するかどうかを判断する、より長いフォローアップ
  • グループで取り組むプログラムの可能性など、より高い効果が見込めるリハビリ方法の研究
  • 認知訓練の理想的な期間および用量の調査

研究者のブレイ博士は、認知障害の危険にさらされている患者さんを見分けることができれば、早期介入が可能となり、より良い結果を達成することができるのではないかと指摘しています。さらに、身体的な運動と認知トレーニングを組み合わせることで付加的な利点があるどうかも探っていきたいと述べています。

効果と安全性、コストパフォーマンスなど、さまざまな面において注目されているこのリハビリプログラム。もしかすると、いつか化学療法後の認知症状を改善するための標準治療となる日が訪れるかもしれません。

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