1. VRでアスリートの脳震盪チェック FDA認可のEye-Syncの仕組み

海外医療トピックス

2017.01.17

VRでアスリートの脳震盪チェック
FDA認可のEye-Syncの仕組み

ゲームや映画など、エンターテインメントの分野で注目度が高いVRテクノロジーですが、医療の世界でもその利点を生かしたさまざまな使用用途が編み出され始めています。今回ご紹介するのは、米国カルファルニア州スタンフォード大学が行っている、Eye-Syncと呼ばれるVRヘッドを使って脳震盪(のうしんとう)の診断を行う研究です。

Eye-Syncは2016年春にFDA審査をクリア

今回の研究で使われた「Eye-Sync」と呼ばれる VRヘッドセットは、2016年3月にFDA(米国食品医薬品局)の審査をクリアしたものです。ヘッドセットを開発したのは米国ボストンにヘッドクォーターを構える、ニューロテクノロジー企業のSyncThinkです。使用目的はスポーツ選手の脳震盪を発見すること。院内はもちろん、脳震盪を起こしたその場で、わずか1分で診察を行うことができます。

スポーツ選手が練習中や競技中の事故で頭に衝撃を受けた際に、このVRヘッドセットを顔に取り付けると、脳震盪のサインである目の動きへの影響をチェックできます。その結果を解析することにより、この選手が練習や試合を継続するべきか、病院に行くべきかの的確な判断が行えるようになるのです。
Eye-Syncの優れた点として知っておきたいことに、その携帯性があります。ハードウェアの重さはわずか2.2kgほどなので、スポーツチームの医療スタッフは試合が行われているフィールドにヘッドセットを持ち込み、選手を移動させることなく診察を行うことが可能です。

スポーツ選手の目の動きで脳震盪を診察

アメリカでは近年、アメリカンフットボール選手の脳震盪が問題視されており、脳にダメージを与えてしまう脳震盪をいかに防ぐかが課題となっています。今回行われた研究の基となったのは「脳震盪の可能性があるかを判断するためには、スポーツ選手の目の動きを解析することが重要である」というコンセプトです。スタンフォード大学のアスレティックトレーニング部門の協力のもと、1年半にわたり実際に、フィールドでの脳震盪診察にこのシステムを活用しました。

Eye-Sync開発者の一員であるDr. Jamshid Ghajarは、「目というのは、目視が可能な脳の一部である」「目を見ることで脳がどのような動きをしているかが明確になる」と言います。
目の上がカバーされるようにEye-syncを装着すると、光の点が見えるようになります。その点が時計回りに回転し、その動きを目がどれほど正確に追うことができるかの解析が行われます。解析の結果、目の動きが光の点の動きについていけていなかった場合、「脳が正常に働いていない」という診断につながります。この解析は各選手からあらかじめベースラインデータを採取しておくと、正確度が上がることもわかっています。

これまでは脳震盪の疑いがある選手に対して、医療スタッフが指の先を目で追うように指示をして診察を行うのが一般的でした。しかしこれだと目だけを動かすのは難しく、つい首や頭も一緒に動いてしまうため診察の信憑性(しんぴょうせい)は下がってしまいます。Eye-syncは、こういった問題の解決にもつながります。

VRヘッドセットは今後さらに普及の兆し

VRヘッドセットは、今後さらに市場への普及が進んでいくであろうと予測されています。VRセット自体がよりコンパクトになったり、スマホとの連携が可能になったりすることで、医療スタッフや一般ユーザーがより簡単にヘッドセットを活用できるようになっていくでしょう。

また、VRテクノロジー自体の価格が低下してきていることも、重要なポイントです。現在は調査機関や大学でしか導入できないものが、低価格になることで中学校や高校でも脳震盪の診察に使えるようになっていくかもしれません。そうすれば、より多くの若年層のアスリートたちが、脳震盪を繰り返したり誤診を受けて後遺症が残ったりしてしまうケースが減っていくのではないでしょうか。

まとめ

頭に衝撃を受けてしまったスポーツ選手を、その場で素早く診察できる今回のシステム。脳震盪の診断をより素早く正確なものにして、脳に及ぼす影響を最低限に抑えるための新たなテクノロジーとして、今後のさらなる進化に大きな期待がかかります。

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