1. 米国最新情報!パーソナライズド・メディスンの未来

海外医療トピックス

2016.12.27

米国最新情報!
パーソナライズド・メディスンの未来

今回のテーマ「パーソナライズド・メディスン(個別化医療)」とは、従来の「なるべく多くの人に効果がある薬・治療」という医療基準ではなく、一人ひとりの患者さんの体質や病歴、遺伝的特性に合わせた薬の処方や治療を行っていこうという考えです。米国はすでに国全体で取り組みを行っており、多くの予算をかけて研究を進めています。その内容を学び、今後のパーソナライズド・メディスンの展開を予想してみましょう。

パーソナライズド・メディスンとは?

「パーソナライズド・メディスン」とは、患者さんの心拍数、血液型、代謝率、血圧などのデータや、遺伝子情報、病歴といったさまざまな情報を基に、それぞれの患者さんに合わせた薬や治療を施す医療です。またこれらの情報を組み合わせて病気の予防を行っていくことも、この医療の目的のひとつです。

パーソナライズド・メディスン導入のメリットは「使用・服用する薬による副作用を減らす」「治療の効率を上げる」といったものです。このような医療への注目が高まった理由として、2015年1月に米国オバマ大統領が行った一般教書演説で「Precision Medicine Initiative」が発表されたことが挙げられます。Precision Medicine Initiativeとは個人の遺伝子情報を含む詳細な情報を基に、より精密(precision)な医療を提供することを説いたものです。オバマ大統領のこの演説をきっかけに、近年ではパーソナライズド・メディスンのことを「プレシジョン・メディスン(Precision Medicine)」と呼ぶ機会も増えてきました。

Human Genome Project(ヒトゲノム計画)の現状

パーソナライズド・メディスンの確立にあたり、患者さん一人ひとりの遺伝子に関する情報を得ることはとても重要です。この遺伝子に関する情報の収集に大きく関係するのが、1990年にアメリカで発足したヒトゲノム計画(Human Genome Project:HGP)と呼ばれるもので、これはヒトの染色体の遺伝情報(DNAの塩基配列)を解読しようとする試みです。

HGPによると、ヒトは約2万5百個の遺伝子を持っていると考えられており、それらの配置はヒトゲノム配列により完全に明らかになっています。HGPが作り出したデータは、完成された遺伝子セットがどのような構造になっており、どのようにまとめられ、どのような働きをするかの情報源となっています。プロジェクトの開始時にNIH(米国国立衛生研究所)の遺伝子配列データベースに収められていたDNA塩基数は4,900万。それが2013年には150 兆にまで増えました。

2016年度の「Precision Medicine」予算は2億1千5百万ドル

プレシジョン・メディスンに対し、オバマ大統領は2016年度予算として2億1千5百万ドルを予定しています。そのうちの1億3千万ドルは、NIHが100万人のボランティアから遺伝子データを採取するための費用に充てられています。

また、アメリカ各地の病院でもゲノミクス研究が進められています。シカゴのThe NorthShore Four-Hospital systemには、パーソナライズド・メディスン・センターが設立されました。その目的は10万人の患者さんからDNA サンプルの採取を行うことです。コロラド州ではメディカルスクールやこども病院が6,300万ドルの投資を行い、「the Center for Personalized Medicine and Biomedical Informatics」という新しい課を設立する予定です。ボストンのBringham and Women’s Hospitalでは全てのガン患者さんの初期テストにおいて、遺伝子配列を調べる検査が行われています。

まとめ

米国ではすでに、データの採取やその活用に多くの投資が行われており、パーソナライズド・メディスンに向けて大きなステップが踏み出されています。遺伝子レベルで患者さんの個別化が可能となって、その特性に合わせた治療や予防を行うことができるようになれば、医療の世界はさらなる進化を遂げていくでしょう。日本の医療が世界の医療に遅れをとらないために、今日本の医師や政府、製薬会社にできることは、お互いが協力し合える環境を作り、今後の行く末を定めていくことといえるでしょう。

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