1. 「5秒ルール」はやっぱりダメ?バクテリアが食べ物に移る時間の研究

海外医療トピックス

2016.12.12

「5秒ルール」はやっぱりダメ?
バクテリアが食べ物に移る時間の研究

食べていたものをうっかりテーブルや床に落としてしまった……そんなとき、「5秒(3秒)以内なら大丈夫!」というフレーズを耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。でもこれって、科学的根拠はどうなのでしょう。確かにさっと拾えば、床やテーブル上のバクテリアが食べ物に移るチャンスはないかのように思えます。しかし、米国ニュージャージー州のRutgers University(ラトガース大学)が行った研究により、この「5秒ルール」は信用できないルールであることがわかったのです。

アメリカでは多くの人が食物経由の病気の被害に

米国の疫病対策センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)の発表によると、アメリカ国内で1年間に食物媒介病にかかる人は4,800万人。これは6人中1人の割合です。4,800万人のうち、入院を要するのは12万8千人、死亡に至るのは3,000人となっています。

こういった食物媒介病の原因のひとつとして挙げられるのが、床やテーブル、キッチンカウンターなどの表面から食べ物にバクテリアが移ってしまうクロス・コンタミネーション(二次汚染)と呼ばれる現象です。そしてこのクロス・コンタミネーションを引き起こしている行動のひとつが今回の研究のテーマとなった「5秒ルール」。床やテーブルに落ちた食べ物は、5秒以内に拾ってしまえば、クロス・コンタミネーションは起こらないのか……その食べ物を口にするのは本当に安全なのか……といった問題を調べるために当研究が行われました。

さまざまな食材や接触面でバクテリアの移動率を調べる

調査を開始するにあたり、まず知っておきたいのは「5秒ルール」が安全だと考えられている理由です。その根拠は「バクテリアは移動するのに時間がかかる」というものですが、では本当に「5秒」という時間内でバクテリアは床やテーブルなどの表面から食べ物に移動できないのでしょうか。

この疑問を解決すべく、今回の調査では「ステンレス」「セラミック」「カーペット」「木」などの接触面を用意しました。そこに、サルモネラ菌に似たEnterobacter aerogenes(エンテロバクター・アエロゲネス菌)を塗りつけ、さらに、「スイカ」「パン」「バターを塗ったパン」「グミキャンディー」などの食材を、12.5cmの高さから落として、それぞれに対するバクテリアの移動率について調べました。また、食材がこれらの表面に接触する時間も「1秒未満」「5秒」「30秒」「300秒」とバリエーションを持たせ、短時間の間にバクテリアの量がどれほど増えるのかというデータも採取されました。

バクテリアが最も多かった食材はどれ?

今回の実験では上記の条件を組み合わせて、計128シナリオが作り出されました。それを各20回、計2,560回の計測を行ったところ、バクテリアの移動が1番多かった食材はスイカという結果が出ました。2番目に多かったのはパン、次がバターを塗ったパンで、移動が最も少なかったのはグミキャンディーだったそうです。スイカのように水分が多い食材ほど、短時間でのクロス・コンタミネーションのリスクが向上するということです。また、食材が触れる接触面ごとの差を見ると、タイルやステンレスに比べ、カーペットのほうが移動率は低いという興味深いデータが取れました。木については、結果にばらつきがありました。

では、バクテリアのいるところ(接触面)に食べ物が触れる時間は、その移動率にどのような関係があるのでしょうか? 今回の実験では、触れる時間が長くなるほどバクテリアの移動率が高まることがわかりましたが、時間だけではなく食べ物の性質やそれを落とした表面の状態が移動率に関係することも判明しました。バクテリアの移動率には食べ物の中に含まれている「湿気」が関係しているという結論が出ており、食べ物の接触面や接触時間の条件が変わることにより、バクテリアの移動率は異なります。

まとめ

テーブルやカウンター、床の上には当然ながら目に見えないバクテリアがたくさん存在しています。バクテリアは目に見えない分「落とした食べ物はサッと拾えば大丈夫」と感じる人も、少なくはないかもしれません。でも実際はすでにバクテリアの移動がしっかりと進んでいることが今回の調査で明らかになりました。「5秒ルールがあるから大丈夫」という考えはちょっと再考の必要がありそうです。

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