1. 昏睡から目覚める患者さんの脳をジャンプスタート!超音波の新しい利用法が話題に

海外医療トピックス

2016.11.29

昏睡から目覚める患者さんの脳をジャンプスタート!
超音波の新しい利用法が話題に

昏睡状態(こんすいじょうたい)の患者さんに施す処置といえば、主に物理的な健康維持が頭に浮かびます。しかし、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)が、「目覚め」に関連する画期的な治療法とその結果を発表し話題となりました。UCLAのニュースルームより、「超音波で脳をジャンプスタートさせる」という研究についてご紹介します。

脳をジャンプスタート!?超音波の新たな可能性に注目

2016年8月、UCLAの研究チームは昏睡状態の患者さんの脳に超音波で刺激を送るという新たな治療アプローチの結果を発表しました。深刻な脳傷害の治療を目的として超音波が使われたのは、今回がはじめてのことです。この研究論文の筆頭著者であるマーティン・モンティ博士は、処置を受けた患者さんが見せた回復ぶりについて「あたかも神経細胞をジャンプスタートしたかのようだった」と語っています。

治療例報告の患者さん第1号となったのは25歳の男性。昏睡状態から目覚めつつあった彼の視床に超音波を送った結果、驚くべき機能回復が見られたとのことです。もちろん、自然回復と超音波治療のタイミングが偶然重なった可能性も排除できないため、効果については引き続き研究が必要になります。しかし、特定の状況にある昏睡の患者さんの目覚めを超音波で支援できるとすれば、医療業界にとって大変有用に違いありません。

低強度の集束超音波で視床を刺激する治療法

今回の治療に使われたのは、低強度の集束超音波による脈動です。この超音波技術は研究の共著者であるアレクザンダー・ビストリストキー博士が開発したもので、超音波はコーヒーカップの受け皿ほどの大きさの装置から発せられます。その装置は小さな球状の音響エネルギーを作り出し、特定の脳領域をねらって脳組織を刺激することができるとのことです。モンティ博士は、この装置が放出する超音波は従来のドップラー超音波よりもエネルギーが小さいため、安全性が高いと考えています。

今回の治療では、男性の頭の側面にこの装置をつけて視床にねらいを定め、10分間に30秒の超音波を10回当てました。当初は意識が戻る最小限の兆候しか示していませんでしたが、その治療後1日も経たないうちにこちらの問いかけに対する反応が大きくなり、3日後には完全に意識を取り戻したそうです。その頃には言葉も完全に理解し、うなずいたり首を振ったりして「はい」「いいえ」という意思の疎通ができるようになり、医師とこぶしをぶつけ合ってあいさつをかわすこともあったといいます。

昏睡状態を目覚めさせる未来の治療法をめざして

昏睡状態からの目覚めに視床の働きが重要であることは知られていますが、これまで脳の深部に刺激を送るには、リスクの高い外科手術で視床に直接電極を設置する必要がありました。それに対し、超音波によって視床に直接刺激を送る方法には、侵襲性がありません。

UCLAは、この低強度超音波による治療法を2016年秋から何人かの患者さんに試用すると発表しています。それに効果が認められた場合は、持ち運びにも便利なヘルメット型装置の開発も視野にいれているとのことです。植物状態やほぼ意識不明の患者さんに対してこの装置が使用できるとなれば、安全面においても資金面においても、手の届きやすい「目覚め支援治療」になることでしょう。

患者さん本人はもちろん、長期間にわたってご家族にも大きな負担がかかる昏睡。果たして、超音波はその打開策となりうるのでしょうか? この新しい技術の有効性を証明する今後の試験結果に期待が高まります。

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