1. その脳のトレーニングは「効く?」「効かない?」認知症の予防効果が証明されたゲームとは

海外医療トピックス

2016.11.22

その脳のトレーニングは「効く?」「効かない?」
認知症の予防効果が証明されたゲームとは

「物忘れがひどくなってきた」「知っているはずの言葉がスムーズに出てこない」など、加齢に伴い脳の働きが鈍くなることを実感し、認知症予防を目的として脳のトレーニングを心掛ける人が増えています。

しかし、数ある「頭の体操」は、効くものと効かないものがあり玉石混交(ぎょくせきこんこう)です。そこで今回は、米国心理学会の年次総会で南フロリダ大学が発表した研究結果をご紹介します。

脳のトレーニングゲームのほとんどは効果が不明

計算やパズルなど、多くの企業が脳のトレーニングをうたった製品を提供しているものの、残念ながらどれも脳の老化防止に対する効果は証明されていません。また、なかには「頭の体操」のためのゲームなどどれも同じであると考えている人もいるようです。

南フロリダ大学のジェリー・エドワーズ博士は、米国心理学会の年次総会でその現状を指摘し、彼女が研究対象とした特定のトレーニングについて認知症防止に効果が認められたことを発表しました。

そもそもこれまで「頭の体操」の効果が証明されていないのは、過去におこなわれてきた研究において、きちんと的を絞った分析が欠けていたからかもしれません。そこでエドワーズ博士の研究チームは、特定の脳の訓練がもたらす効果に焦点を当てた「処理速度の訓練とその効果」についての論文50本以上を査読し、系統的レビューとメタ分析をおこないました。さらに、今回の研究のために実施した10年にわたる長期的なランダム化試験は、このテーマにおける最大規模の試験であったとのことです。

処理速度を鍛えるゲームは認知症予防に効果あり

今回の研究によって、認知症予防に対する効果が晴れて実証済みとなった「処理速度の訓練(ゲーム)」とは、どのようなものでしょうか?「視覚的注意」や「的確な反応」の速度と精度を向上させるために設計されたゲーム内容の具体例は、以下の通りです。

  • 1. 画面の中心に現れる物体がどのようなものかを識別する
  • 2. 1.をおこなうと同時に、周辺視野に現れる複数の物体の中から、あらかじめ決められたターゲットを見つけ出す

このゲームを何度もくり返すと、たとえ見分けにくいターゲットでもだんだんと速く見つけられるようになります。こうした処理速度の訓練を受けたランダム化試験の被験者には、トレーニングの結果として以下のような多くの分野で改善が見られたとのことです。

  • 注意力や気配り
  • 抑うつ症状
  • 感情のコントロール
  • 健康に関連するQOL(Quality of Life)
  • 機能的パフォーマンス
  • 自動車の運転
  • 今後必要と予測される医療費

以上の項目だけを見ても、高齢者が処理速度の訓練に取り組んだ場合、より健やかで質の高い生活の維持に役立つことがわかります。

長期にわたる「頭の体操」の影響を調査

10年間のランダム化試験をおこなった今回の研究は、「Advanced Cognitive Training for Independent and Vital Elderly(自立し活力にあふれた高齢者のための高度な認識訓練)」の頭文字と「アクティブ」をかけてACTIVE研究と称されています。
被験者は65歳から94歳の高齢者2,832人で、うち76%が女性でした。この試験において、処理速度を鍛える脳のトレーニングを5週間の訓練期間中に11から14セッションこなした被験者は、認知症の発症リスクが10年間で48%下がったという結果が出ています。
これにより、処理速度を鍛える訓練が認知機能の低下を防ぎ、認知症の予防にもはっきりと影響することが判明しました。

ただ頭を使うゲームというだけでは効果が不明な「頭の体操」。どうせなら、効果が証明されているゲームに取り組みたいと考える人もいることでしょう。認知症の予防を目的として毎日脳のトレーニングに励んでいる患者さんには、処理速度を鍛えるゲームをおすすめするとよさそうです。

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