1. 大腸がんの術後の治療向け:MIT開発のヒドロゲルパッチとは

海外医療トピックス

2016.10.18

大腸がんの術後の治療向け:
MIT開発のヒドロゲルパッチとは

がんの治療を行う際に、がん細胞の摘出手術は無事終わっても、それでおしまいというわけにはいきませんよね。きちんと全てのがん細胞を取ることができたか……再発の心配はないのか……患者さんやその家族、そして医師にとって、まだまだ気をぬくことはできない期間が続きます。この期間の心配を少しでも減らすことができるよう、現在MIT(マサチューセッツ工科大学)がヒドロゲルパッチの研究開発に挑戦しています。その内容を紹介しましょう。

3種類の治療法を組み合わせる

MITで開発が進んでいるヒドロゲルパッチは、薬剤による治療、遺伝子セラピー、光ベースの治療の3種類を組み合わせて患者さんに施すものです。このパッチを大腸がん部位に手術後または手術前に貼り付けておくことにより、その部位の治療をより効果的に行うことが期待できます。

パッチには金ナノロッドが含まれており、治療部位に対して近赤外放射を行うことで、この金ナノロッドを温めます。その熱によって腫瘍(しゅよう)を小さくしたり、破壊したりすることが目的です。また、この金ナノロッドにはキモセラピーという薬が入っており、温められたときに、治療対象の腫瘍やその周りの細胞に向けて薬が放出される仕組みになっています。また、このパッチには、近赤外放射で温まらない金ナノ粒子が含まれますが、これによりRNA遺伝子治療を施し、がん遺伝子をおとなしくさせます。

全身治療の副作用軽減の可能性

現在のがん治療は、キモセラピーのように全身を対象としたものが主流です。今回パッチの開発に関わっているMIT Institute for Medical Engineering and Science(IMES)の主任科学研究員であるNatalie Artziさんによると、このパッチのように局所的な治療を行うことで、キモセラピーのように全身を対象に行う治療の副作用を減らせる可能性もあるということです。

また、キモセラピーのように全身を対象にがんの治療を行った場合、投与量に対してがん部位に実際到達するのはほんのわずかな量であるというデータもあります。MIT Newsが発表した記事によると、マウスを対象に行った実験では、このように全身を対象に投薬を行った際に治療対象の腫瘍に到達した薬は投薬量のわずか0.7%だったそうです。ところが今回の研究のように、薬の全身投与の代わりに治療部位に直接パッチを貼る方法を用いれば、薬をがん細胞に直接施すと同時に、転移が起こらないよう働きかける効果も期待できるのです。

使用法は2種類

今回開発されているパッチの使い方には「手術前」「手術後」の2パターンがあります。
1つは、手術前にがん部位にあらかじめ貼っておくことで、手術のときまでにがんをなるべく小さくしておく方法で、「ネオアジュバント療法」の一種です。もう1つは、術後にがん細胞摘出部位にパッチを貼る方法。これは、がん遺伝子が周りの健康な細胞をがん細胞に変えてしまうことを防ぐことが目的です。筒状になっている大腸からがん細胞を摘出し、その部分の筒の内側にパッチを貼っておくことで、そこにがんの再発を引き起こしそうな細胞を残さないようにします。マウスを使った実験では、がん細胞摘出後にパッチを貼らなかった場合のがんの再発率は40%だったのに対し、貼った場合には完全寛解(かんぜんかんかい)するという結果が出ました。

世界からがんが消える日を目指そう

がんの予防や治療には、世界各国の機関がさまざまな取り組みや研究を行っています。それぞれの機関の研究が論文や学会などでシェアされることにより、他の人にとっての新たな研究やひらめきにつながっていく……こういったポジティブな関係を築くことができれば、医療の世界ががんを克服する日はそう遠くないかもしれません。これからも意欲的に多くの情報を吸収し、全世界からがんが消える日を目指して研究を続けていきましょう。

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