1. ケンブリッジ大学が研究中の「人工すい臓」最前線 2018年までに利用可能となる見込み

海外医療トピックス

2016.10.05

ケンブリッジ大学が研究中の「人工すい臓」最前線
2018年までに利用可能となる見込み

疾患に伴い臓器がうまく働かなくなってしまった患者さんにとって、インスリン注射や人工透析などの生きるために不可欠なケアはあらゆる意味で大きな負担です。

臓器に何らかの支障がでたとしても「新しい人工臓器に交換するだけ」という技術の開発を待ち焦がれている人は少なくありません。そんななか、ケンブリッジ大学で長らく研究している「人工すい臓」について、ついに完成のめどが立ったことを発表し話題になっています。

インスリンポンプとは異なる「人工すい臓」とは

1型糖尿病患者のための人工すい臓を研究しているケンブリッジ大学の研究者たちが、人工すい臓の利用が2018年までに可能となる見込みであることを、欧州糖尿病学会の学術誌「Diabetologia」で発表しました。

糖尿病患者さんにインスリンを投与する装置にはインスリンポンプがありますが、血糖値測定器とは別になっているため、投与するインスリンを臨機応変に調節する場合、血糖値測定器でこまめに血糖値を測り、結果に合わせてその都度、インスリンポンプの設定を変えるしかありません。

これに対し、人工すい臓は血糖値測定器とインスリンポンプの2つが統合されており、動作とフィードバックを繰り返す「閉ループ」で機能します。つまり、インスリンの投与、血糖値の測定、投与量を調節しての再投与という、本来すい臓が繰り返しているサイクルを自動的に行うのです。

6~24か月の長期臨床試験が進行中

アメリカ科学振興協会の科学系ニュースサイト「EurekAlert!」によると、研究チームは6~24か月という長期型の臨床試験を進行中とのこと。6~24か月という長期型の多国間臨床試験がすでに始まっており、被験者には子どもも含まれています。

これとは別に、「子どものための糖尿病キャンプ」や「家庭での実生活」といった設定ですでに行われた臨床試験もあります。こうした試験の多くでは、理想的な血糖濃度の目標範囲に持っていくまでにかかる時間の短縮や低血糖症を回避する血糖管理において、従来の方法よりも優れた結果がでているようです。

この人工すい臓が完成すれば、血糖値を監視し続けるという煩わしさや、糖尿病と合併症に対する不安から解放され、患者さんの生活の質は、大きく向上するに違いありません。人工すい臓なら臓器移植の大手術に伴うリスクや免疫抑制剤の投与を回避できるという利点もあり、心強い選択肢となるでしょう。

安全な通信プロトコルの実装が必須

臨床試験が順調に進み、一般利用の開始は目前だと発表された人工すい臓ですが、研究チームはさらなる改善に取り組んでいます。

改善点1:使用するインスリンの作用速度
即効性のインスリンアナログでさえ、血中濃度がピークに達するまでには投与から0.5~2時間かかります。これでは激しい運動時に間に合わない可能性があるため、さらに速く作用するインスリンアスパルトアナログや本来は吸引型のインスリンも研究するなど、改善を試みるようです。
改善点2:グルコースモニターの信頼性・利便性・精度
血糖値管理の精度をできる限り向上させるために、人工すい臓の中枢である、閉ループシステムのソフトウエアの改良を続けています。
改善点3:システムをハッキングから守るサイバーセキュリティー
閉鎖ループ装置には、無線通信プロトコルや非公認のデータ検索による妨害といった、「サイバー攻撃」に対するセキュリティーの脆弱(ぜいじゃく)さに対する懸念がつきまといます。研究者は、人工すい臓の完成には安全な通信プロトコルが必須であるとしています。

1型糖尿病と闘う患者さんの生活を一変させる可能性を秘めた、人工すい臓。2018年というと、そう遠い未来の話ではありません。なるべく早く、日本の患者さんの手にも届くようになってほしいものです。

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