1. 総合失調症の「妄想」治療に効果期待!バーチャルリアリティを利用した治療研究

海外医療トピックス

2016.09.27

総合失調症の「妄想」治療に効果期待!
バーチャルリアリティを利用した治療研究

総合失調症の患者さんが持つ「妄想」の治療法には、インターベンション(専門家の介入)、薬、サイコセラピーなど様々なものがあります。そして現在、オックスフォード大学がバーチャルリアリティ(VR)を使った新たな治療法の開発に挑戦しているそうです。今回は、その研究に関する情報を見てみましょう。

研究の主旨は患者さんに安心感を与えること

重度の「妄想」を抱える患者さんは人口の1~2%程度。一般的には統合失調症などの精神疾患による主な特徴として現れます。患者さんの多くは他人に対し不信感を抱えており、「自分を傷つけようとしている」という妄想に悩まされています。

オックスフォード大学が行った今回の研究で実践されたのは、この妄想をVRのテクノロジーによって治療できないかを調べること。妄想の中で他人に対する不信感を抱えている患者さんに、VRを使った安全な世界の中で「他人は安心できる存在だ」と学び直してもらうことが研究の主旨でした。

患者さんの不安要素にあったシナリオでトレーニング

今回の研究に参加した患者さんは30名。それぞれが「怖い」と感じているシチュエーションに沿ったシナリオをもとに、VRが作成されました。シナリオには「エレベーターのドアが開き、そこにたくさんの人が乗っている」や「公共交通機関を使って移動する」などがありました。


画像をクリックすると動画が再生されます

次に、患者さんは2つのグループにランダムに分けられ、こうしたシチュエーションが起こった場合の対応方法について、それぞれ別のアドバイスを受けました。1つ目のグループは「通常どおり守りの態勢」で対応するように指示され、もう1つのグループは守りの態勢を解いて相手(コンピューターで作られたキャラクター)に近づき、目を合わせるように指示されました。
患者さんが実際にVRの世界に居たのは30分。その時間の中で何度も同じシチュエーションを繰り返し体験しますが、繰り返すたびに電車やエレベーターの中にいる人数が増える設定となっていました。

わずかな時間でも大きな効果

今回の研究は各患者さんに対し30分という限られた時間で行われましたが、その結果は注目に値するものだったと報告されています。アドバイスによって守りの態勢を解いたほうのグループでは、妄想が大幅に減少。テスト終了の時点で、50%の患者さんから重度の妄想の症状が消えたそうです。そして、守りの態勢を解かなかったグループでも20%の患者さんに同じ効果が見られたといいます。「今回の研究は少人数を対象に短期で行われたものだが、その結果はVRを使った妄想の治療というアイデアに対し、大きな可能性を与えてくれるものである」と結論づけられました。

またオックスフォード大学では、こういった治療をより一般的なものにするべく、システムの開発も行われています。コンピューターサイエンス学部では、VRのヘッドセットをつけた人々が広い部屋の中を自在に歩き回りながら、高画質環境を体験するというシステムの開発に取り組んでいます。このシステムを、低価格の一般消費者向けVRヘッドセット「Oculus Rift」などで使用できるようにすることで、より多くの人々がVRを使った治療にアクセスできるようになるということです。

医療界でのVR活用が秘める可能性

妄想のように、治療の一環として「日常生活に慣れる」「環境に慣れる」ことが必要な場合、実際に社会に出て治療を行うというのは困難なものです。その対策として、患者さんが安全な環境でリハビリや治療を行うことができるVRの世界を活用することは、理にかなった選択であるといえるでしょう。今後VRを使った治療が妄想以外の病気の治療にも広がり、多くの患者さんの役に立つよう願っていきましょう。

海外医療トピックス バックナンバー

この記事を見た方はこんなコンテンツも見ています