1. 世界初!マウスの網膜神経節と脳のリンク復元に成功 緑内障治療の有力な手掛かりに

海外医療トピックス

2016.09.13

世界初!マウスの網膜神経節と脳のリンク復元に成功
緑内障治療の有力な手掛かりに

失明を免れない緑内障は、現在のところ不治の病とされています。しかし今回、アメリカのスタンフォード大学率いる共同研究チームが、盲目に近い状態のマウスを用いた実験において、視力に関係する重要なメカニズムの復元に成功しました。関係者やメディアは、この技術が失明から視力回復を探る有力な手掛かりになるのではないかと注目しています。

マウス実験で網膜神経節と脳とのリンクの復元に成功

網膜神経節細胞と脳のさまざまな部位との連絡役を担う「リンク」の崩壊は、永久的な視力喪失をきたす原因の1つです。スタンフォード大学が学術誌「ネイチャー・ニューロサイエンス」に発表した内容によると、研究チームは今回、マウス実験においてその軸索の再生に世界で初めて成功したといいます。

実験に使われたマウスは、実験開始時点では片目が緑内障に似た状態だったそうです。緑内障は、白内障に続く2番目に多い失明の原因でありながら、外科手術という有効な治療法がある白内障とは異なり、治療法がまだ見つかっていません。

緑内障は視神経にかかる過度な圧力によって起こる疾患で、全世界の推定患者数は約7000万人です。また、失明につながる可能性がある視神経損傷の原因には緑内障以外にも、ケガ、網膜剥離、下垂体腫瘍、脳の癌など多種多様なものがあります。

今回の実験で成功したリンク復元のメカニズム

今回の研究に携わったアンドリュー・ヒューバーマン博士は「脳の3分の1以上が視覚情報の解析を専門としており、網膜と脳をつなぐ神経の軸索を切断することは、『視力のプラグ』をコンセントから引き抜くようなものだ」といいます。
哺乳類では、唯一の例外として知られる嗅覚神経細胞を除き、脳や脊髄の軸索が損傷すると自力でそれを再生できませんが、中枢神経系の外に位置する軸索は再生します。

研究者が片目の見えないマウスに対して行った、軸索の再生を試みる実験の内容は次の3つです。

  • 1. 白黒の格子が動く画像による高コントラスト視覚刺激を与える
  • 2. 脳の発達時に重要な役割を果たすものとして知られるmTOR経路を刺激する生化学的な操作を行う
  • 3. 1と2を並行して行う

この結果、実験3の「1と2の両方」を集中的に施したときのみ、軸索の再生に成功したそうです。
観察の結果、視神経が切断されている際、神経節細胞の軸索が破壊された状態でもなお、光受容細胞とそこから神経節細胞までのリンクは無傷で残っていることが分かりました。さらに興味深いことに、軸索が再生すると、まるでGPSでも備わっているかのように壊れる前の軸索が元々通っていた経路を必ず通っていったといいます。

緑内障の治療法に向けて研究を継続

3週間の治療後に調べたところ、マウスの失明していたほうの目の視力がいくばくか回復していました。例えば、天敵である鳥の攻撃を模した徐々に大きくなる丸い陰をそちら側の視野に入れたところ、実験前とは異なり物陰に隠れる行動に出たのです。

ただし、上記を含むいくつかの視力テストで「見える」という反応を見せたマウスも、細部を見る力があるかどうか調べる検査では失敗したといいます。これは、リンクの再生に成功した軸索とそうでないものがあり、まだ、脳で細かな解析を行うには視覚情報が十分でない証拠だといえるでしょう。

ヒューバーマン博士は、「リンク再生に成功する軸索の数をどこまで増やせるか。また、約30種ある網膜神経節細胞のサブタイプの復元も手掛けられるか。この技術のさらなる進歩は、その2つにかかっているだろう」との考えを示しています。

果たして今回の成功が、緑内障をはじめとする疾患によって失明した患者さんに光を取り戻す治療法確立につながるのでしょうか?今後の研究とその結果に期待が高まります。

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