1. 細菌・ウイルス・寄生虫に合わせてカスタマイズ可能!MITが新しいタイプのワクチンを開発

海外医療トピックス

2016.09.06

細菌・ウイルス・寄生虫に合わせてカスタマイズ可能!
MITが新しいタイプのワクチンを開発

夏が終わり過ごしやすくなると、かえって増える食中毒。インフルエンザをはじめとする流行病が突然まん延し、右往左往するケースも少なくありません。そんななか、マサチューセッツ工科大学(MIT)が新しいタイプのワクチンを開発したと米国で話題になっています。今回は、海外の科学技術系情報サイト「Phys.org」が取り上げた、カスタマイズ可能なワクチンについてご紹介しましょう。

流行病に迅速に対応できる新しいタイプのワクチンを開発

MITが今回開発した、新しいタイプのワクチンが誇る最大の利点は、迅速に製造できることです。鶏卵を使って培養するインフルエンザワクチンをはじめ、一般的に、ワクチンの製造には数か月を要します。しかし、この新型ワクチンはわずか1週間で製造可能だというのです。

例えば、現状では何らかの細菌感染が突発的に流行した場合、ワクチンが製造されて予防や治療が本格的に開始される前に感染が拡大してしまう事態を免れられません。これに対し、今回の研究に携わったMITのダニエル・アンダーソン准教授は、「この、ナノ製剤のアプローチなら、わずか7日で新しい病気に対するワクチンが製造でき、突発的な病の流行への対処やワクチンの迅速な改良に対応しうる可能性があります。

この新しいタイプのワクチンは「RNAワクチン」と呼ばれ、DNAの遺伝子情報を運ぶmRNA(メッセンジャーRNA、伝令RNA)が要となっています。RNAは標的とするウイルスや細菌をプログラミングする機能を有し、宿主細胞にタンパク質を大量に複製するよう促すため、従来のタンパク質だけが主体のワクチンを与えたときよりも強い免疫反応を引き起こすという点が魅力です。

プログラミング可能なRNAワクチンのメカニズム

mRNAをワクチンに利用するという考え自体は特に目新しいわけではなく、30年ほど前からあったといいます。長年その開発を阻んできた安全性と効果の問題をクリアするために、研究員の1人であるオマール・カーン博士は、「デンドリマー」の名で知られている樹状高分子からつくられたナノ粒子でRNAワクチンを包むことにしました。

負に帯電しているRNAに対して、一時的に正に帯電させることができるデンドリマーは強く結びつくため、安全にワクチンを届けるために「パッケージ化」する素材として適しています。また、デンドリマーで包むことにより、最終的な構造の大きさとパターンをコントロールできます。こうした結果、ワクチンをウイルスに近い大きさおよび同じタンパク質の表面にし、細胞への侵入を可能にするのです。

さらに、RNAの配列をカスタマイズすれば、ワクチンが体内で生成するタンパク質(すなわち標的とするウイルスや細菌など)についてはあらゆる種類に対応できるとも話しています。

マウス実験では100%有効という結果に

RNAワクチンは筋肉注射によって投与されます。RNAが細胞内に入ると、免疫系のT細胞応答と抗体応答の両方を刺激します。NAと異なりRNAは宿主のゲノムに統合されないため突然変異を起こす危険がなく、DNAワクチンよりも安全性が高いのではないかと考えられているようです。

研究チームがこれまでに行ったマウス実験では、1度の投与でエボラ、H1N1インフルエンザ、トキソプラズマ原虫といった実際の病原体の症状が治まりました。
これまでに手がけてきたワクチンに加え、研究者は、ジカウイルスとライム病のためのワクチンを製造することを希望しています。同時に、腫瘍を見つけ破壊するよう免疫細胞に指示する、がん治療のためのワクチン生成にも取り組んでいるとのことです。

医療の進歩が目覚しい現在でも、毎年のように発生する何らかのパンデミック。病気の流行に迅速に対応できるこの新しいタイプのワクチン研究に期待が高まります。

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