1. 長時間作用型オピオイドの危険性 最新の研究で死亡率への影響が明らかに

海外医療トピックス

2016.08.16

長時間作用型オピオイドの危険性
最新の研究で死亡率への影響が明らかに

2016年4月、1980年代の大物ミュージシャン「プリンス」が急逝し世間を騒がせました。6月に公表された検死結果によると、死因はオピオイド(フェンタニル)の過剰投与による中毒死であったとのことです。

米国医師会雑誌(JAMA)には、長時間作用型オピオイドの危険性を調べた研究が発表され話題となっています。

長時間作用型オピオイド摂取で死亡率がアップ

JAMAの315巻22号に発表されたのは、「長時間作用型のオピオイドの使用と死亡率」の関係を調べた研究論文です。医療系情報サイト「メドスケープ」によると、米国テネシー州のヴァンダービルト大学が行ったこの研究は45,000件以上の処方事例を調べた大規模なものであったといいます。

これにより、非がん性疼痛で長時間作用型オピオイドを処方されている患者さんは、ガバペンチンや三環系および四環系の環式抗うつ薬を含むその他の鎮痛薬を処方されている患者さんと比べて、死亡率が高くなっていることが明らかになりました。

死亡率の上昇が顕著なのは投薬開始から1か月間で、なんとその死亡リスクはオピオイドを処方していない場合の4倍に達するといいます。今回の研究チームの発表によると、長時間作用型オピオイドの使用は患者さんの総死亡率が90%上昇していることと関連していたそうです。

2万件以上の処方データを研究した結果

中等度から重度の疼痛のために処方された長時間作用型オピオイドとほかの薬剤との総死亡率を比較するため、研究者は低所得者向け医療扶助(メディケイド)利用患者のデータを分析しました。研究対象となったのは、1999年から2012年の間に非がん性慢性疼痛の治療を受け、なおかつ緩和ケアや末期ケアを受けていない患者です。

まず、研究チームは、長時間作用型オピオイドの新規処方事例23,308件と対照薬の新規処方事例131,883件を確認し、傾向スコアによって22,912組をマッチングしました。マッチングされた患者さんの平均年齢は48歳で、60%が女性でした。診断内容は背部痛(75%)、筋骨格痛(63%)、腹痛(18%)などが多く、最もよく処方されている薬剤はモルヒネ(徐放)、ガバペンチン、アミトリプチリンとのことです。

平均追跡期間
長時間作用型オピオイド176日間、対照薬128日間
死亡者数
長時間作用型オピオイド185人、対照薬87人
死亡のハザード比
1.64(ただし、治療開始後30日間だけを見ると4.16)

分析によると、長時間作用型オピオイドを処方されている患者さんの間で死亡リスクが増加したのは、主に院外死亡のためでした。また、長時間作用型オピオイドを服用している患者さんは、対照薬を服用している患者さんと比べて心血管死のリスクも高くなることがわかったそうです。

専門家が語る慢性痛ケアの今後

エール大学のウィリアムC.ベッカー博士は今回の研究を称賛し、長時間作用型オピオイドは低用量でも効果が期待できるのではと考えた上で、低用量の長時間作用型オピオイドが開発されない限り処方を避けるべきであると述べています。
さらに、米国においては、長時間作用型オピオイドの代替医療はいくつも存在いているのに、それらは健康保険でカバーされていないという問題点も指摘しました。

また、今回の研究論文の筆頭著者であるウェインA.レイ博士は、併存疾患が多い患者さんや重病の患者さんほど、長時間作用型オピオイドの投与開始は慎重に検討すべきだと考えているようです。疾病管理予防センターは今回の結果を深刻に受け止め、現行のガイドラインを強化すべきだという見解を博士は述べています。

オピオイドは、慢性痛に苛まれている患者さんに施す最終手段のひとつに違いありません。しかし、処方にあたってはこれまで以上に慎重に検討する必要がありそうです。

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