1. コレステロール値の検査前に絶食は不要?欧州が推奨する新スタンダードとは

海外医療トピックス

2016.07.26

コレステロール値の検査前に絶食は不要?
欧州が推奨する新スタンダードとは

コレステロール値や中性脂肪値などの血液脂質検査をおこなうには、患者さんに前日から食事を制限してもらうべきであるという考えが一般的です。
しかし、ヨーロッパの専門家チームが今回、従来の常識を覆し、「ほとんどの場合は絶食不要である」と発表し話題となりました。
海外の医療情報サイト「メディカル・ニュース・トゥデイ」に取り上げられた、その経緯をご紹介します。

30万人を超えるリサーチ結果から判明したこと

今回の発表をおこなったのは、欧州動脈硬化学会(EAS)と欧州臨床化学・臨床検査医学連盟(EFLM)の専門家チームです。彼らは、デンマーク、アメリカ、カナダでおこなわれた最新の研究結果を受け、この見解に到達したといいます。

それら三か国の研究においてリサーチ対象となったのは、合計30万人を超える人々でした。その大規模なリサーチの結果、血液脂質検査前に「絶食した場合」と「絶食しなかった場合」とでは、検査結果がほぼ同じであることが判明したのです。

デンマークでは2009年から絶食しない検査方法が採用されているものの、それ以外の国では、検査前に少なくとも8時間は絶食するよう推奨されています。そんななか、大々的に世界へ向けて「ほとんどの患者には中性脂肪値の検査前に絶食が必要ない」と発表されたのは今回が初めてです。

検査前に絶食が必要なケースと不要なケース

血液脂質検査前に絶食が必要なケースと不要なケースについて、メディカル・ニュース・トゥデイは、今回の研究論文をもとに以下のようにまとめています。

検査前に絶食が必要な場合

血液脂質検査の前に絶食する必要があると考えられるのは、たとえば次のようなケースです。

  • 絶食なしでおこなった血液脂質検査の結果が、5 mmol/L (440 mg/dL)以上の場合
  • 患者さんが高中性脂肪血症であると既に判明している場合
  • 特定の薬剤の効果を観察する場合
  • 空腹時血糖も調べる場合(ただし、これは絶食不要のヘモグロビンA1c測定に置き換え可能)
検査前に絶食が不要な場合

絶食せずにおこなう血液脂質検査は、ほとんどの患者さんに推奨されます。特に以下のようなケースです。

  • 患者さんが血液脂質検査を初めて受ける場合
  • 心血管系疾患発症リスクを調べる場合
  • 患者さん自身が絶食しなくて済む血液脂質検査を希望された場合
  • 患者さんが子供またはお年寄りの場合
  • 患者さんが安定した薬物療法を受けている場合
  • 患者さんが糖尿病の場合
  • 患者さんが急性冠症候群(ACS)で入院されている場合(ただし、ACSにより脂質濃度が下がっている可能性があるため、のちに再検査が必要)

絶食なしで血液脂質検査を受けてもらえる利点

何時間も食事を断つとなると、多くの人々が検査を躊躇(ちゅうちょ)しても不思議ではありません。絶食せずに血液脂質検査をするデンマークでは、特に、子供や高齢者、糖尿病患者、労働者に検査を受けてもらいやすいという手応えがあるようです。
なにより、検査が必要と判断された日に採血できるため、患者さんは別の日に予約を取って再度来院する必要がありません。それに伴って、医療関係者も、検査に来てもらうためのスケジュール調整、電話やメールによる案内業務、フォローアップの対応といった業務から解放されます。

コペンハーゲン大学のボルゲ・ノルデストガード博士は、「絶食不要の検査のおかげで、人々は予防治療を受けやすくなり、世の人々のおもな死因である心臓発作や脳卒中を減らすことにつながるだろう」と話しています。
患者さんの個々のケースにおいて、検査前の絶食が必要かどうかを慎重に見極める。その前提の下で適用される限り、この新しいスタンダードは医師にとっても患者さんにとっても有益だと言えそうです。

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