1. 味選びにも危険がひそむ!電子タバコが及ぼす免疫応答への悪影響

海外医療トピックス

2016.06.28

味選びにも危険がひそむ!
電子タバコが及ぼす免疫応答への悪影響

嗜好品のひとつとして浸透しつつも、徐々にその危険性が明るみに出てきている電子タバコ。やはり、「発がん物質を吸わないから安全」と単純にはいえないようです。2016年2月に行われたアメリカ科学振興協会の年次総会でも、新たに確認された、電子タバコによる健康への悪影響が発表されました。

米食品医薬品局(FDA)の安全性評価は経口摂取が原則

今回の研究を行ったのは、ノースカロライナ大学チャペルヒル校、イローナ・ジャスパース博士の率いる研究チームです。ジャスパース博士は同大学の環境医学・喘息・肺生物学センターの副所長であり、毒物学カリキュラムの責任者も務めています。そんな博士が力を注いでいるのが、電子タバコをはじめとする新しいタバコ製品の研究。今回は、電子タバコに含まれる化学物質が気道の免疫応答をどのように変化させうるかを明らかにしました。

ジャスパース博士がこの研究において特に危険因子として注目したのは、電子タバコの風味付けに使われている添加物。米食品医薬品局(FDA)は、それらの多くを「一般に安全と認められる」としています。つまり「安全性は合格」と評価しているのです。しかし、これについてジャスパース博士は、FDAの評価は経口摂取を前提としており、吸入する場合の安全性は確認されていないことを指摘しています。

胃には酸や酵素があるため、摂取した物質の分解が可能ですが、呼吸器系にはそうした分解システムがありません。したがって、電子タバコが軌道の免疫応答に及ぼす危険性は不明であるとするのが、現状では妥当のようです。

呼吸器の免疫システムに悪影響を与える電子タバコ

タバコ製品が免疫機能に及ぼす影響を調べるため、研究チームは免疫応答の機能に関与する約600の遺伝子発現の変化を分析しました。分析されたのは、「喫煙者」と「非喫煙者」そして「電子タバコ使用者」の鼻腔内部から採取した上皮層の組織サンプルです。
また、被験者からは鼻洗浄液、尿、血液も採取され、タバコとニコチンに晒されたときの炎症マーカーや免疫応答の変化だけでなく、遺伝子マーカーとプロテオミクスマーカーの変化も調べています。

その結果、鼻の粘膜に存在するいくつもの主要な免疫遺伝子の働きが、喫煙によって弱まることが確認されました。さらに、電子タバコの利用者においては、別の免疫遺伝子の働きも抑制されると判明したそうです。つまり、電子タバコは呼吸粘膜の免疫反応システムに広く影響を与えるものと考えられます。

シンナムアルデヒドが免疫応答に悪影響

それでは、電子タバコに含まれるどの成分が有害なのか特定できるのでしょうか?今回、有害物質のひとつとして注目されたのは、風味付けのための添加物です。

前述の遺伝子分析とは別に行われた細胞培養の実験で、シナモン風味の電子タバコ用リキッドと、その風味付けに使われている化学物質「シンナムアルデヒド」についての検査が行われました。
その結果、研究チームはシンナムアルデヒドが上皮細胞の生理機能に大きな悪影響を及ぼすことを発見。その化学物質は、大食細胞(マクロファージ)、ナチュラルキラー細胞、好中球といった呼吸器系の主要な免疫細胞の免疫機能を下げることが明らかとなったそうです。

呼吸器系の免疫機能において、たくさんの細胞メカニズムを連続して動かすスイッチともいえる最初の信号は重要になります。その信号を、化学物質の影響で異常をきたしている免疫細胞が出すことによって、肺の免疫応答が損なわれるようです。
ジャスパース博士は、シナモン風味のリキッドを中心に、今後さらに電子タバコの長期利用による呼吸粘膜の免疫機能への影響を調べたいとしています。

電子タバコは歴史が浅いだけに、まだ危険性に関する情報が出そろっていないという感は否めません。患者さんから電子タバコに関する相談を受けたときは、これまで以上に慎重に回答する必要がありそうです。

海外医療トピックス バックナンバー

この記事を見た方はこんなコンテンツも見ています