1. 光で見る!化学療法の進行状況を確認する技術を米が開発中

海外医療トピックス

2016.04.19

光で見る!化学療法の進行状況を
確認する技術を米が開発中

がん治療で化学療法を行う際、患者さんの体内にある抗がん剤の状況を確認したいと思ったことはありませんか? アメリカのオハイオ州立大学では、研究者たちが化学療法の進行状況を追跡する技術を開発中です。薬剤を光で可視化するというその研究について、同大学が発表した内容をご紹介します。

化学療法の進行状況を追跡する技術とは

化学療法の進行状況を追跡するこの技術は、簡単にいうと「抗がん剤に蛍光性の分子をつけて光らせる」というものです。
2016年1月に発行された学術誌「ネイチャー・ナノテクノロジー」では、この研究における2つの成果が発表されています。1つ目は、蛍光性のある分子を作り出したこと。そして2つ目は、その光る分子を抗がん剤に結び付けて追跡するというラボ試験に成功にしたことです。

医用生体工学を専門とするミンジュン・チャン教授が率いるこの研究チームは、これまでも化学療法の進行状況を確認できるようにするというテーマに取り組んできました。具体的には、抗がん剤の染色を試みていたのですが、すぐに色あせてしまうという欠点があり、有害成分である金属を実験に使っているという問題にも突き当たっていたそうです。

これらの課題を乗り越えた今回の研究結果について、チャン教授は次のように述べています。
「これは個別化医療にとってとても重要な研究です。我々は、化学療法薬を患者さんに与えたときどのように働いているか切実に知りたいと思っています。この成果は、そのエキサイティングな試みを前進させる道を開くでしょう」

生体に適合する蛍光性ペプチド

医用生体工学者たちは、人体に害を及ぼすことなく体内で効果を発揮する技術の開発に努めています。今回の研究で作られた光るナノ粒子も、人体に無害だと考えられています。
この蛍光性ペプチドは天然アミノ酸で構成されているため本質的に生体適合性があり、容易にヒトの細胞と共存できるとされています。臨床試験はまだ行われていませんが、現在は実用化に向けて動物実験を進めているとのことです。

また、今回の実験では、細胞にたどりついた抗がん剤だけを可視化する工夫が施されています。蛍光性ペプチドを化学療法薬で挟むのです。その構造をとることにより、薬剤は細胞の中へ入るときにペプチドから剥がれ落ち、そこではじめて光を観察できます。生体に入ったこのペプチドの光は、光検出システムを使って見られるとのことです。

長時間の発光で抗がん剤の追跡が可能に

紫外線をあてると見えるペプチドの青い光は、長時間に亘って持続します。色あせてしまう染料と異なるこの特性は、抗がん剤の追跡にとても有利です。何時間も持続するおかげで、抗がん剤の効果が数時間後に現れる場合でもその様子を観察できます。
数分後に薬が効いてくる人、何時間もたってから効き始める人、また、いつまでたっても効果が出ない人もいるでしょう。化学療法の効き目には個人差がありますが、この追跡技術によってその理由が解明されるかもしれません。

また、今回の実験では化学療法薬のドキソルビシンが使われましたが、この技術はほかの治療にも応用できる可能性があるそうです。薬に光で印をつけることで、その薬が効き始めるまでに要する時間やどこに効いているのかを、医師が把握できるようになるだろうと考えられています。
薬が効いてくる状況を見えるようにするこの技術。今もまた次の段階に向けて実験中とのことで、きっとたくさんの医療関係者がその結果の報告を心待ちにしていることでしょう。

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