1. 脳震盪の後遺症治療に!アプリが秘めるセラピーツールとしての可能性とは

海外医療トピックス

2016.04.12

脳震盪の後遺症治療に!
アプリが秘めるセラピーツールとしての可能性とは

CDC(アメリカ疫病予防管理センター)によると、脳震盪の発生件数は過去10年でそれ以前よりも倍増しているそうです。なかでも14~19歳の発生率は高く、米国小児科学会の推定では1997~2007年の間に脳震盪を経験したこの年代の患者数は、2倍に増えたとされています。こういった背景から、近年では脳震盪を正確に診断し後遺症の管理を行っていくことの重要性が注目されています。その対応の一環として、セラピーツールとしての、アプリの活用に関する研究が行われているので、今回はその詳細をみてみましょう。

ランゴンメディカルセンターの試み

脳震盪を起こすと、「目眩」「頭痛」「集中力の欠落」「物忘れ」「うつ病」など、さまざまな後遺症が発生する可能性があります。こういった症状を追跡するリサーチの一環として、米ニューヨーク大学ランゴンメディカルセンターが開発したアプリが「Concussion Tracker」です。

このアプリはApple社のResearchKitを使って開発されたもので、脳震盪の診断を受けた患者さんが、モバイル端末上で後遺症の症状や身体能力、認識能力などを記録する方式のものです。患者さんは診断後6 週間にわたり、日常的なアンケート(5問)、6分間の歩行テスト、集中力確認のタスクなどのデータをアプリに自ら入力するよう求められます。

また、1週間に1度は22問のアンケートに回答します。患者さんは当アプリが採取したデータを、医師に見せることも可能です。
米ニューヨーク大学ランゴンメディカルセンターでは、今回の調査により、脳震盪患者さんの後遺症に関するデータを収集するとともに、こういったアプローチの研究が実行可能であるかをはかろうとしています。

ロールプレイングで治療をゲーミフィケーション

次にご紹介するのは、2015年American College of Rehabilitation Meetingに登場した「SupperBetter」というアプリを使ったオハイオ州立大学の研究です。研究対象になったのは13から18歳の、脳震盪の経歴を持つ子どもたち。研究チームは、SuperBetterを通じて、日常生活のゲーミフィケーションを行う(ゲーム的要素を加えること)ことで、後遺症に苦しむ患者さんたちの健康状況や社会性にポジティブな影響を与えられるかを調査しました。

参加者は、アプリを使用しないコントロールグループ(6名)と、アプリを1日1回、3~6週間にわたり使用するグループ(10名)の2グループに分けられました。ロールプレイング形式のアプリには、脳震盪の後遺症である「光に敏感」「視界がぼやける」などが「悪役」として登場。その対策として「パワーアップ」というロールプレイ(例:「サングラスをかける」、「寝る」)を行うことで、信頼感情・精神・身体的・社会的な回復力などのポイント(得点)を稼げます。現実生活での問題解決法をアプリ上でゲーム的にこなすことで、脳震盪からの回復だけでなく子どもたちの健康や社会性にポジティブな影響を与えることを目指したアプリです。

調査結果によると、アプリを使用したグループの10名は全員、調査終了後に脳震盪の症状や精神的な落ち込みが減少したそう。コントロールグループで同じような症状改善効果がみられたのは、半数の3名のみだったそうです。調査の対象人数が少ないためにデータに限りはあったものの、こういった新たな形でのセラピーの試みが行われたのは特記すべきことといえるでしょう。

セラピーツールとして期待がかかるアプリ

アプリを使ったセラピーは、今回ご紹介した脳震盪にとどまらずPTSD(心的外傷後ストレス障害)やCVA(脳卒中)、バランス障害や体重管理、痛みに対するセラピーの一環としても活用されています。しかし、まだその効果に関するポジティブな結果を証明している調査は少なく、従来のセラピーよりも効果があるという結論は出ていないのが現状です。
より多くの調査が行われることにより、これからの医療にさらなる希望を与えてくれる可能性を多く秘めている分野です。

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