1. 小児癌治療への挑戦 セントジュード小児研究病院開発のウェブアプリ紹介

海外医療トピックス

2016.03.24

小児癌治療への挑戦
セントジュード小児研究病院開発のウェブアプリ紹介

世界中に多くの患者さんがいる「癌」。さまざまな機関が、その治療や予防に関する研究を行っています。今回ご紹介するのは、米国のセントジュード小児研究病院が開発したウェブアプリ「ProteinPaint」。このアプリケーションを活用することによってもたらされる大きなメリットとその機能をみていきましょう。

セントジュード小児研究病院とは?

今回のウェブアプリの開発を行ったのは、小児癌やその他の難病の研究・治療を主に行うセントジュード小児研究病院です。米国テネシー州メンフィスにあるこの病院は1962年に設立され、長い歴史を誇ります。常に多くの研究が行われており、その実績は確かなもの。1960年代の初めには20%に満たなかった小児癌全般の生存率を、現在の80%にまで引き上げたことへの貢献が認められています。

また、このセントジュード小児研究病院は、ワシントン大学とともに小児癌のゲノムプロジェクトを行ったことでも知られています。セントジュードが行う数々の調査をもとに発表されたデータは、小児癌の診断や治療はもちろん、将来的には小児癌の予防に役立つのではないかと大きな期待がかかっています。

癌治療法研究を進展させるための重要ツール

今回セントジュード小児研究病院が開発した「ProteinPaint」と呼ばれるウェブアプリは、遺伝子とタンパク質のミューテーションをより優れた精度で可視化できるシステムです。ProteinPaintでは、タンパク質のコード化を行う遺伝的指令に変化をもたらす遺伝子のミューテーションを、遺伝子ごとのスナップショットで見ることができます。これにより、医師や研究者は、遺伝子にミューテーションが起きているか確認でき、ミューテーションが起きていた場合には、それがすべての細胞(生殖細胞系列)に広がっているのか、ガン細胞のみで起こっているのかまで判断できるのです。

当アプリケーションには2015年12月の時点で、1,000人を超える患者さんから採取された情報が登録されています。これには、27,500ケースを超えるミューテーションに関する情報が含まれており、学術研究者は無料でアプリケーションを使用できます。
セントジュード小児研究病院の計算生物学者Jinghui Zhang博士によると、科学者が癌に関する調査を進展させ、新たな癌治療法を発見するにためには、豊富なゲノムデータを提供する新たなツールが必要不可欠であるそうです。そしてZhang博士は、ProteinPaintは癌のゲノミクスに関する豊富な情報を、科学者たちが手軽に探索できるように開発したツールであると言っています。

ウェブアプリを活用した調査例

今回開発されたウェブアプリを活用して、すでに小児癌に関する研究も進められています。その研究結果をまとめた論文が2015年11月の「The New England Journal of Medicine」に掲載されたので、紹介してみましょう。

当調査の目的は、小児癌の患者さんに関する遺伝子のミューテーションの素因について知ることで、主要形成への理解を深め、患者さんやその家族への遺伝カウンセリングやケアの質を向上させることでした。調査は20歳以下の患者さん1,120人が対象となり、これらの患者さんの遺伝子にミューテーションが起こっているかの確認が、PtoteinPaintを使って行なわれました。
その結果、8.5%の対象患者さんで、ガンの素因となる生殖細胞系列のミューテーションが確認されましたが、ほとんどの患者さんにおいては、癌に関する家族歴とミューテーションの素因には関連性が見られなかったということです。

ウェブアプリがもたらす今後の前進に大きな期待

多くの研究のもと、小児癌患者さんの生存率は確かに上がってきています。しかしまだまだ多くの患者さんが癌との戦いを日々行っているのも現実です。今回セントジュードが開発したウェブアプリを医師や研究者が活用することで、小児癌の予防や治療にどのような前進がもたらされるか、大きな期待がかかります。

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