1. がん免疫療法の最先端!悪性腫瘍を攻撃する新たなバイオゲル ― カナダ研究

海外医療トピックス

2016.03.15

がん免疫療法の最先端!
悪性腫瘍を攻撃する新たなバイオゲル ― カナダ研究

免疫療法によるがん治療の最先端技術は、どこまで進んでいるのでしょうか?
カナダのモントリオール大学病院研究センター(CRCHUM)では、がんを攻撃する、新たなバイオゲルの研究が行われています。学術誌「バイオマテリアルズ(Biomaterials)」に掲載されている最新の研究について、CRCHUMの発表をもとにご紹介しましょう。

腫瘍に直接注入できる「インテリジェントゲル」を開発

免疫療法は、患者さん自身の免疫システムを利用した比較的新しい治療法です。基本的に、医師は患者さんから免疫細胞を採取して増殖したのち、それらを患者さんの血管に注入することで病気の治療を試みます。
がんを攻撃してくれる免疫細胞の代表といえばT細胞が知られていますが、免疫療法を成功させるのには大量の細胞を管理する高い技術を要します。がん治療に十分な数の免疫細胞を培養できるとも限らず、治療の効果を最大限引き出するために添加されるホルモン「インターロイキン-2」の毒性も懸念されているようです。

今回取り上げる「インテリジェントゲル」は、それらの不具合を克服してくれる無毒なバイオゲルとなっています。がんを攻撃する免疫細胞と互換性があり、注射やカテーテルで直接がん細胞に注入することが可能です。これによって、注入した免疫細胞や抗がん剤が血流に乗って患部に到達するのを期待するのではなく、確実にがん細胞へ届けることができます。

免疫療法に必要な細胞数が従来の100分の1に

免疫療法には、何十億個もの免疫細胞が必要とされるようです。しかし、インテリジェントゲルを使うと、数千万個ですむようになるといいます。培養する細胞数を約100分の1に抑えられることは、医療の現場にとって大きな利点です。
甲殻類の殻から抽出した生物分解性物質「キトサン」をもとに作られたこのインテリジェントゲルは、常温では液状、人の体温(37度)ではゲル状になります。したがって、常温では注入しやすく、人の体内では凝集し耐久性が出るのです。

このバイオゲルは、体内でがんと闘う免疫細胞にとってシェルターのような役割を果たします。また、ゲルに細胞を活性化させる物質を与えることも可能です。ただひたすら大量の兵隊を広大な敵国に送り込むのではなく、テントや食料を与え万全を期した兵隊を敵の本拠地に送る作戦と似ています。

がん腫瘍を用いたラボ試験の結果と今後の見通し

今回の新しいバイオゲルは、悪性黒色腫(メラノーマ)と腎臓がんを含むいくつかの試験管モデルを用いたテストで成功を収めているとのことです。「バイオマテリアルズ」で発表された論文の共著者レジャン・ラポワント准教授によると、ゲルの中のT細胞は2~3週間に渡って増殖を続け、その間ゲルから放出されたT細胞はがんを攻撃するといいます。
研究を次の段階に進めるためには、臨床実験においてゲルの効果を示すことが必要です。モントリオール大学病院研究センターの発表では、もしもそれらの実験が成功した場合、数年後にはこの技術が新たながんの治療法として選択肢に加わるかもしれないとされています。

100分の1とはいえ免疫細胞を培養する必要はありますが、果たして、がんが注射で治せる日は来るのでしょうか?今後の研究に期待が高まります。

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