1. 不眠症と抑うつ気分「中途覚醒は睡眠時間を短くするよりもつらい」  -米研究

海外医療トピックス

2016.03.01

不眠症と抑うつ気分
「中途覚醒は睡眠時間を短くするよりもつらい」  -米研究

緊急連絡で睡眠中に何度も起こされたときや、睡眠時間を十分に確保できなかったときなど、よく眠れなかった次の日に多少気分が優れないと感じる医師はたくさんいるようです。睡眠と精神バランスの関係を理解することは、不眠症の患者さんのためはもちろん、多忙な医師にとっても有益かもしれません。今回は、睡眠が人の気分におよぼす影響について調べた、アメリカ、ジョンズ・ホプキンス大学の研究をご紹介します。

不眠症にともなう抑うつ気分の原因を理解するために

アメリカでは成人人口の約10%が不眠に悩まされており、中途覚醒はその最も一般的な症状のひとつだそうです。睡眠中に中途覚醒してしまう人は、眠ってもなかなか回復しにくいといいます。また、抑うつ気分も不眠症の患者さんに見られる一般的な症状ですが、なぜこのような症状が起こるのか、生物学的な理由はほとんど解明されていません。
そこで、研究者は被験者が眠っている間に彼らの脳波や身体機能を調べ、その情報を被験者の精神状態と照らし合わせることで、睡眠条件と抑うつ気分の関係性を探ることにしました。

中途覚醒と睡眠不足を比べる臨床研究

まず、研究者は健康な男女62名の被験者に臨床試験用の部屋を用意し、3種類いずれかの条件の睡眠をとらせます。なお、設定された睡眠条件は以下の3種類です。

1. 睡眠中、強制的に8回目覚めさせる(中途覚醒を再現)
2. 就寝時間を遅らせる(睡眠時間を短縮)
3. 途中で起こしたり睡眠時間を短くしたりすることなく、自然な睡眠をとらせる

研究者は被験者を無作為に上記3つのグループにわけ、3日連続で同じ条件の睡眠をとらせることにました。被験者たちは、その3日間、毎晩就寝前に自身の心の状態を評価するアンケートに回答します。
アンケートは、ポジティブまたはネガティブな感情を表す具体的な言葉(「嬉しい」「悲しい」など)それぞれに、現在の気持ちがどれだけ強く当てはまるかを答える方式のものです。これにより、被験者の心の状態を把握します。

中途覚醒でポジティブな気持ちが31%ダウン

中途覚醒グループと睡眠短縮グループにおいては、2日目の夜におこなった就寝前のアンケートで「低ポジティブ、高ネガティブ」という評価結果が出ました。これは、前日に強いられた悪条件の睡眠一晩による影響が出たものと考えられます。
そして、さらに興味深いのが3日目の夜のアンケート結果です。この時点で、被験者はすでに2夜連続で悪条件の睡眠を経験していることになります。ここへきて、中途覚醒グループと睡眠短縮グループで「ポジティブな気持ちの程度がどのくらい下がるか」に大きな差が出たのです。初日のアンケート結果と比べて、前者は31%も下がった一方で、後者は12%減にとどまったといいます。
これをふまえると、中途覚醒が気分におよぼす悪影響は累積する可能性があり、睡眠時間の不足よりもさらにつらいものだと言えるでしょう。

睡眠にはいくつかの段階があり、時間をかけて浅いところから徐々に深く潜っていくようなものです。ところが、睡眠の途中で覚醒してしまうと、また最初から「やりなおし」になります。その結果として、疲れが取れたと感じるのに必要な深い眠り「徐波睡眠」が十分にとれなくなるようです。中途覚醒グループは、この徐波睡眠の量が睡眠短縮グループよりも少なかったといいます。研究者は、今回の研究結果が不眠症の患者さんにも当てはまる可能性があり、彼らが不眠症と同時に抑うつ気分にも悩まされる理由の説明につながるのではないかと解釈しているようです。

中途覚醒がもたらす人の気持ちへの影響を知っておくことは、不眠症の患者さんに対する理解を深めるとともに、睡眠改善の方法を探る糸口になるかもしれません。ジョンズ・ホプキンス大学の今後の研究にも期待したいところです。

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